世界で麻疹(はしか)の患者が急増。日本でも大きな流行になるリスクが高まっています
麻疹(ましん)は侮れない病気です。
日本でも、戦前には1年間に1万人の子どもが亡くなっていましたし [1]、現在の先進国でも肺炎は100人に5人、脳炎が1000人に1人に起こり、後遺症も起こしやすいのです。
麻疹ウイルスの感染力はきわめて高い
そして麻疹ウイルスは、非常に感染力が強い、空気感染を起こすウイルスです。
1人のインフルエンザ患者は、周囲の免疫を持たないひと1.3人に感染させることがわかっています[2]。増えるイメージを例えるなら、100万円の借金が、数日で130万円になるようなイメージでしょうか。
しかし麻疹ウイルスはさらに感染力が強く、周囲の免疫を持たない人10人以上に感染を成立させます。
ですので、麻疹のアウトブレイクを予防するには、95%以上の方に対する予防接種が必要なのです[4]。
コロナ禍で世界的に接種率が下がり、すでに流行がはじまっている
しかし、新型コロナの流行も影響し、世界での麻疹の予防接種の初回接種率は81%、2回目の接種が71%となり、2008年以降で最も低い接種率になりました [5]。
そのような状況から、世界各地で麻疹の流行が始まり、多くの方が亡くなっています[6]。それは先進国も例外ではありません[7]。
日本ではどうでしょうか。
2020年度に比較して、2021年には全国の麻疹の予防接種率が5ポイントさがったことが報告されています[8][9]。
つまり、『いつ流行するかわからない』状況に陥っているのです。
麻疹ウイルスは、『麻疹に対する抗体を持っていないひとを狙い撃ちに』しますし[10]、麻疹に対する特効薬はないのです。
現在、麻疹(はしか)のアウトブレイク(突発的な大流行)が起こるリスクが高まっています。もし、麻疹の予防接種が済んでいない方は、はやめに接種をおすすめいたします。
参考文献
[1]新型コロナが怖くて予防接種しないとどうなる? 小児科医が恐れる感染症の怖さ
[2]BMC Infect Dis 2014; 14:480.
[3]Lancet Infectious diseases. 2017;17(12):e420-e428.
[4]Journal of the Royal Society Interface 2010; 7:1537-44.
[5]Measles an imminent global threat due to pandemic, CDC and WHO say
2022年12月10日アクセス
[6]Global Measles Outbreaks(CDC)
2022年12月10日アクセス
[7]What Can We Learn From The Growing Measles Outbreak In Ohio?
2022年12月10日アクセス
[8] 令和3年度麻しん風しん定期予防接種の実施状況の調査結果について(国立感染症研究所)2022年12月10日アクセス
[9]第1 期 麻しん風しんワクチン接種状況(国立感染症研究所)2022年12月10日アクセス
[10]N Engl J Med 2016; 375:1343-54.