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「自分的には完全にはまり役」。本田圭佑が語った新生ミランで描くトップ下のビジョン

河治良幸スポーツジャーナリスト

ICC(インターナショナルチャンピオンズカップ)2015の中国ラウンド3試合目となるレアル・マドリー×ミランは0−0で引き分け。共にインテルから勝利しているため優勝を決めるためのPK戦が行われ、レアル・マドリーが10−9で優勝を決めた。惜しくもプレシーズン大会のタイトルは逃したミランだが、ミハイロビッチ監督は2試合を通じて多くの選手をテストし、主に守備の部分では手応えを掴んだ様子だ。

その中で日本代表の本田圭佑はインテル戦では前半の45分、レアル・マドリー戦は後半から45分、いずれもダイヤモンド型[4−4−2]のトップ下でプレーした。「ようやくトップ下に戻ってきた」と語る本田はインテル戦はニアンとマトリ、レアル・マドリー戦はルイス・アドリアーノとバッカという異なる2トップとの組み合わせを経験。守備のタスクをしっかりこなしながら、攻撃でも見せ場を作った。

本田「開幕までまだ1ヶ月あるというのもありますし、(意識したのは)感覚を戻すというところ。ただ微妙なボールの受け方というかトップ下は独特ですから、1メートルでも違ったら受けられるところが受けられなくなったりするわけで。その感覚を早く取り戻したい」

そう語る本田だが、守備は「すぐにでも形になる」と確かな手応えを語る。戦術的な志向も興味深いが、その前に根底となる部分での戦う気持ちをミハイロビッチ監督は選手に注入している様だ。

本田「最後に足を伸ばして守れているので、諦めない部分でも去年と明らかに違う成果がある。そういうところで成長しているという手応えが、選手たちの日々のモチベーションにつながっているというのはある。これを攻撃でも感じられたら、もっと選手が監督に対しての信頼感というか、もっと厚みを増してくると思うんですよ」

中盤や前線とのコンビネーションを高めるためにも、トップ下でのボールの受け方など感覚的なものを体に思い出させることが重要だと認識する。それに加えて本田自身が伸ばしていく必要性を感じているポイントがある。本田はレアル・マドリー戦において、守備になると下がり目にポジションを取り、そこから中央で対峙するカゼミーロのケア、さらには左に流れてカルバハルの上がりを抑えるなど、幅広い対応をしていた。ただ、攻守が切り替わった時のポジショニングは手探りの印象を受けた。

筆者「トップ下というポジションながら、サイドでの守備なども非常に貢献していた印象です。そこから攻撃に移るところで、サイドや中盤の深い位置に残ったまま起点になるのか、すぐトップ下に戻るのか、どういうイメージを描いているでしょうか?」

本田「そこが大事だと思うんですよ。要はチームで一番走らないといけないポジションだと思うんですね。結局、守備の時にはダブルボランチ気味に戻るんですが、攻撃になったらデ・ヨングは上がらないので、僕が上がらないと攻撃にならない。そこをどうやって走れるスプリントとか、有酸素能力みたいなものが必要になってくる」

トップ下の難しさ、面白さ。その醍醐味を人一倍知る本田だからこそ、そうした課題に向き合うことも喜びに感じられる。CSKAモスクワとミランで過ごして来た数シーズンにおいて、ボランチやサイドハーフ、ウィングといったポジションをこなしてきた。それらの経験で積み上げたものはあるはずだが、やはりトップ下というポジションでこそ実感できる充実がある。

本田「正直、監督がどう思っているかは分からないですけど、自分的には完全にはまり役というか、これが続くのならば、間違いなく結果が出て来るかなという感じはしています」

本田としてはボナベントゥーラやスソといった同ポジションのライバルもいる状況で、まずポジションを掴むことが先決だが、ミランという名門クラブに相応しい質のサッカーを実現したい思いも強い様だ。「ACミランというクラブでプレーする以上、常に世界のトップのレベルを守備にも攻撃にも求められる」と主張するが、それは個の力ですぐにレアル・マドリーなどに匹敵するレベルに達することとイコールではない。

本田「単純に個で3人、4人(を突破)という攻撃は現状できないですけど、連携面とか1つ1つのパスの質、コンビネーションというところは2、3人が絡めば相手の組織を崩せるレベルにある選手が揃っていると思う。ミランというクラブでプレーする上で、常に満足せず求めていきたい」

彼が「すごく怖い攻撃」と表現するのはチームとして迫力ある攻撃を実現していくことに他ならない。例えば後半16分に本田のクロスをDFのサパタがヘッドで落とし、バッカが惜しいボレーを放ったシーンがあったが、そういった形を流れの中で出していければ、相手のディフェンスにとって大きな脅威になるはずだ。そうした攻撃を生み出す中心になるのはトップ下の選手であり、ダイヤモンドのシステムで攻撃のキーマンとなるのは間違いない。

本田がどれだけ手応えを掴んでいても、試合でのパフォーマンスが全ての評価を決める世界であり、カルチョと呼ばれるセリエAの世界ではよりそれが強い。新監督のもと、本田がトップ下で輝きを増し、ミランを上位に導くことができるのか。開幕までの期間で積み上げていくものの成果に期待したい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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