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20年待ち望んだ監督の座を43ゲームで失った49歳の新人監督

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地時間1月23日、ミルウォーキー・バックスは今季から指揮を執るエイドリアン・グリフィン監督のクビを切った。ディフェンスに難ありと見られていたが、その時点でのバックスは、30勝13敗で東地区の2位。

 とはいえ、今シーズン、まったく勝てない同地区の最下位、デトロイト・ピストンズとの連戦で、勝利を挙げたものの失点135、113という状況を重く見たチームが、監督に責任を取らせる結果となった。

 2021年にNBAチャンピオンとなったバックスだが、2年前は東のセミファイナルで、昨季はプレイオフの1回戦で敗退。トロント・ラプターズのアシスタントコーチだったグリフィンを迎え入れると同時に、今日のNBAで最高のポイントガードと誉れ高いデイミアン・リラードを獲得。リラードと2019年2020年とMVPに輝いたヤニス・アデトクンボが組めば、V奪還が大いに期待できると見なされていた。

 が、得点力はあるものの、失点も重ねるのが、今季のバックスであった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 新人監督に大スターは扱い切れなかったようである。また、リラードをバックスの一員とするために、放出せざるを得なかったドリュー・ホリデーの穴を埋めることが出来なかった。ホリデーほどディフェンス能力の高いガードは珍しく、誰も代わりが務まらない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 グリフィンは、20年間もヘッドコーチの職を求め、ようやく目的とした場所に辿り着いたばかりだった。しかし、43試合でその座を奪われたのである。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 1月6日、バックスは108-112でヒューストン・ロケッツに敗れた。前半だけで20点差をつけられた。同ゲーム後、48得点17リバウンドをマークしたアデトクンボは、激しい口調で語った。

 「俺たちは、チームを改善しなければいけない。より良いプレーが求められるし、ディフェンス力も上げないと。お互いを信頼し、コーチングも必要だ。あらゆることにおいて、全員が向上する必要がある。それは用具係もだ。俺たちが身に着ける物を、もっと奇麗に洗濯しなければ。ベンチもより優秀に、チームリーダーは、もっと声を上げねばならない。そして多くのものを作っていかねば」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 29歳のギリシア人エースは、11月にバックスと3年総額1億8,600万ドルで契約延長を締結。2013年にNBA入りした彼は、バックス一筋でキャリアを重ねている。契約を延長した最も大きな理由は、バックスがリラードを迎え入れ、真剣に勝てるチーム作りをしていると感じたからだ。

 現在、オールスターのファン投票でもトップを走るアデトクンボは、外様の新コーチを信頼できなかったのだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そして、バックスが新監督として呼び寄せたのが、ドック・リバースだ。昨シーズンまで、フィラデルフィア・セブンティシクサーズで3シーズン指揮を執ったが、解雇されている。

 果たして、2021年王者の選択は、吉と出るか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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