凱旋門賞への動向が注目される無敗馬バーイードの主戦ジョッキーをインタビュー
バーイードってどんな馬
凱旋門賞(GⅠ)が近付いてきた。今年は4頭の日本馬の挑戦が話題になっているが、同様に注目を集めているのがバーイードの動向だ。
現在4歳の彼はデビュー以来ここまで10戦10勝。そんなスーパーホースを管理するウィリアム・ハガス調教師が「道悪にならなければ凱旋門賞に出るかもしれません」とコメントを出したのだ。
先述した通りデビュー以来10連勝中の同馬だが、とくにここ6戦はいずれもGⅠを使いながらも連勝街道を突き進んでいる。また、デビューから9戦はムーランドロンシャン 賞(GⅠ)やサセックスS(GⅠ)等、いずれもマイル、もしくは1600メートル戦(英国では競馬場によりマイル戦は約1609メートル)だったが、前走では1マイル2ハロン56ヤードの英インターナショナルS(GⅠ)に出走。初めての距離でそれまで同様のパフォーマンスが出来るのかが注目されたがそんな心配は杞憂に終わる。ディフェンディングチャンピオンのミシュリフを相手に持ったまま並びに行くと、最後は6馬身半突き放して快勝してみせたのだ。
主戦騎手は語る
「レース前から自信はありましたよ」
デビュー当初を除く8戦でタッグを組み、6つのGⅠを含む重賞7勝を飾ってきたジム・クローリー騎手に、話を伺うと、そう答え、更に続けた。
「それまでとは違う戦場(距離)だった事もあり、余計なプレッシャーはかからなかったため、ナーバスにもなりませんでした」
負けても仕方なし、という気持ちもあったという事か。しかし、だからといって「自信がある」とはならないと思うのだが、その点を聞くと、更に答える。
「自信というか、希望ですかね。この距離でも彼はこんなに強いんだぞ!というのを皆に見てもらいたい。そんな希望に溢れていました」
結果は先述した通り圧勝するのだが、では主戦ジョッキーは彼のどこが良いと感じているのだろうか?
「フットワークの切れが素晴らしいです。ゴーサインを出すとギアチェンジをしてくれるのですが、その時のフィーリングは今まで感じた事のないモノ。バーイードでしか得られない感触です」
前走で約2000メートルの距離も克服したわけだが、凱旋門賞となると更に延びて2400メートルとなる。果たして鞍上は彼のベストディスタンスは何メートルだと感じているのだろう?
「インターナショナルSを使う前までは1200メートルから1600メートルが良いと思っていました。でも前走の感触だと2400メートルでも全く問題なく走れそうです。ご覧いただいた通り、ギリギリ2000をこなしたというのではなく、終いの脚がしっかりしていて、ゴールラインを越えた後も止まりませんでしたから……」
つまり、クローリー自身に選択権があれば、迷わず凱旋門賞へ向かうという事か?
「幸か不幸か現在のところ凱旋門賞で他に乗る馬はいませんからね。行くと言われれば喜んで乗るし、意見を求められれば『大丈夫だと思います』と答えます」
日本馬についてはどう考えているのか?
では、彼自身にとって凱旋門賞とはどんな意味を持つレースなのだろうか?
「最も重要なレースと言っても過言ではありません。私は過去にユリシーズで3着(2017年)したけど、まだ勝っていません。世界中の他のジョッキーと同じように、私にとってもとても勝ちたいレースです」
そんな世界中のジョッキーが戴冠を願うレースに、今年も4頭の日本馬が挑戦する事については次のように語る。
「毎年、日本馬が挑戦しているのは知っているし、その姿勢を尊敬しています。また、今春もサウジアラビアやドバイで活躍していたように、日本馬のレベルの高さも分かっています。だから、サセックスSでも(バスラットレオンに)注意を払っていました」
となれば当然、凱旋門賞でも軽視は出来ないと続ける。
「まだ自分(バーイード)が凱旋門賞に出るか分かりませんが、出走となれば、日本馬は脅威の存在です」
今年は10月2日に行われる凱旋門賞までついに1ヶ月を切った。バーイードと日本馬の激突が見られるのか。ジム・クローリーを脅かす日本馬が出て来る事を願おう。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)