#デジタルファースト法 で仕事がなくなる人へ! 2019年5月24日(金)参院本会議で可決
KNNポール神田です。
■まずは『引っ越し』の手続きなどが便利になる!
『デジタルファースト法』が成立したことによって、従来の『マイナンバー法』と『公的個人認証法』『住民基本台帳法』などが一括改正される。これによって、引っ越しをする際には、『住民票』の移動時にライフライン関連の『電気』『ガス』『水道』の契約の移動も連携されるという。これは非常にありがたい法律だ。さらに、提言すると、同時に『マイナンバー』の情報も書き換えていただき、登録済みの銀行にも一斉に変更の依頼を自治体から届くようにしてくれれば、個人の生産性はもっと向上することだろう。
また、引っ越しと同時にテレビ受信機を処理したならばNHKにも連絡が届き、受信料を請求されなくなるとか…。いろんな連携イメージの可能性も考えられるはずだ。それでこそ、『開かれた電子政府』になるというものだ。
カタカナで言うと『オープンガバメント』だ。いや、最初からもっと『マイナンバー』に豊富な活用事例を織り込んでおくべきだったと思う。『個人QRコード決済用マイナンバー』なども、あればもっとスマートに『キャッシュレス化』の銀行連携などと結びつけられたはずだ。本人確認に一番コストと時間がかかっているからだ。次のフェーズは、『マイナンバーカード』の『アプリ化』だ(※マイナンバーの通知カードは廃止)。スマートフォンで『マイナンバーカードアプリ』を提示し、本人の指紋や顔認証で処理できればさらに効率化がはかれる。『紙』やら『ハンコ』を介在させないことが一番の合理化と効率化を推進するのだ。
マイナンバー利活用推進ロードマップ (平成29年)2017年3月
http://www.soumu.go.jp/main_content/000477828.pdf
■2020年からは法人設立に法務局の証明書が不要に
2020年からは『法人設立』のための『登記事項証明書』が不要となる。今までは、法務局に出向き、『登記事項証明書』などの証明書を添付しなければならなかった。会社の引っ越し時も同様に『定款』の書き換えなども、もっとデジタルで容易にできるはずだろう。
また、閣議決定では、『戸籍情報』と『マイナンバー』の連携の『戸籍法改正案』も決定している。
マイナンバーを提示するだけで、『婚姻届』、『パスポートの発給申請』、『児童扶養手当の請求手続き』で『戸籍証明書』を添付する必要がなくなる。これはかなりの進化だ。
■海外在住者にも『マイナンバー』が活用できるようになる
筆者のような海外在住者も『マイナンバー』を使い『納税』や『年金受給』の手続きもすべてネットで、申請できるようになる予定だ(2019年3月15日閣議決定済)。国外へ転出した時点で『マイナンバー』が失効しているのでまったく機能していなかった(※付与ナンバーはそのままで転入すると復活される)。よって現在は、すべて国際郵便でやりとりをする必要があるからだ。基本的に『住民票』が毎年1月1日の『元旦』に日本のどこに存在するかによって納税方法が変わる。それを『マイナンバー』と完全にヒモづけることによって、より迅速に『移転』の処理ができ、実態に適合しやすくなる。また『住民票』にヒモづく『健康保険』などの発行も含めてより便利になることだろう。
■『デジタルファースト法』3つの原則
『デジタルファースト法』は3つのカタカナ原則でぼんやりと原理が規定されている。
【1】手続きをIT(情報技術)で処理する「デジタルファースト」
【2】同一の情報提供は求めない「ワンスオンリー」
【3】手続きを一度に済ます「ワンストップ」
この3つの原則を考えると、『住民票』と『マイナンバー』をベースに、免許やパスポート、銀行、税金などのヒモづけが多ければ多いほど、透明性が担保される。それを評価ポイントに反映し、個人の与信調査や融資などの面でも有利に働くというベネフィットも与えた方が良いだろう。『選挙』なども、『期日前投票』から、本人確認が『ハガキ』からスマートフォンでマイナンバーアプリをかざせばよい。また、公職選挙法を改定し、『スマホ投票』にすると、選挙費用の多大な節税が可能となるだろう。『投票証明割引』参加店舗などをスマホで見せることによって、透明性が高く、国民参加型の官民連携の『オープンガバメント』に一層、近づくことだろう。
新たな情報通信技術戦略 (平成22年 2010年※9年前)
2020 年までに 50%以上の地方自治体において、国民が行政を監視し、自己に関する情報をコントロールできる公平で利便性が高い電子行政を、無駄を省き効率的に実現することにより、国民が、行政の見える化や行政刷新を実感できるようにする。
■『電子』や『デジタル』の冠詞がつく時点で、デジタル発展途上国
しかし、『電子政府』とか『デジタルファースト』も、『電子』とか『デジタル』の前置詞というか冠詞のようなモノがつけられている時点で発展途上にあることがわかる。
『ギター』はもうすでに『エレキギター』とは呼ばれず、『生ギター』の方が、『アコースティックギター』と呼ばれる。『電子メール』もすでに『メール』で成立し、アコースティックな切手を貼るタイプは『郵送のメール』とか言わないといけない。『請求書』などもすでに『メール』のPDF添付で対応できるように法的に成立している(e-電子法、電子帳簿保存法 平成17年 2005年)。しかし請求先の経理が知らない(14年も昔の法律だ)といまだに印刷して、社版を押印し切手を貼って送らないといけない。『請求書発行手数料』さえ請求したくなる。それだけ双方に無駄な、GDPにまったく寄与しない非生産行動に時間を費やしている。
■『デジタルファースト法』のデメリット
『デジタルファースト法』の最大のデメリットは、『個人情報』の政府側への可視化でもある。『マイナンバー』と連携することによって、個人のカネの動きが可視化されるのだ。しかし、一番困るのは、まともに納税している人ではない人たちである。公平な社会は『源泉徴収』されない人たちからも公平に分担してもらう必要があるのだ。それと同時に政府側の『透明性』を求めることも必要だ。エストニアの『eレジデンシー』同様、自分で公開する情報を選択できる権利を与えることもできる。同時に政府の税の運用体制についても可視化できるのだ。
世の中は、筆者のような『開かれた政府オープンガバメント』に、さらにアクセルを踏みたい層の人たちだけではない。むしろ、『デジタルファースト法』を推進されると職を奪われる人たちが大量に出現することだろう。役所や自治体にある、紙の文書の二度手間、三度手間を粛々と担当される雇用は、この法律の普及と共に奪われてしまうことだろう。対消費者窓口部門は、効率化されないことでずっと長らく守られてきたからだ。しかし、クルマが普及する前の馬車業界の歴史が繰り返されている。社会は、ほんの10数年でクルマ社会に様変わりしてしまった。しかし馬車業界は自動車業界という新たな雇用に拾われた。デジタル化すればするほど、クリエイティブで人間本来の生産性の高い仕事が求められる。AIや自動運転は10数年で、人類を新たな社会へと誘う。
凡庸で平坦で人間が機械のような働き方をするポジションは、いずれ消えゆく雇用市場だ。…であれば、まだまだ働ける間に、創造的な仕事にシフトしていくことが新たな雇用を守ることになると考えられるだろう。