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【英会話】まだうんざりはしないね と言ったら、首を振られた。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど英語を仕事で話していますが、慣れないことを言おうとするといまだに単語の選択で迷うことがあります。

 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと前置詞の使い分けのイメージを得られるお得なエッセイです。

about? of? どっちを使う?

 ようやく空気も澄んで、過ごしやすい季節になってきました。躰(からだ)を動かすにもいい季節。まさしくスポーツの秋です。

 私はそんなに運動好きというわけではないんですが、一応、週に2回ほど走っています。COVID-19でスポーツクラブに行けなくなった時期があったんで、その代わりに、と思って走り始めた。今ではスポーツクラブに行けるようになってるんですけど、走るのはそれはそれで面白いんで、続けています。とはいっても、生来の怠け者、そんなに長距離は走れません。ちょっとだけです。

 このあいだNative English Speakerの友人のRichと、スポーツの秋だし、フットサルでもやろうぜって話してたんですが、その時に私のランニングの話になったんです。フットサルやっても徳さん、走れるのか? と不安になったんでしょうね、Rich。まぁ、一応まだ走ってるんで、安心させてやろうと、ちょっとふざけて、
"Yeah, I'm still running. I'm not sick about it yet." (ああ、走ってるよ。まだうんざりはしないね)
 って言ったんですが、Richはあっさりと首を振る。あ、しまった と私もすぐ間違いに気づいたんですが、後の祭り、口から出たものは戻せません。

 みなさん、この英語、どこがおかしいか気づかれるでしょうか?

 この英語は意味としてはNative English Speakerに伝わっています。でも、不自然なんです。よくNative English Speakerが言う、It sounds unnatural. (自然に聞こえない)というやつ。問題はabout にあります。

about~について という意味を持った前置詞ですが、同時におおよそ、だいたい という意味も持っています。なので、このI'm not sick about it (running) yet. という文は、厳密に訳すと、私はまだ走ること(やその周辺のこと)にうんざりしていない という意味になっちゃう。ちょっと変なんです。ピンボケな感じです。

 私が言いたかったことは、走ることにうんざりはしてないよ という対象(走ること)がはっきりしていることなので、ピントを合わせてあげなければならない。

 そこで出て来るのが、of です。of~の と訳されてしまいますが、詳しく訳すと~の一部分、~と直接つながっている という意味を持っています。はっきり明確にそれを対象にしているよ、と伝えられる。ピントが合ってるんですね。

 なので、私は"Yeah, I'm still running. I'm not sick of it yet." と言わなけれならなかった。about とof のイメージはつかんでいたのに痛恨のミスでした。

 だいたいの対象に対してはabout。はっきりした対象に対してはof。簡単でしょ? みなさんも使い分けてみてください。いや、まずお前が実践しろと言われそうですが、そこは反面教師を地で行ったということでお許しを。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。
 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 ちなみに、このI'm not sick of ~ yet. という言い回しは、I'm not sick of you yet. という風にも使えます。私はあなたにまだうんざりしてない ってどういうこと? と思われるかもしれませんが、前回(23/10/07配信)に続きこれもちょっと洒落(しゃれ)た言い方で、私はあなたとまだまだ一緒にいたいよ ことです。秋の夜長、ちょっとロマンチックな気分になった時にパートナーに送ってあげてください。あ、上手く伝わらずに「まだって、どういうこと? いつかうんざりするの?」って言われても、責任は持てませんが。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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