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ドイツ、スペインの代表メンバーに入れる日本人選手は何人?森保ジャパンの「勝ち筋」

小宮良之スポーツライター・小説家
(写真:REX/アフロ)

 5月20日、森保一監督は日本代表メンバー28人を発表している。6月2日にパラグアイ、6月6日にブラジル、6月10日にガーナ、6月14日にチリかチュニジアの勝者とワールドカップに向けた強化試合を行う。メンバーの大半は欧州組、もしくは元欧州組。Jリーグしか経験がない選手は、大迫敬介、谷口彰悟、山根視来、上田綺世の4人だけだ。

 戦力的に向上したことは間違いないが、日本はこのメンバーでワールドカップ本大会、ドイツ、スペインと真っ向勝負で勝てるのか?

 検証の価値はありそうだ。

ドイツ、スペインのメンバーに日本人は何人は入れる?

 ドイツ、スペインの23人の代表メンバー(本大会では過去の23人を改定し、26人になる可能性が高くなっている。コロナ禍の影響で、EURO2020でも26人だった)は、世界トップレベルと言えるだろう。

 バイエルン・ミュンヘン、FCバルセロナ、チェルシーなどメガクラブの主力がごろごろ。マヌエル・ノイアー、ヨシュア・キミッヒ、セルジ・ブスケッツ、ペドリなどは各ポジションで世界最高に比肩する。例えばドイツ代表でパリ・サンジェルマンに所属のユリアン・ドラクスラー、同じくスペイン代表のセルヒオ・ラモスは大会メンバー入りが厳しいほどだ。

 たら、れば、だが、両代表に日本人はどれほど入れるのか?

 冨安健洋(アーセナル)、鎌田大地(フランクフルト)、古橋亨梧(セルティック)吉田麻也(サンプドリア)、南野拓実(リバプール)、遠藤航(シュツットガルト) 、酒井宏樹(浦和レッズ)は40~50人程度の大枠リストには入るだろう。しかし26人、さらに23人に入るのは、「2,3人が精いっぱい」ではないか。

 それほど戦力差がある相手、ということだ。

 もっとも、勝機がないわけではない。

冨安はどこの国でも代表になれる

 例えば、冨安はドイツであれ、スペインであれ、レギュラー候補だろう。プレミアリーグで上位を争うアーセナルのレギュラー。右サイドバックで定位置をつかんだが、左サイドバック、センターバックでも非凡さを見せる。

 ドイツはバックラインのレギュラーは錚々たる顔ぶれだが、冨安の実力をもってすれば、どのポジションでも二番手にはなれる。つまり準レギュラーで、相互関係次第ではレギュラーも不可能ではない。右サイドバックをポリバレントなヨナス・ホフマン(ボルシアMG)、走力抜群のルーカス・クロスターマン(ライプツィヒ)から奪い取っても不思議ではないだろう。

 スペインは右利きのセンターバックが人材難だけに、冨安はうってつけの人材と言える。エリク・ガルシア(バルサ)はビルドアップの能力は世界屈指だが、守備者としては脆く、むしろチームの弱点にもなり得る。彼と比べると、ディフェンダーとしての格は冨安が上だ。

 冨安の他にもう一人、対抗できる実力者がいる。

鎌田を使いこなせるか

 鎌田大地はフランクフルトの主力選手として、ヨーロッパリーグ優勝に貢献した。シャドーの一角で、創造的なプレーが光った。左ウィングバックのフィリップ・コスティッチとの連係は欧州屈指。ベティス、バルサ、ウェストハム、そして決勝のレンジャース戦と攻撃を引っ張っていた。

 鎌田は攻撃能力の高さがクローズアップされる。確かにチーム最多の大会5得点で、アシストも少なくない。しかしサッカー選手として、彼はオールラウンダーである。守備にまわった時も相手のパスコースを切って、侵入路に立ちふさがれるし、寄せる角度やスピードも十分で、パスカットやボール奪取の成功も実は少なくない。

 攻守の切り替えでも、非凡な力を見せる。

 例えば決勝のレンジャース戦の後半、ビルドアップしようとする相手を鎌田は周りと連携し、一気にはめ込んでいる。パスがずれて、味方がカットに成功した後だった。裏へボールを受けて飛び出すと、GKとの1対1になっている。そこで打ったループシュートはわずかにバーの上に外れたが、一連のプレーは出色だったと言える。

 冨安、鎌田の二人を筆頭に、世界との距離は決して遠くない。

 南野もCLファイナリストのリバプールの一員で、リーグカップ、FAカップでは優勝に貢献し(決勝は出場なし)、シーズン二けた得点にのせている。古橋もセルティック優勝の立役者になった。ベルギーリーグの年間MVP候補になった伊東純也(ヘンク)やブンデスリーガの年間最優秀新人賞候補になった伊藤洋輝(シュツットガルト)など、人材としては間違いなく「過去最強」と言える。

「世界トップに匹敵」とは言えないが、これだけ欧州で場数を踏んだ選手を揃えたチームはかつてなく、同じ土俵には立てる。

 森保監督が誰を選び、どのように束ねるか。

 そこに勝ち筋は見えるはずだ。

弱者の兵法、ではない戦い方を

 2010年南アフリカワールドカップ、岡田武史監督は「弱者の兵法」を徹底している。

 当時、勝つためにはなりふり構わなかった。選手たちも、「きれいには勝てない」と腹を括っていた。阿部勇樹がアンカーで、防御を分厚くした。前線の選手たちも自陣に戻って献身的に守り、相手の嫌がることをやり続けている。その攻防の中でFKやカウンターを決め、どうにか勝ち上がった。

 それは、一つの金字塔として記すべきだろう。

 森保監督が採用した4-3-3は、当時の発想にとても近い。アンカーに遠藤航を採用。走力やパワーのある選手を前線に配置し、選手のキャラクターも当時をほうふつとさせる。能動的ではない「弱者の兵法」は自分たちより弱い相手と戦う時も、安定した結果を得るためにも有効である。守備に比重を置くことで、アジアでも安定して予選を勝ち抜くことができた。

 ただ、この戦い方をカタールで御旗にすべきか、疑問に残る。

 日本は12年前よりも、ヨーロッパで活躍する選手が増えた。控えメンバーも含め、戦力は上がった。プレーの強度、球際のところで、攻守両面で持ち場を守れる選手が多くなっている。

 挑戦者の精神を強く持ちながらも、堂々と戦うべきではないか。

 何も捨て身で攻撃的に戦え、というのではない。

 例えばヨーロッパリーグ準々決勝でフランクフルトがバルサ戦で採用したように、やや守備の陣形を組みながらもラインは下げ過ぎず、ブロックの中に入った選手をせん滅し続け、カウンターの機会を狙い続ける。一方でポゼッションも放棄せず、できるだけボールを持つことで守備をし、攻撃の選択肢も常に探る。攻守一体、合理的な戦い方だ。

 日本には相応の選手がいるだけに、指揮官の決断が大きくモノを言う。システムにとらわれすぎるべきではない。優秀でコンディションが良く、局面を動かせる個性をうまく結びつけられるか。前線では鎌田を筆頭に、古橋、三笘、久保建英(マジョルカ)は可能性を感じさせ、国内組の上田綺世も面白い。

 まずは、パラグアイ戦が試金石となる。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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