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大人からのアイドル活動を卒業するSKE48・髙畑結希【前編】「人が来ない握手会から応援に支えられて」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

会社勤めを経てSKE48に加入して9年。最新シングルで選抜最年長・28歳の髙畑結希が今月末で卒業する。初選抜が24歳と遅咲きながら、落語、舞台、料理など個人で独自の活動を繰り広げ、インスタのフォロワー数はグループで一番になっている。卒業を決めた想いから、19歳で始めたアイドル活動で見出したものや今後の展望まで語ってもらった。前・後編でお送りする。

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20代のうちにもっといろいろ経験したくて

――卒業を考え始めたのは、いつ頃だったんですか?

髙畑 コロナ明けの2年くらい前です。舞台や落語やお料理をやらせていただきながら、20代のうちにもっといろいろな経験がしたい、アイドルでない自分も見てみたい気持ちが強くなって。そろそろ卒業を考えなければと、ふんわり思うようになりました。

――最終的にこの時期に卒業と決めたのは?

髙畑 あまり覚えてないんですけど、新公演の『声出していこーぜ!!!』の初日が終わった去年の秋くらいですかね。TeamEで初めてのオリジナル公演でポジションと衣装をいただけて、これはみんなと一緒に作りたいと思って。始まってすぐ、卒業を発表するのは申し訳なかったので、年が明けてからスタッフさんに「本気で考えています」と伝えました。

――誰かに相談はしました?

髙畑 自分の中ではすごく悩みましたけど、特に相談はしなかったです。発表前に、同期のみんなとチームのリーダー、副リーダーには伝えておきました。「寂しい」とか「はたごんはずっと卒業しないで残っていると思っていた」と言われました。

最後のシングルで悔いを残さないように

――『愛のホログラム』のときは、最後のレコーディングやMV撮影になるとわかっていたわけですね。

髙畑 はい。自分では「これで最後だ」と決意して臨んでいました。でも、発表のタイミングをどうするか、という段階だったので、まだメンバーは知らなくて。同期の太田彩夏ちゃんや末永桜花ちゃんに冗談交じりで「このシングルで最後かもしれないよ」と話して、「ウソだー」となっていたんですけど、あとで「本当に卒業するとは思わなかった」と言われました(笑)。

――発表前だと花束を贈られたりはしなかったでしょうけど、自分の中では撮り終わって、こみ上げるものはありました?

髙畑 何て言うか……。『愛ホロ』の次はどんなシングルだろう? 楽しみだな。でも、私は卒業するから参加できないのか、みたいな。『愛ホロ』で悔いを残さないように、やり切りました。

――この取材が5月の終わりで、今の時点ではどんな心境ですか?

髙畑 まだ自分が卒業する実感が、あまり湧いていません。撮影でもラジオでも「今日が最後の収録です」と言われても、あと1回くらいありそうな気がして、心の準備ができてないまま終わっていって。あとで考えると寂しくなりますけど、録っている最中は「本当に最後?」という感覚でした。

地元でのライブで夢が叶いました

――9年間のアイドル人生を振り返って、最高潮だと思えたのは、どんなときでした?

髙畑 私のアイドル人生はピークがあったというより、一定なことが多かった気がします。『ソーユートコあるよね?』での初選抜はすごく嬉しかったですけど、それ以上だったのが、地元の香川で去年開催した「じょんならんフェスティバル」です。

――FM香川で谷真理佳さんとやっていた『じょんならんラジオ』のイベントで、TeamEがライブをやったんですよね。

髙畑 SKE48に入ってからずっと、香川と名古屋の架け橋になりたいと言っていて、夢が叶った瞬間でした。その頃には自分の中で卒業を決めていたので、最初で最後の香川でのイベントになると思いながら、全力を尽くしました。

――単純に日本ガイシホールだったり、さいたまスーパーアリーナだったり、広い会場でやったときほど印象が強かったわけではないんですね。

髙畑 気持ち的に一番大変だったのは、ガイシホールでの須田(亜香里)さんの卒業コンサートと、舞台『ちちんち』の稽古がカブっていた時期です。パフォーマンスもお芝居も覚えないといけない。須田さんに迷惑を掛けられない。どうしよう……となっていました。でも、気合いで乗り切ったら、自分がひとつ成長できたのも実感できたんです。その中で、ライブで歌って踊るのも楽しいけど、グループの外で他の世界の方たちと触れ合うのもすごく新鮮に感じました。

発表した夜に愛されていると実感しました

――ちょうどその頃から、卒業を考え始めたとか?

髙畑 そうですね。私は役者さんとどう接したらいいのかわからなかったし、たぶん演出家さんたちも私をアイドルとして見て、距離を感じる部分があったと思います。いろいろな面で苦戦しながら、この舞台をきっかけに「もっと外に出て、いろいろな人と会わなければいけない」と感じました。もちろんアイドルも大事だし、ファンの方も大切。でも、視野をもっと広げたい、違う景色も見てみたいと。

――27歳の頃ですね。

髙畑 昔、ファンの方に「30歳まではアイドルでいる」と宣言しちゃっていたんです。だから、卒業を発表したら「約束したのに、まさか」とか「油断していた」と言われて、「ごめんね」と謝りました。

――話が戻りますが、卒業発表した日の夜は、そうしたSNSのコメントを読んだりしていたんですか?

