チアリーダーでは稼げない説を打破。スキルだけじゃなく、個としての存在価値にプロ契約を。
コロナ禍3年目になり、大手企業を中心にリアルとテレワークのハイブリッド型勤務が当たり前となり、我々の働き方、働く場所や価値観は大きく変わりました。そこで、これまで注目されていなかった業界・職種への興味が就職活動や転職活動で高まっていますが、まだまだ実態が掴めない仕事は多い。今回注目したいのは誰もがイメージできるチアリーダーですが、働く実態が掴めないのがリアル。
チアリーダーがメディアで紹介されることが多いのは、日本と規模も資金力も異なり巨大なスポーツビジネスになっているアメリカのNBAやNFLですが、日本でもここ最近ではプロ野球やJリーグなど一定ビジネスが確立され興行収入も大きなプロスポーツの中でチアリーダーがSNSなどで話題になることは多い。ただ、そんな環境でも実はチアリーダーを専業としている人はNBAやNFLでもほぼいないのが実態のようで、その活動を将来のステップに考えているケースはあるものの、まだまだ日々の見えない努力や存在価値、魅力などが報われにくい職業のようだ。一部では爆発的な人気があってスキルもあるチアリーダーをプロ化する動きも出てきているが、就職先として注目されることはないのがリアルで、何より子供たちが将来チアリーダーのプロになりたいと夢見ることはないだろう。
スキルだけじゃなくて個としての存在価値にプロ契約を
そんな中、以前チアリーダーの実態や働く価値観について取材した(チアリーダーは専業で生計を立てられるのか?取材で見えた現実と新時代のはたらく価値観)プロバスケットボールリーグB.LEAGUE(Bリーグ)のB2リーグに加盟している越谷アルファーズ専属チアリーダーAlphaVenus(アルファヴィーナス)に所属するHazukiさんが、チアリーダー業界のこれまでの流れや文化を打破して、新しい価値の創造にチャレンジすることになったということで、ご本人とクラブ副社長、広報に潜入取材を決行した。
――クラブとして初めてチアリーダーのプロ契約を意思決定したそうですが。
クラブ広報:はい、今回アルファヴィーナスのHazukiと越谷アルファーズは専属プロ契約を締結させて頂きます。Hazukiはパフォーマンスでクラブを支え、ホームゲームでは選手と同様にプロフェッショナルを体現して、会場の空気を作っていますし、裏では日々の体調管理から練習など本当に見えない努力を継続しています。何より彼女の人を魅了する力、人々の笑顔を引き出す力はクラブにとってかけがえのない価値であると確信しています。
ところがチアリーダーだけでは金銭面でどうしても生活できない実態があり、アルバイトや子供たちのチアリーダー育成をしながら活動しています。そんな実態を打破したいというクラブの想いが今回のHazukiとのプロ契約に繋がりました。Hazukiとのプロ契約はただ、パフォーマンスが優れたチアリーダーをプロ化するということではなく、他にも多くのミッションや期待を込めての決断になります。クラブだけでなく業界全体に視点を向けたチャレンジであり、これを担ってもらうHazukiの存在は非常に大きいです。
Hazukiには、プロとしてホームゲームやクラブのイベントをパフォーマンスを通じて盛り上げることは当然ながら、まだバスケットボールに興味のない方々を彼女の魅力で引き付けてファン化することも大きなミッションです。ただ、それだけでは一般的なプロ契約と同じでHazukiのチアリーダーとしてのスキルや資質をプロ化することになるので、クラブとしてはさほど価値は見いだせないと考えていて、Hazukiの人柄などを含めた個の魅力に注目をしています。彼女の人間性、内面から出る美しさ、人々を魅了する力が個の魅力であり、その魅力がクラブに与える影響、そしてB.リーグや地域全体、ひいてはチアリーダー業界全体にインパクトが与えられればHazukiとのプロ契約の価値が高まると考えています。
――Hazukiさんとのプロ契約の詳細を教えてください。
クラブ副社長:チアリーダーとしてプロ契約をしても実態的には日当制が多いと聞いています。ただ、それでは今回のクラブの想いを実現できないので、Hazukiのチアリーダーとしての活動を価値として年俸制を適応して、チアリーダーで生活ができる状態を作ります。加えて、子供たちへの教育のお仕事やダンスのインストラクターなど本人が自由に仕事を選択できる幅も許容しています。その背景は、コロナ禍で世の中の働き方が変わり、副業ではなく複業文化が浸透し、いわゆるパラレルキャリアの注目が高まっていることもありHazukiが自分でキャリアの舵を切ることも新しい価値だと判断しました。何よりチアリーダー以外の活動でHazukiが人間的に成長することはクラブにとってもプラスだと考えています。
