通常のネットテレビ15倍の視聴率 低予算の高校生ドラマがノルウェーで異常な数字を叩き出す
ノルウェー発のドラマ『SKAM』の製作スタッフとノルウェー国営放送局NRKは、笑いがとまらない年末年始を迎えることとなりそうだ。SNSを駆使した編集で、続編が毎日公式HPにアップされていた高校生ドラマ。
NRKのこれまでのネットテレビの記録を塗り替える数字を叩き出している。NRKの報道によると、各シーズンの視聴者数は今も増加中。
- シーズン1 15万4千人
- シーズン2 53万1千人
- シーズン3 78万9千人
ノルウェーは人口520万人の小国。ネットテレビでは、視聴者数の平均は5万人がノルウェーでは高い数字と、NRKの分析チーフトローネン氏は語る。つまり、このドラマは通常の15倍の視聴率を叩き出したということになる。
NRKのニュースやドラマなどの放送は、公式HPでほぼ全てが長期的に国内外で視聴可能。家にテレビがなくても、全チャンネルをネットでいつでも閲覧可能だ。そのため、放送日当日に続編を見ることにこだわりがない人も多く、「録画して後で見る」という習慣もない。時間がある時に公式HPで視聴するため、視聴率は長期的にどんどん伸びる傾向がある。
ドラマ『SKAM』はさらに特殊な形で提供されていた。ドラマの公式HPで毎日数分の続編がアップされ、その後、約20分ほどのまとめを毎週金曜日にNRKの公式HPで放送。
国内のみのヒット現象が、言語の壁が低いスウェーデンやデンマークへ。ファンが英語字幕をつけてYouTubeにアップしはじめたことから、視聴者は北欧を超えて広がった。
英語字幕は違法アップロードともいえる。しかし、NRKのスタッフは英語コピー動画が世界中に拡散されることを、むしろ歓迎し、削除することには興味がないようだった。英語字幕版を見た視聴者の数は不明だが、その数字は大きいとみられる。
Dagbladet紙の報道によると、NRKが2016年のシーズン2と3の両方に使った製作費は合計1000万ノルウェークローネ。一方、NRKの期待度大とされていた秋の現代戦争ドラマ『Nobel』の製作費は6800万ノルウェークローネ、1月放送予定のドラマ『Valkyrien』は6300万ノルウェークローネ。
局が期待して作ったドラマの六分の一の予算しか、『SKAM』にはなかった。
『Nobel』最終話を見た視聴者数は、テレビで70万3千人。1晩の間のネット視聴者数は11万1千人。『SKAM』シリーズ3の最終話のネット視聴者数は、51万1千人。低予算で作られた高校生ドラマが、異常な数字を叩き出していることがわかる。
有名俳優出演や巨額予算が必ずしもヒットを約束するわけではないと、NRKは証明することに成功したようだ。
Text: Asaki Abumi