自作品の演奏にもJASRACに金を払わなければいけない問題は”多少”改善されました
JASRACに対する批判のひとつとしてよく聞かれ、そして、ファンキー末吉氏との裁判でも争点のひとつになっていた問題として、自分の楽曲をライブハウス等で演奏する場合にもJASRACに利用料を支払わなければならないという問題があります。
自分の作品を自分で演奏するために料金を支払って、かつ、(サンプリング調査の対象にならなかったために)JASRACからの分配金もなければ(法律的な是非はともかく)頭にくるのは理解できます。
しかし、この問題は最近(2017年6月28日)のJASRACの約款改定により多少改善されました(関連記事、JASRAC発表資料(JASRACのウェブサイトではこの変更がまだ反映されていない部分があるようです))。
実は、今までもプロモーション目的かつ対価がない場合に限定して自己使用は許諾なしに可能でした。たとえば、アーティスト(作詞家・作曲家)が自分のウェブサイトで自作品のプロモーション動画を公開するようなケースです。
今回の変更により、対価を得る場合でも(以下に示したような所定の上限内であれば)自己使用の料金支払いは不要になりました。ただし、権利者による事前の届出が必要です。
なお、今回の変更は、音楽出版社との契約がある場合は対象外です。簡略化のために説明が省略されることが多いですが、作詞家・作曲家が直接JASRACに信託するケースはレアで、いわゆるメジャーレーベルの作品であれば、作詞家・作曲家が契約に基づいて音楽出版社に権利を譲渡し、それがJASRACに信託されることがほとんどです。
おそらく、音楽出版社側の同意が取れなかったのでこういう規定になったのだと思いますが、結果的に、この新ルールを活用できるケースはあまり多くないように思えます。ちなみにファンキー末吉氏の作品も(爆風スランプ時代の作品も最近の作品も含めて)ほとんど音楽出版社経由なのでこの規定は適用されません。個別に音楽出版社の許諾を取ればOKというやり方にはできなかったのでしょうか?(追記:と書きましたが、音楽出版社との契約がない独立系の作家さん等にとっては結構重要な変更のようです。確かに、たとえば、自分のオリジナル作品からのみ成るCDを1,000枚売りたいといった場合にJASRAC利用料を払わなくてすむのは大きそうです)。
ところで、この機会に書いておくと、音楽出版社経由でJASRACに信託している場合は、著作権利用の分配金はまず音楽出版社に支払われてそこから契約に基づいて作詞家・作曲家に分配されます。音楽出版社がどれくらい手数料を取るかは契約条件次第ですが、新人の場合50%以上取るケースもあるらしいです。たまに聞かれる「JASRACが半分以上ピンハネ」なんて話は、JASRACと音楽出版社を混同しているのではないかと思います。