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シートベルト非着用で摘発も異例の処分取り消し判決 警察官の「誤認」だった? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

福岡県内の交差点でシートベルトを着用せずに自動車を運転したとして摘発され、免許の更新時にゴールドからブルーの一般免許に変更された65歳の男性が処分の取り消しを求めて福岡県を訴えた裁判で、福岡地裁は男性の主張を認める異例の判決を言い渡しました。パトカーから違反を目撃したという警察官による「誤認」の可能性が指摘されています。理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

▼シートベルトの着用義務違反には罰金や反則金はないが、運転席だと高速道、一般道を問わず1点の違反点数が加算される

シートベルト未着用のときの罰金や違反点数、ゴールド免許への影響は?(norico by Gulliver)

▼更新年の誕生日の41日前から5年の間にシートベルト着用義務違反を含めて交通違反が1回でもあるとゴールド免許は剥奪される

ゴールド免許で違反したらどうなるの?ゴールドに戻る期間と影響、点数について(グーネットマガジン)

▼パトカーからは男性の胸元以上しか見えず、シートベルトと男性の服も同系色で、警察官が職務質問した時にはシートベルトを着用

警察が「見間違えた可能性」 シートベルト巡る処分は違法 福岡地裁(毎日新聞)

▼裁判所は「男性が慌てて着けているのを確認した」という警察官の唐突な証言について、変遷があり、内容も不自然だと指摘

シートベルト違反検挙「警察官の供述は不自然」福岡県敗訴 福岡地裁(朝日新聞DIGITAL)

エキスパートの補足・見解

運転免許に対する行政処分に不服があれば審査請求をしたり、行政訴訟を提起したりする必要があります。しかし、今回のケースのように客観証拠がないと、相当の時間を要するのが現実です。現に男性が一審で勝訴判決を受けたのは、摘発から4年を経た2024年5月22日のことでした。県側の控訴も予想されるので、そうなればさらに裁判が続きます。

自動車保険の保険料が割り引かれるなどゴールド免許のメリットは大であり、交通事故の場合を含め、自らに落ち度がなかったことやその程度が低かったことを明らかにするためにも、車の前後方だけでなく、車内の状況も同時に録画できるドライブレコーダーの搭載が望ましいでしょう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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