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都市部企業の社員が、キャリアのヒントを地方で見つける~「放課後企業クラブ」

一井暁子一般社団法人つながる地域づくり研究所 代表理事

人生100年時代となり、企業で働く50~60代の社員にとって、定年後の働き方や生き方は気になる課題です。

また20~30代の若い社員は、仕事を通じて自らを成長させたいという意識が強く、社内で与えられた業務だけでは満足できないという人も少なくありません。

そういった社員のキャリア自律をサポートしたいと考える企業と協働して、私が代表を務めるつながる地域づくり研究所が実施しているのが「放課後企業クラブ」です。

都市部の企業と地方自治体(地域)をマッチングし、それぞれの社員と行政職員や地域住民が仲間になって、テーマを決めて一緒に取り組み、創り上げていく場を開設します。

「放課後企業クラブ」では、オンラインミーティングやSNSなどを活用して、セッションや対話を重ねます。現地を訪れ、交流や視察、ワークショップなどを行うこともあります。

全国の市町村とのプロジェクト

都市部の大手企業や全国の市町村が参加し、これまでの2年間で33のプロジェクトを実施しています。

高校や自治体と連携し、進学や就職に向けて、自分自身や将来について考えるための、高校生のキャリア教育のサポートを行った例や、ふるさと納税の寄付額増加を目指すプロジェクト、地域内に増える空き家の活用策や、児童数が減少する小学校の活性化を、地域住民と共に考えた企業もありました。

高校生とオンラインで対話するシニア社員(岩手県雫石町提供)
高校生とオンラインで対話するシニア社員(岩手県雫石町提供)

行政と連携して地方創生に取り組むまちづくり会社の経営基盤強化や、社会福祉法人の事業を持続可能なものになるようにするためのビジネスモデル検討といった、民間企業のビジネス感覚が、地域から求められたプロジェクトもあります。

企業社員の変化

参加した企業の社員からは、

「自分のスキルは、思ったより社外でも役に立つのだと感じた。過去の経験から提案できたこともあり、会社で培った経験は無駄にはならないことを実感した」

「実際に現地を訪れたことで、地方の課題が思った以上に深刻であったことに気づかされた。上辺の理解で話していたことを反省している」

「自分が住んでいる地域のためにできることがあるかもしれないと気付いた」

など、様々なコメントが寄せられており、日常とは異なる場所や人との出会いと共創が、自己を振り返り、社外に目を向けるきっかけとなっていることが窺われます。

「地域にもっと貢献できるかもしれない、飛び込んでみたい、という気持ちが高まっている」といった声も意外なほど多く、中には、国の地域活性化起業人制度を活用して、実際に地方自治体に出向することになった企業社員も出てきています。

奈良県高取町役場で町職員と議論する若手社員(筆者撮影)
奈良県高取町役場で町職員と議論する若手社員(筆者撮影)

キャリアが、会社から与えられるものではなく、自ら築いていかなければならないものとなっている現在、都市部企業の社員が、生き方や働き方のヒントを地方で見つけることができ、それが地方にとっては活性化につながる。

そんな場として、「放課後企業クラブ」を増殖させていきたいと考えています。

一般社団法人つながる地域づくり研究所 代表理事

1970年生まれ。東京大学法学部中退。地中美術館(香川県直島)、岡山県議会議員などを経て、2013年、ローカル・シンクタンク「一般社団法人つながる地域づくり研究所」(岡山県岡山市)を設立。自治体と民間と住民をつなぎ、地方創生やまちづくりの現場を伴走支援する。「官民連携まちづくり推進協議会」「文化と教育の先端自治体連合」など、共通するテーマに取り組む、全国の自治体団体の事務局も務める。地域や自治体、企業の声を聞き、「しごとコンビニ」や「放課後企業クラブ」などの新たなしくみを生み出している。

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