髙畑 もうずーっと見ていました。その日たまたま、家族が香川から公演を観に来ていたんです。卒業を決めたことは話していましたけど、「発表はいつだっけ?」「今日だよ!」という(笑)。私の家に泊まると言われたのを、ファンの方の反響を追いたいから、そんな状況でなくて、ホテルに泊まってもらいました。それで夜通しエゴサしたり、ブログを書いたり。コメントを読んでいると、自分の卒業をこんなにも寂しがってくれていて。申し訳なく思いながら、愛されていることをすごく実感しました。

人と違うことで目に止まってほしくて

――そうしたファンの方との交流で、アイドルの幸せを感じたことも?

髙畑 めっちゃ感じます! 私は本当にファンの方がいなければ、ここまで来られなかった人間なので。もともと7期生は投票で選ばれましたし、選抜総選挙もファンの方の応援のおかげでランクインできました。握手会だって最初は人が全然いなくて。端っこのレーンだと、まずいることに気づかれないんです。タオルを振り回して「ここにいるよ!」とアピールしていました。今思うと、私は楽しんで推してもらいたかったんです。コロナ禍に「おうちでギネス世界記録」に挑戦したり、落語や料理をやってみたり、人と違うことで目に止まってほしくて。そういうところで見つけてくれたのは嬉しかったです。

――嬉しい言葉を掛けられたのを、覚えていたりはしますか?

髙畑 よくエゴサをするんですけど、シンプルに「はたごんが生きがい」とか、「今日会えて明日から頑張れる」とか。私の料理動画で同じものを自炊で作ってくれたり、「ダイエットを始めた」とメールに書いたら「自分も頑張る」と返してくれたり。一緒に生活してもらっているようで、ファンの方の活力になれているのかなと感じます。

AKB48グループの成人式で横断幕が見えて

――当初はファンの方を「髙畑商事の社員」と称していました。

髙畑 古参の方にも感謝しています。私は20歳になる年にSKE48に入って、すぐAKB48グループの成人式があって。私のファンなんていないだろうけど、思い出になるしテレビにも映るし……と参加しました。そしたら、まさかの横断幕が見えたんです! 「髙畑結希さん、20歳おめでとうございます」って。

――神田明神まで駆けつけてくれたんですね。

髙畑 「私のファンの方がいる!」とめちゃくちゃ感動して、記憶に残っています。お披露目から今もずっと推してくれている人もいて、本当にありがたいです。

自分の芯は揺るがないようになりました

――影響を受けた先輩はいましたか?

髙畑 どうだろう……。同期は小・中学生とか若くて、先輩メンバーにかわいがられていましたけど、私はもう大人だったので。先輩でも年下の方が多くて、面倒を見てもらうようなことは一切なかったです。もちろん皆さん、素晴らしい先輩でしたけど、そういう状況だったので自分は自分と、芯が揺るがないようになりました。

――最初から元会社員として、スーツ姿で握手会や総選挙の政見放送をしたり、独自の道を行ってましたよね。アイドルとしては、もう心残りはないですか?

髙畑 今はそう言えますけど、後悔はいろいろしてきました。SHOWROOMもブログもギネス挑戦も「何の意味があるんだろう?」と思ったり。私は何もしないのが苦手で、ファンの方が離れてしまったり、寂しい想いをするのもイヤでやっていましたけど、「これって未来に繋がるのかな?」とも考えていて。当時は不安でいっぱいでした。でも、続けてきたことで「これをやった」と自信になりました。

何をどう頑張るかわからなくなった時期も

――たとえばセンターに立つとか、大きな目標は立てませんでした?

髙畑 センターに立ちたいとは思わなかったです。負けず嫌いなところはあったので、選抜には入りたい。でも、センターなんて、大それたことは言えませんでした。選抜に入っても、ずっと一定のポジションで、何をどう頑張ったらいいのか、わからなくなった時期もあります。たとえば握手会が完売してファンの方がいっぱい来てくれるようになっても、ポジションは変わらない。他のメンバーも頑張っているのはわかりますけど、努力と結果が釣り合わないなとモヤモヤしていて。ファンの方も同じ気持ちだったらしくて、「何でだろうね?」と言ってくれました。でも、「このポジションでも頑張るから見ていてね」と伝えて、見守ってもらっていました。

――それで、独自の道に活路を見出して?

髙畑 そうですね。折れなくて良かった。それも本当にファンの方がいつも応援してくれていたおかげです。

――折れそうになったこともありつつ?

髙畑 ありました。そういうタイミングで、私はファンの方に「褒められたい」と言ったんです(笑)。褒められたら、私は伸びると。そしたら、何もない日でも「今日もかわいいね」と言ってもらったり、いっぱい褒めてくれるお手紙をもらったり。それを見て「よし、頑張ろう!」と何度も思いました。(後編に続く)

撮影/松下茜

インタビュー後編はこちら

Profile

髙畑結希(たかはた・ゆうき)

1995年7月18日生まれ、香川県出身。2015年にSKE48の7期生オーディションに合格。2016年に正規メンバーに昇格。2020年に『ソーユートコあるよね?』で初選抜。舞台『ちちんち』、『エゴ・サーチ』などに出演。6月30日にSKE48劇場で卒業公演を開催。11月にオイスターズ第28回公演に出演。11月1~3日・下北沢 駅前劇場、11月7~10日・愛知県芸術劇場 小ホール。

チームE「声出していこーぜ!!!」髙畑結希卒業公演

6月30日17:00開演/SKE48劇場

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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