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教員もあきれる、文科省による小学校への英語導入プラン

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

このアンケート結果に「教員が仕事するのを嫌がっている」と、言いだす人がいるかもしれない。それに対しては、「あなたは間違っている」と、はっきり言っておかなければならない。

9月17日付けの『毎日新聞』が、時期学習指導要領の改定にともなって2020年度に英語が小学校高学年で正式教科になることについて高学年を担当する小学校教員100人を対象に行ったアンケート結果を公表した。それによると、正式教科にすることに45人が反対し、「どちらでもない」との回答が26人、「賛成」と答えた教員は29人に過ぎなかった。つまり、大半の教員が小学校で英語を正式教科とすることに「賛成していない」というわけだ。

正式教科になれば、英語の授業が年間35時間増えることになる。他の教科の授業時間数を減らして、増やすわけではない。文科省は、増加分については「15分程度の分割授業や長期休みの活用で補う」ことを想定する。要するに、「学校ごとに工夫して工面しろ」と丸投げしているにすぎない

いまでも、学校は忙しい。忙しすぎるくらいに忙しい。文科省の定めた教科の時間をこなしながら、運動会や学芸会をはじめ、日常的ないろいろな行事のために、学校は時間を工面するのに苦労している。そのうえ、「もっと工面しろ」と文科省は言っているのだ。学校現場を知らない発想、と言われても仕方あるまい。

実際、『毎日』のアンケートでは、もっと時間を工面しろという文科省の姿勢に、73人が「反対」、「わからない」が17人、そして「賛成」と答えたのは10人しかいない。「仕事をしたくない」からではなく、学校現場の現状をしっているからこそ、反対なのだ。

さらに文科省は、小学校での英語教科化のために、国の研修を受けた「英語教育推進リーダー」を増やし、そのリーダーから研修を受けた2万人の「中核教員」を全小学校に配置する、としている。それを、20年度からやろう、というのだ。誰が考えても、あまりにも付け焼き刃すぎる。

だから教員たちは、「こうした計画で十分だと思いますか」との質問に、59人が「思わない」と答え、30人が「わからない」と回答している。その結果に、現場の教員たちの戸惑いがあふれている。

時間を工面させる無理をさせ、そのうえ不十分すぎる体制しか用意せず、英語教育を小学校に押しつけているだけのことである。「根性があれば何でもできる」と言いだしかねないトンチンカンさだ。

英語教育の充実が必要なら、もっと議論を重ねて知恵をだし、現実的なプランを提示すべきである。小学校で英語を教科にする前に、中学や高校での英語教育の根本的な見直しなど、やるべきことは山ほどある。ただ「絵に描いた餅」を学校現場に押しつけて、「食べられるようにしろ」という文科省の姿勢は、無責任と言うしかない。

教員は現場を知っているからこそ、無謀そのものの文科省案に賛成しないのだ。もしもアンケート結果を見て教員を責める気持ちが湧いてきたならば、その前に、現場を無視して非現実的な案しかだせない文科省を責めるべきではないだろうか。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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