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サンウルブズ・田中史朗。練習参加後に「静か、かな」。立川理道のアンサーは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
目、耳、口、頭も使って試合を動かす。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

国際リーグであるスーパーラグビーのサンウルブズが2月1~3日、発足2シーズン目最初の合宿を都内でおこなった。

日本代表のスクラムハーフで、2013年にこの国で最初のスーパーラグビープレーヤーとなった田中史朗は、プレー中のコミュニケーションの重要性を訴えた。

32歳。身長166センチ、体重75キロと小柄も、相手の盲点を突く判断と負けん気で日本代表58キャップ(国際真剣勝負への出場数)を獲得。4年に1度のワールドカップは2011年のニュージーランド大会(3敗1分)、2015年のイングランド大会(3勝1敗)に出場している。

スーパーラグビーでは昨季までの4シーズン、ハイランダーズに在籍。昨秋から日本代表を率いるジェイミー・ジョセフヘッドコーチらとともに、2015年シーズンは優勝を果たした。

今季は、ジョセフもチーム編成などに携わったサンウルブズ入りを決意。日本代表アタックコーチ就任予定のトニー・ブラウン現ハイランダーズヘッドコーチ、サンウルブズと日本代表に携わる田邉淳コーチの名前も挙げ、前年度わずか1勝のチームへ参戦した背景をこう語ったことがある。

「もし僕が2019年(ワールドカップ日本大会)のメンバーに選ばれなくても、ハイランダーズで積んできた経験を日本の選手に落とし込めれば、その落とした経験によって皆がレベルアップできる。また、ジェイミー、ブラウニー(ブラウンコーチの愛称)、田邉さんの思いを日本の人に伝えたいなと思います」

以下、2日の共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――初めて参加したサンウルブズの練習。いかがでしたか。

「静かだな、とは思いました。能力の高い選手はいっぱいいるんですけど、コミュニケーションという部分では足りないかな、と。常に自分が声を出していったり、ミーティングでそういうこと(声を出すことの重要性)を伝えていければ…。(皆、上達したいという)意識は高いと思うので」

田中の所属するパナソニックの選手は、1月29日に日本選手権決勝を終えたばかり。そのため今回の東京合宿では見学が許可されていたが、田中は2日の全体練習に参加した。

ここでの「コミュニケーション」とは、プレー中に自身の立ち位置や状況、相手防御のつけ入るスキを周りに伝えるための声を指す。ラグビーは15対15の団体球技とあって、田中はこの「コミュニケーション」を大事にしている。

――登録数は合計50名。大所帯のスコッドです。

「ジェイミーが『これが日本代表のために必要だ』と決めたこと。しっかりとついて行かなくてはいけないです」

――今季、勝敗などの面で目標はありますか。

「そこはまだコーチ陣と話してはいないのですが、きっと目標を作ってくれる。僕らはチームをまとめて、世界と戦うということを意識していきたいです」

――選手個々のコンディション面への考慮から、メンバーは毎節変わってゆきそうです。

「皆が本当にひとつの方向を見て、日本のラグビーを戦うこと(が大事)ですね」

――サンウルブズの強みは。

「ハードワークという部分では、エディージャパン(エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ体制下の日本代表)時代のものも残っていると思います。前にエディーが言っていたのは、『日本人はやらされれば、やる』。それ(ハードワーク)を、自分たちの意識のなかでできれば、もっと向上する幅が上がるんじゃないかなと思います」

――追い込んで、追い込んで…。

「それをジェイミーの考えのもと、スマートにやっていきたいです」

――サンウルブズ、日本代表への思いは。

「自分も代表として世界に勝ちたいですし、サンウルブズという日本のチームが世界を圧倒できれば、子どもたちも夢を持ってもらえるのではないかと」

ワールドカップ未経験だった頃、何のためにラグビーをしているのかと聞かれれば「子どもたちのために」と応えていた。現在の立場になってからは、少年少女に「自分の好きなことを1つ見つけて、常に人生を楽しい状態で」とメッセージを贈ることもある。

それでも、自らが所属するクラブへは厳しい提言も辞さない。「日本のチームが世界を圧倒できれば、子どもたちも夢を持ってもらえるのでは」との思いからでもあろう。

田中と長らく代表活動を共にしてきた27歳の立川理道キャプテンは、そのあたりをどう捉えているのだろう。

「フミさんは本当によく引っ張ってくれていると思います。フミさんが(完全に)満足することってないと思うんです。ただ、ああして言ってもらったら、選手間でも(以前より)よくなっていく…」

経験豊富な闘将を必要な個性と認め、かつ、「選手の間を取り持つ」という自らの立場で語る。多彩な思考や感情がブレンドされ、サンウルブズというチームができる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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