リクルート営業マン王者の藤田炎村 仕事とボクシングの両立で大変なこと
日本スーパーライト級王者の藤田炎村(28=三迫)は12日、挑戦者の同級7位・関根翔馬(37=ワタナベ)を迎え、2度目の防衛戦に臨む。
藤田は4月の日本タイトル戦で、同級1位のアオキ・クリスチャーノ(角海老宝石)を2回8秒KOで下し王座を獲得した。
試合向け調整を続ける彼に、試合への意気込みや自身のボクシングスタイル、営業マンボクサーとしての活動、今後の展望について話を聞いた。
型にはまらないスタイル
──試合に向けてのコンディションはいかがですか。
藤田:いい感じです。
──減量はどうですか。
藤田:落とす幅が大きいですね、いつも大体10キロ以上減量しています。
──アマチュア時代は何級でしたか。
藤田:変わらず、ボクシングを始めた時からスーパーライト級ですね。
──自身のボクシングスタイルについて、どのように認識していますか。
藤田:良くも悪くも型にとらわれないスタイルだと思います。創造して、ルールにとらわれずやっているところもあると思います。
──以前動画で見たのですが、試合中に左右にスイッチしますよね。
藤田:そうですね、まだ質が低く、形になっていないのですが、最近少しずつ上手に使えるようになってきました。
──参考にしている選手などいますか。
藤田:特にいないですかね。
──藤田選手オリジナルのスタイルを作っている感じですか。
藤田:そうですね、昨日の自分より今日の自分、という感じで自分の成長ばかり考えています。あとは対戦相手が嫌がるスタイルで挑もうと考えています。
パンチ力が増したきっかけ
──これまでの戦績は11勝(9KO)とかなり高いKO率ですね、パンチ力には自信がありますか。
藤田:はい。最近自信がついてきました。
──最近ですか、アマチュアの時は。
藤田:アマチュア選手にしては倒していたと思います。でも、上のレベルの選手は全然倒せなかったので。まだパンチ力とがある選手という感じではなかったです。
──プロになってから強化したと。
藤田:そうですね。でも、ここ1、2年くらいだと思います。
──きっかけはありましたか。
藤田:やはりトレーナーが椎野大輝さん(元東洋太平洋バンタム級王者)に変わったことでしょうか。また、3年前からフィジカルトレーニングをやっているのですが、その効果も大きいと思います。
──どのようなトレーニングですか。
藤田:基本的な重りやベンチなどのトレーニングは全くせず、ボクシングに近い動きでトレーニングしています。筋肉をつけるというより、パフォーマンスを上げる。説明が難しいですが、ストレッチと筋トレの間みたいなイメージですね。
──藤田選手にとって一番強いと思うパンチはありますか。
藤田:倒す時は右のパンチが多いですかね。
──当たれば倒せる自信はありますか。
藤田:ダメージはあると思います。この階級なので、カウンターだったらみんな一発で倒せると思います。
初心に立ち返る
──試合も近いと思いますが、今練習で一番重視しているポイントはありますか。
藤田:今はこの立場になったからこそ、基礎をとても重視しています。最近は、4回戦ボクサーの頃にやっていたメニューをこなしています。皆が嫌がるようなラッシュや走り込みなどですね。
──初心に返ったトレーニングですね。始めようと思ったきっかけは。
藤田:8月の初防衛戦ですね。その試合で成長を感じることは出来たのですが、客観的に自分を見て「調子乗ってるな」と、ここで自分に痛い思いをさせないと上にはいけないと思い、あえて苦しい練習をやっています。
──デビューしたのは2018年で、5年で日本チャンピオンは早いですよね。藤田選手はどのように捉えていますか。
藤田:5年以内にチャンピオンになっている選手は沢山いると思いますが、B級デビュー、C級デビューの選手で分けてみると、恐らくC級の選手でこのペースは、強運もあるし自分の頑張りもあるのかなと思います。
──三迫ジムの環境はいかがですか。
藤田:僕の周辺階級の選手が多く、特に小原さんや吉野さんなど僕より先を走っている選手が身近にいる環境はすごくありがたいです。また、練習で実際に手合わせしてもらって、自分の実力やトップの方々との距離を測れることはすごく得るものがありますね。
仕事とボクシング
──現在のリクルートに勤務されているとこのことですが、仕事の経験がボクシングに繋がっていることなどありますか。
藤田:今の会社が取り入れている最新の分析、スケジューリングや目的達成術は今ボクシングに繋がっています。
──逆に大変なことはありますか。
藤田:時間の管理もそうですし、脳の切り替えが大変ですね。スパーリングがある時は、体が元気でも頭が疲れていたり、メンタルの調整などすごく大変ですね。
──スパーリング後に会社に出勤していたと耳にしましたが...
藤田:ありましたね。最近はオンラインで仕事ができるようになったので余裕が生まれましたが、以前はスパーリング後に仕事することもありました。
──スーパーライト級は、世界でも選手層が厚い階級ですが、今後どのような展望をお持ちですか。
藤田:4年以内に世界のベルトを獲るという目標を持ってます。ただ、思っているだけで、それがどう現実的になるかというのは、また別の話だと思っています。今やるべきことは、目の前の強い相手をクリアしていくことだと思っています。
──まずは12月12日の試合ですね、ゆくゆくは世界チャンピオンに。
藤田:はい。それはもちろんですが、チャンピオンになったからOKというわけではないんです。
元々すごく劣等感を感じる人間で、マイナスをゼロにしようと思い、ボクシングに飛び込んだので。言ってしまえばボクシングなしでも、幸せを感じられるようになったら、そこが引き際かなと思っています。
──今年、来年の目標はありますか。
藤田:まずは帝拳ジムの李健太選手に勝利することです。個人的に、彼が同級の日本ランキングで最強の選手だと思っているので、彼に勝てば日本最強を証明できると思ってます。
──最後に、藤田さんを応援しているファンへメッセージいただけますか。
藤田:まず、僕を知ってくださっていることがとても嬉しいです。今の段階で、僕に目を付けていただいていることもありがたいです。ボクシングを始めるのも遅かったですし、それこそ劣等感もありました。
皆さんにとって身近な存在だと思うので、自分の成長が皆さんに勇気を与えたり、「あいつができるんだったら俺もできる」って思っていただけたらと思います。
成功例として先陣を切りたいなって気持ちがあります。ぜひ今後の試合を見ていただきたいですし、僕が100点のパフォーマンスをすれば、自然と面白い試合になると思うので、引き続きご期待いただきたいなと思ってます。
次戦は12月12日、後楽園ホールで2度目の防衛戦に臨む。今後も藤田の快進撃に注目していきたい。