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予定欄はないし人間用でもない。でも手帳。「ほぼ日のいぬねこ健康手帳」を通じて手帳の本質を考える

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手

 ほぼ日手帳が有名な株式会社ほぼ日から「ほぼ日のいぬねこ健康手帳」が発売されています。この手帳、実は2017年から発売されているロングセラー。

 ともあれ、「手帳なのに人間用じゃないの?」「健康手帳って」というツッコミが入りそうな気もします。いや、それが普通の反応かもしれません。

 こんにちは。デジアナリスト・手帳評論家の舘神龍彦(たてがみたつひこ)です。

 今回は、このほぼ日のいぬねこ健康手帳を通じて、手帳の本質を考えてみたいと思います。

日付も時間軸もない。でも手帳

 では、公式サイトの画像からこの手帳を読み解いていきましょう。
 まず気になるのは、この手帳に日付入りの予定記入欄がないこと。
 そもそも手帳ってのは、予定管理ツールなんじゃないの?

 確かにそうです。人間用ならばそれが普通ではあります。
 ではなぜ、この手帳は「手帳」と名乗っているのか?

 それは、この製品が管理される犬とか猫に関しての情報の一元化をする役割を担っているからです。とくに健康にフォーカスしているから「健康手帳」というわけです。

利用する主体に関して情報を一元的に記録するのが手帳

 そしてこれは、人間用の手帳にも例があります。

 たとえばジブン手帳のスタンダードなバージョンには、「LIFE」という分冊があります。ここには資産のポートフォリオや家族関係などを書くページがあります。

 要するにこれらは、使う人のリソースの管理のためのものなわけです。
 ひるがえって、ほぼ日の「いぬねこ健康手帳」では、これが犬や猫の健康状態になっているわけです。

 そのためにたとえば、各種のワクチン接種の記録とか、そもそもマイクロチップが入っているかどうかなどの専用の記入欄があるわけです。通院の記録ページもそれですね。

服薬記録や体重の記録ページも

 また、人間にはお薬手帳というものがあります。これはご存じのようにその人の服薬の記録を、薬局で薬とともにもらうシールを貼ることで記録・蓄積します。

 この「いぬねこ健康手帳」においても、投薬の記録ページはほぼ同じ目的です。

 投薬による健康状態の変化まで記録することで、特定の薬との相性についての情報を残し、その後に役立てることができる訳です。

 それは体重も同じです。人間でも体重の記録は健康管理に役立ちます。ペットであってもそれは同じで、太りすぎ痩せすぎにならないように記録して管理するわけです。

ペットとの付き合いの心得

 「おまけページ」と題された見開きもあります。これは犬や猫を飼う上での飼い主の心構えが書かれています。ビジネスパーソン向けの手帳でいうところの便覧のようなものですね。あるいは年玉(ねんぎょく)手帳における社是社訓に相当するものかもしれません。
 このように、「ほぼ日のいぬねこ健康手帳」は、犬猫用ではあっても、特定の主体に関してそのリソース(ここでは健康)について情報を記録・蓄積していくというスタイルは、人間用の手帳とまったく同じです。

 たまたま犬や猫には主体的にアポイントを入れたり、タスクリストを作って処理したりする必要がないだけです(いや、本当はあるのかもしれませんが)。それゆえ予定記入欄、タスク欄はないわけです。

 このように、ペットでも人間でも、冊子状の記録媒体に、各種リソースを記録・蓄積していくのが手帳というわけです。そして、「ほぼ日のいぬねこ健康手帳」の場合は、それがペットの健康という目的に特化しているわけです。

 手帳というと、ついついビジネスパーソン向けの予定管理用手帳を想像します。

 そして、この手帳に見られるように、それ以外の利用主体・目的であっても、手帳というものは成立するわけです。 

 手帳とはなにかという問題については、機会があればまた取り上げたいと考えています。

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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