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アベノミクスで回復した東京の国際競争力を生かそう

木村正人在英国際ジャーナリスト

空前の円高で暮らすにも働くにもコストが高くついて仕方なかった東京の都市としての国際競争力が急速に回復している。

ロンドンに拠点を置く国際不動産コンサルタント「サビルズ」は23日、世界の主要都市で税金など諸経費を含めた生活と仕事のための賃貸料金を比較した報告書を発表した。

ロンドンが、5年間不動の首位をキープしてきた香港を追い抜いて、従業員1人当たりの生活と仕事のための賃貸料金(米ドル換算)では世界で最もオカネのかかる都市になった。

トップ12は下の表の通りだ。

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香港では住宅の賃貸料金が下落するとともに通貨が切り下げられたため、2008年に比べてマイナス0.4%となり、競争力を回復した格好だ。

ロンドンは08年から38.7%も上昇し、順位も5位から1位に上げた。しかし、香港の住宅の販売価格はロンドンよりも40%高いという。

東京は安倍晋三首相の経済政策アベノミクスで円安が進み、従業員1人当たりの生活と仕事のための賃貸料金は08年から22.7%も下落し、3位から5位に転落した。

これは東京の都市としての国際競争力が回復したことを意味している。

今年3月 英誌エコノミストの調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」が発表した最も生活費が高くつく都市ランキングでは、10年前は18位だったシンガポールが東京を追い抜いて1位に。

パリが2位、オスロ3位、チューリヒ4位、シドニー5位。東京6位。ロンドンは15位だった。

訪米中の安倍首相は23日、米ニューヨークで開かれた対日投資セミナーに出席し、「豊かで元気な地方を作るためにも、日本の市場を世界に開き、海外からの投資で日本を変えていく」と地方への投資を呼びかけた。

日本貿易振興機構(JETRO)が主催したもので、和歌山県の仁坂吉伸知事、京都市の門川大作市長、岡山県美作市の萩原誠司市長、新潟県十日町市の関口芳史市長も出席したという。

ロンドンでも5月、訪英した安倍首相が対日投資セミナーに出席し、「2020年までに対日投資残高の倍増を目指す。日本をもっと市場フレンドリーに改革していく」と表明。国家戦略特区に指定された地方自治体の首長も参加した。

JETROの資料によると、日本の対内直接投資残高GDP(国内総生産)比率は12年で3.7%(約17.8兆円)。国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計に記載されている187カ国・地域中、183位だったそうだ。

JETRO「対日投資の拡大に向けて」より抜粋
JETRO「対日投資の拡大に向けて」より抜粋

日本政府は20年までに、対内直接投資残高を35兆円に倍増する計画を立てる。

JETROが支援して日本に進出した外国企業に昨年、「何が日本への投資の障害になっているか」とアンケートで質問したところ、102社が回答。

阻害要因のトップ5は

(1)ビジネスコストの高さ

(2)日本市場の特殊性

(3)外国語によるコミュニケーションの厳しさ

(4)行政手続き・許認可制度の厳しさ、複雑さ

(5)人材確保の厳しさ

だった。

アベノミクスによる円安で、最大の阻害要因だった(1)ビジネスコストの高さ――は解消された。(2)~(4)も何とかなる。

ロンドンから見ていると、折角、2020年に東京五輪パラリンピックを開催するのに、どうしてもっと積極的に、国際競争力を回復した東京を世界に売り込まないのかと首を傾げてしまう。

JETROロンドン事務所の有馬純所長が日本の強みとして挙げるのは――。

(1)国際競争力 世界第9位

(2)ビジネス洗練度 世界第1位

(3)イノベーション度 世界第5位

(4)研究・開発投資は米国に次いで世界第2の規模、国内総生産(GDP)比では主要8カ国(G8)中、第1位

(5)アジア太平洋16カ国中3番目に低い政治経済リスク

(6)世界第2の知的財産保護度

日本はアベノミクスが生み出したチャンスをまだ十分に活かし切れていない。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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