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羽生善治九段(49)竜王復位に向けてまずは好発進 竜王戦1組1回戦で橋本崇載八段(36)を降す

松本博文将棋ライター
新年恒例の将棋堂祈願祭に参列した羽生善治九段(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 1月8日。東京・将棋会館において第33期竜王戦1組ランキング戦1回戦▲橋本崇載八段-△羽生善治九段戦がおこなわれました。10時に始まった対局は21時16分に終局。結果は108手で羽生九段の勝ちとなりました。

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羽生九段、竜王復位に向けて好発進

 広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑戦した第32期竜王戦七番勝負は、豊島名人が4勝1敗で竜王位を獲得し、閉幕しました。

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 第33期竜王戦はすでに開幕していて、1組から6組まで、ランキング戦が進行中です。

 1組は前竜王の広瀬八段他、羽生九段、橋本八段など16人の強豪がひしめく最高ランクの組です。

 羽生九段は過去に竜王位通算7期獲得。永世竜王の資格を得ています。

 2018年度、羽生竜王(当時)はタイトル通算100期がかかった七番勝負において、広瀬章人八段の挑戦を受け、3勝4敗で竜王位を明け渡しました。タイトル通算100期達成は持ち越しとなり、またそれ以来、無冠が続いています。

 橋本八段は昨年は2組2位で決勝トーナメントに出場。鈴木大介九段(3組優勝)に敗れています。

 両者は過去に9回対戦して、羽生九段が7勝。ただし橋本八段の2勝は、竜王戦決勝トーナメント、1組ランキング戦で挙げられたものです。

 振り駒の結果、先手は橋本八段。互いに飛車先の歩を伸ばし合う相掛かりの戦形になりました。序盤の駆け引きの後、まず動いたのは後手番の羽生九段でした。羽生九段が歩を交換しながら中段に銀を進めたあたりから、次第に局面が動いていきます。

 橋本八段は自陣に角を打ち、その利きをいかして、羽生九段の攻めの桂を取ることに成功します。橋本八段好調を思わせる進行の中、羽生九段は相手の狙い筋をじっと消しながら、うまくバランスを保ちました。

 相手玉にいち早く迫る形を作ったのは橋本八段。互いの玉に近いところで激しい戦いが起こって、終盤戦に入りました。

 最終盤の寄せ合いに入った時点では、手番を握ったのは羽生九段でした。そして一気に寄せ形を築いていきます。

 橋本玉に詰めろがかかったところで、橋本八段は攻防の飛車を放ちました。羽生玉に王手をかけながら、橋本玉の上部でプレッシャーをかけている銀を抜いてしまうという狙いです。そこで羽生九段は桂を合駒に打ちました。これが鮮やかな返し技で、進んでみればその桂が、実は橋本玉の詰みに役立っています。

 最後は橋本玉に15手詰が生じました。羽生九段は合駒に打った桂を成り込んで、きれいな収束を見せました。

 羽生九段は竜王復位に向けて、まずは幸先のよい1勝をあげました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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