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受験生パトカーにシャープペンまで管理する韓国の大学入試「スヌン」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
校門前で受験する先輩たちを応援する女子高生たち(写真:ロイター/アフロ)

11月14日、韓国では日本のセンター試験にあたる「大学修学能力試験」(略してスヌン/修能)が全国で一斉に行われる。今年は2001年生まれの高校3年生を中心に約54万人が受験する予定だ。

一部の名門大を除けば、大学独自の試験がない韓国においてスヌンは大学進学のための一発勝負に他ならず、だからこそ多くの受験生は人生をかけてスヌンに臨む。

今年、韓国で社会現象にもなった大ヒットドラマ『SKYキャッスル』も、大学入試をめぐる親子の狂気に満ちた争いを描いて大好評を博した。

一方でスヌンをせずに大学に籍を置くアイドルの不正が発覚して問題にもなる。“超学歴社会”の韓国だけに国を挙げて“受験生ファースト”になるのが、スヌンの日なのだ。

(参考記事:「大学特別優遇疑惑」の韓国アイドルら7人、学位の取り消し処分へ)

スヌン当日、朝ラッシュ時の混雑を防ぐために会社員の出社時間が延ばされたり、英語のリスニング問題が流れる際には騒音防止のため飛行機の離着陸が一時中止されたりするのは、もはや毎年の恒例だ。

警察がパトカーや公務用車両で受験生を輸送したり、スヌン当日までの約1カ月間、試験問題の出題委員たちが合宿という名の“監禁”を余儀なくされたりするのは、韓国ならではの光景だ。

世間がそこまでして受験生たちを送り出した試験会場の雰囲気が、ピリリと引き締まっていることは想像に難くない。

特に、会場内では受験票、身分証明書、黒ペン、鉛筆、シャープペンシル(以降、シャーペンの芯(0.5mm)、消しゴム、修正テープ、アナログ腕時計以外の携帯は厳禁という。

スマホやスマート電子機器、ラジオ、デジカメ、電卓、電子辞書、iPodなどの音楽プレーヤー、Bluetooth機能付きイヤホンといった、カンニングや不正行為に使われそうな物は、当然のごとく持ち物検査の段階で没収だ。

その徹底ぶりは、シャーペン本体とマークシート用のペンがスヌンのために特注されたものが支給されるほどである。

特に不正頻度が高いシャーペンの場合、支給されたもの以外は試験では使用できない。今年はシャーペンのメーカーが8年ぶりに変わるのだが、スヌンを主催する韓国教育課程評価院によってメーカーや銘柄が当日まで非公開となり、受験生からの不満が殺到している。

試験で使うシャーペンの銘柄だけでも前もって知っておきたい。受験生たちがそう願うのは、やはりスヌンが「人生の一大事」とされるからだろう。

過去には試験の途中で会場を抜け出し、近所のアパートの屋上から飛び降りる受験生や、成績結果を悲観した自殺者も多く出ている。たった1日で将来が左右されるというプレッシャーは相当なものだろう。

スヌンによる悲劇やストレスを減らすためか、文在寅政権はスヌンを年に2回実施するなどの大学入試の改編を模索しているという。また、警察内部でも、受験生の輸送に警察を動員することが好ましくないとの声が多く上がっているとのことだ。

ちなみにスヌンの日はかならず「スヌン寒波」と呼ばれる寒さが訪れる。にもかかわらず、今年も数多くの人が受験生たちを全力でサポートし、彼らの健闘を祈ることだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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