プロになるイメージよりも新しい価値を創ることへの期待
――チアリーダーとしてプロ契約をすることについてどう感じているのか。
Hazuki:お話を頂いた時はシンプルに嬉しいという感情の一方で、私が?ホントにできるのか?など、あまりイメージが湧かなかったというのが正直な感想でした。ただ、クラブの想いや地域密着構想、チアリーダー業界の未来についての強い想いを理解していく中で、自分ができるのか?ではなく自分がやるべきだという想いに変わってきています。大きなチャレンジの場をご用意頂いているので、未来がどうなるのかを悩んでいる前に一歩踏み出して、少しでも新しい価値を創造できるように積み上げていきたいと今はワクワクしています。
コロナ禍だから出会えたチアリーダー
――学生時代からチアリーダーをやってきたのか。
Hazuki:チアリーダー(チアダンス)ではないのですが、5歳からダンスを始めて、高校生の頃から将来的にはダンスを続けていきたいなという思いを抱くようになりました。専門学校に入り、ダンスで生活ができることを目標に頑張っていましたが、実はチアリーダーとの出会いはアルファヴィーナスが初めてです。
コロナ禍でダンスのオーディションやイベントが激減する中、ダンス仲間に誘われて、Bリーグのチアリーダー、アルファヴィーナスの存在を知りました。この出会いが今につながり、人前でのパフォーマンスを継続できたことは本当に幸せだったと感じています。
想いを強く持ってあきらめずに、目の前のことを必死に頑張ることが夢の実現になることを初めて体験できました。
これまでは、自分がお金を払ってでも表に立ってパフォーマンスをすることを求めてきましたが、そこにはパフォーマンスを続けたいというシンプルな想いがあって、それをぶらさずにやって来られた自信はあります。
プロになることによるプレッシャーはすでに感じていますが個人としても、これからチアリーダーを目指す子供たちや現役のパフォーマーにとってもインパクトに与えられればと考えています。
人間力を高め個として成長する
――プロとしてのチアリーダー、その先には何があるのか。
Hazuki:正直、今はまだ未来のキャリアなどは考えられていません。今回プロ契約に至るまでのプロセスのように、目の前のチャンスに対して、自分の想いや軸をぶらさずに愚直に進めていくことで、見えた景色がその時の最適なキャリアになると考えています。
現実的な話では、アルファヴィーナスがただただレベルの高いチア集団となることではなく、チアリーダー一人ひとりのパーソナルな部分を伸ばし、人間力を高め個としてクラブや地域にその価値を発揮したい、そしてその挑戦が一人ひとりのチアリーダーにとっての人生を豊かにすることにつながるのではないかと思うので、そこはぶらさずに実現していきたいです。
今回の潜入取材で感じたのは、過去の文化に拘らずに想いを貫くことが新しい価値を創るということ。チアリーダーは趣味の延長で稼げない、仮にプロになってもスキル面の評価でキャリアイメージが掴めない、などといったように、ある意味で過
去の文化、イメージがあるが、それも今回の越谷アルファーズが締結するHazukiさんとのプロ契約によって、チアリーダー業界全体が変わる可能性がある。
スキル面を高めて所属組織に利益をもたらすプロではなく、まずは個の力を磨き、人間力を高めることにプロとしての価値を見出すという視点は、これから何かに挑戦しようとしている子供たちの夢の選択のひとつになるかもしれない。
秋に開幕するB.リーグの新シーズンはHazukiさんきっかけで変わる何かに期待したい。そして、何よりHazukiさんがチアリーダーとしては勿論ながら、人間力を高め多方面にインパクトを与えることで子供たちやチアリーダー業界にインパクトを与えていくことにも注目したい。
就職活動や転職活動でもこれまでの文化やイメージの壁で何かを諦めるのではなく、自分の軸や想いを貫くことを徹底することで新たな道が開けるかもしれない。
はたらくを楽しもう。
Hazuki(はづき)
国内男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」所属越谷アルファーズ専属チアリーダー
「AlphaVenus(アルファヴィーナス)」メンバー(2020年7月〜)
2022年7月より同クラブとの「専属プロ契約」が決定。
AlphaVenus Hazukiとの専属プロ契約締結に関する詳細・想い・今後のビジョンについて語る場として、以下の通りオンライン会見が開催されます。
■日時:2022年5月29日11:00〜(30分程度)
■配信方法:越谷アルファーズ公式Twitterでのライブ配信
■登壇者:
・越谷アルファーズ副社長 上原和人
・AlphaVenus Hazuki