鬼怒川豪雨・洪水域で過去に竜巻多発
鬼怒川は、元々「絹川」と呼ばれていたようですが、江戸時代から「鬼怒川」と漢字が変わったのは、この川の度重なる氾濫の歴史にあるようです。
今回の洪水は、記録的な豪雨によって引き起こされました。特に上流の日光では24時間で550ミリというとてつもない降水量を観測しています。これは年間降水量の約3分の1にも匹敵するものです。
加えて、雨の範囲が鬼怒川沿いに線状に連なっていたことが、被害を大きくしました。この線状降雨帯は、東西に200キロ、南北に500キロに及びました。南北に流れている鬼怒川全域に長時間にわたって雨が降り続き、下流にあたる常総市では、川の水位が一時8メートルを超えました。
一体どれほどの水量が流れたのでしょう。
栃木県内にある19箇所のアメダスの各雨量は、平均すると4日間でおよそ300ミリにも達しました。その水量を計算すると、東京ドームのおよそ1300杯分に相当します。すべてが川に流れ出たわけではありませんが、相当な量の水が短時間の間に集まってきたのですから、川の氾濫は不可避だったと言えるかもしれません。
洪水と竜巻
ところで、最も洪水の被害が大きかった茨城県常総市では、3年前にもある気象災害が発生しています。
それは竜巻です。5月6日につくば市から常総市にかけて、国内史上最大級となるF3の竜巻が発生しました。コンクリートの土台ごと吹き上げられた家の中にいた中学生一人が死亡、37人がケガをし、1000軒以上の建物が被害を受けました。のちの検証では、風速は秒速100メートルに近かったとされました。
洪水と竜巻が同じ場所で発生したのは、偶然なのでしょうか。
調べてみると、今回水害が起きた栃木県那須塩原市・鹿沼市・宇都宮市・壬生町・栃木市、茨城県水戸市・筑西市、そして埼玉県越谷市の全てで、過去に竜巻が発生しています。
竜巻は、起伏の激しい山間部ではなく、風と風がぶつかりやすい平野部で発生することが多いのです。つまり、川が氾濫した平地は竜巻の発生要件も満たしているとも言えるのです。
各自治体などは、ハザードマップを公表するなどして、災害への備えを呼びかけています。今まで経験しなかったような気象災害が発生している今日、普段から身の安全を考えておくのが大切なのでしょう。