ドラフト指名された選手たちの躍動を見逃すな【第43回社会人野球日本選手権大会展望】
社会人野球の2017年シーズンを締め括る第43回社会人野球日本選手権大会は、11月2日に京セラドーム大阪で幕を開ける。昨年優勝のヤマハを筆頭に、頂点に立つのはどこか注目されるが、先日のドラフト会議で指名された選手たちのパフォーマンスも見逃せない。そこで、社会人でドラフト指名された23名のうち、この大会に出場する19名を通して、11日間の戦いを展望してみたい。
3選手が指名された3チームが優勝候補
今年は3選手が指名されたチームが3つあり、大会でも優勝候補に挙げられている。その筆頭、NTT東日本は7月の都市対抗で36年ぶり2回目の優勝を果たした。二番ショートで貢献した福田周平(オリックス3位)は、守備力の向上を評価された。配球や打者の傾向で動く守備位置を注意深く観察すると、福田の能力の高さがよりわかる。西村天裕(北海道日本ハム2位)はコンスタントに150キロを超えるストレート、渡邉啓太(千葉ロッテ5位)はテンポのよさとキレ味で、大会2日目の第1試合から都市対抗に続く日本一を目指す。
3日目の第1試合で、日本生命と対戦するJX-ENEOSでは、力投型の右腕・齋藤俊介(横浜DeNA4位)、俊足好打の外野手・塩見泰隆(東京ヤクルト4位)、ユーティリティな内野手の若林晃弘(巨人6位)が指名された。ほかにも来年のドラフトを見据える若手が多く、多くのスカウトも足を運ぶようだ。また、日本生命のリードオフ・神里和毅(横浜DeNA2位)は、攻守にアグレッシブなプレーが魅力。パンチ力が増した打撃からも目が離せない。
3日目の第3試合に登場する日立製作所では、2年前にプロ志望届を提出しながら指名のなかった3名が、しっかり成長してプロの扉を開けた。二塁手の田中俊太は巨人5位指名だったが、攻守にスピードがあり、「2位で消える」と言われていた実力を備える。菅野剛士(千葉ロッテ4位)のスイング・スピードは、すでにプロでもトップクラスと評されており、勝負強さも折り紙つきだ。鈴木康平(オリックス2位)の魅力は、何と言ってもスピンの効いた150キロ超のストレート。この3名が牽引役となり、チームの100周年に花を添える優勝を狙う。
“二芸”に秀でた即戦力の集大成を見たい
大会初日の第2試合では、Hondaの快速左腕・永野将司(千葉ロッテ6位)の投球が見たい。しなやかな腕の振りから繰り出されるストレートは唸りを上げる。
4日目の第1試合では、強肩強打の捕手・岸田行倫(巨人2位)の大阪ガスと、成長著しいサウスポー・山本大貴(千葉ロッテ3位)の三菱自動車岡崎が激突する。どちらも攻守にバランスのいいチームだけに、先制点が大きくものを言うだろう。岸田の二塁へのスローイングには一見の価値がある。続く第2試合のNTT西日本には、巨人が岸田に次ぐ3位で指名した捕手・大城卓三がいる。恵まれた体格から放たれる打球はあっという間に外野手の頭上を越え、タイミングを外されてもヒットゾーンに持っていく技術も備える。味方の投手さえ驚くことがあるという、意外性のあるリードは見られるか。
午前9時開始となる5日目の第1試合には、4回優勝の強豪・トヨタ自動車が登場。ショートを守るのが藤岡裕大(千葉ロッテ2位)だ。ダイナミックで堅実な守備とミート技術に長けた打撃で、5回目の頂点に導けるか。第3試合では、1位指名で埼玉西武と競合し、抽選でオリックスが交渉権を得た田嶋大樹がJR東日本の先発を務めるだろう。10月のアジア選手権でMVPに輝くなど、日本代表でもエースを担った左腕は、社会人で有終の美を飾りたい。対する三菱重工広島は、気迫の投球が持ち味の大下佑馬(東京ヤクルト2位)に先発を託すか。そして、第4試合はヤマハの鈴木博志(中日1位)、パナソニックの宮本秀明(横浜DeNA7位)が社会人で最後の大舞台に立つ。150キロ超のストレートを軸にパワー・ピッチングを展開する鈴木は、大会連覇の原動力になりたい。成長途上の宮本は、チームの勝利に貢献したい。
今回のドラフトで指名された社会人選手は、投手ならストレートの威力とスタミナ、変化球の精度とコントロール、野手なら打撃面での確実性と安定した守備力というように、一芸だけでなく二つ、三つとセールスポイントを備えており、プロでの活躍も大いに期待される。京セラドーム大阪へ足を運び、今からチェックしておいても損はしないはずだ。