RB大宮アルディージャ、新しいエンブレムを受け入れるのか?
新しいエンブレム
今年11月、来年のJ3からJ2昇格が決まっている大宮アルディージャの新しいエンブレムが発表された。アルディージャ(スペイン語でリス)がデザインから消え、勇ましい真っ赤な雄牛が角を突き立てる。RBのロゴが大きく入り、色彩もチームカラーのオレンジはわずかに残ったが…。
世界的な飲料メーカー、レッドブル社が新たに運営に加わったことで、新エンブレムには”変化”が凝縮されていたと言える。クラブ名もRB大宮アルディージャと変更され、そのRBはドイツ語の「Rasen Ballsport(芝生の球技)」の略称と説明されているが(Jリーグでは、スポンサー名をクラブ名に用いてはならないため)、レッドブルの略称ではない、という主張の方が無理はあるだろう(多くのレッドブル・グループのチームがRBライプツィヒ、ニューヨーク・レッドブルズなど、RBを入れている)。
新しいエンブレムをどう受け入れるか?
それを判断するのはマスコミや識者ではなく、ファン・サポーターであるべきだ。
アトレティコのケース
一つの例がある。
スペインの名門であるアトレティコ・マドリードも、2017年に60年間使ってきたエンブレムを廃し、新たなエンブレムにしていた。今回の大宮アルディージャほど大きく変えていないが、雰囲気をスタイリッシュにし、デザイン的にはモダンになった。マーケティング面での使いやすさを徹底したものだったが…。
これがファン・サポーターに大不評を買うことになった。
異論を承知で言えば、エンブレムとは家紋のようなものである。カッコ良いか、カッコ悪いか、時代の先端か、マーケティングに有利か、などで決定されるものではない。チームは胸にエンブレムをつけて戦ってきたし、そこには過ごしてきた月日があり、それぞれの物語がある。
それは感傷であり、愛着であり、お金で計算できない心情だ。
だからこそ、アトレティコのファン・サポーターは「エンブレムには触れるな」と反発を強めることになった。
そして2023年6月、ソシオの間で「どちらのデザインにするか?」という投票が行われた。そして、なんと9割近くが「新デザインから旧デザインに戻すべき」と票を投じたのである。2024-25シーズンからは、かつてのデザインに戻っている。
大宮のファン・サポーターは受け入れるのか?
マーケティングなどの視点から、ロゴを変更することは一つの大きな動きになっている。それは多くのブランドや会社にも通じるだろう。サッカー界も例外ではない。多くのクラブがロゴの変更のように、新エンブレムを発表しているのが現状だ。
イングランドのマンチェスター・シティは2016年に大きく変更したが、ジョゼップ・グアルディオラ監督の就任によるかつてない隆盛もあって、すでに新たな歴史の象徴になっている。イタリアのカリアリも同年からの変更しているし、伊東純也、中村敬斗のスタッド・ランスは2020年から新エンブレム採用で、他にもスペインのアラベス、イタリアのインテル、フィオレンティーナなど枚挙にいとまがない。
もっとも、必ずしも評判は芳しくない。例えばイタリアの名門ユベントスのエンブレムは雄牛が消えてしまい、ファッションブランドのロゴのようになってしまい、オールドファンからは不人気だ。また、イングランドのアストン・ビラは盾型を丸型にすることに決まって、一部は使用されているものの、メインは盾形を継続することになっている。
大宮でも、新しいエンブレムに関しては賛否が分かれるだろう。Jリーグ全体でも、こうしたケースが増えるかもしれない。ファン・サポーターはどう感じ、あるいは何を感じることになるのか――。
基本的に、クラブは自らの行くべき道を行くべきなのだろう。例えばゴール裏のサポーターに、強い言葉で、あるいは脅迫的に監督や社長の退陣を求められても、それでネットが大いに炎上しようとも、自分たちのビジョンを貫くべきである。結果的に、「自分たちの決断こそが、熱狂を起こすことになるはず!」というマネジメントをするべきだ。
しかしながら、エンブレムの変更は心情に訴えるデリケートなものである。ファン・サポーターを置き去りにはできない。 ファッションブランドのロゴとは違うのだ。