柄本明、森山未來、池脇千鶴が出演する宮崎発地域ドラマ『宮崎のふたり』がBSプレミアムで今夜放送。
9月28日。宮崎発地域ドラマ『宮崎のふたり』の完成披露試写会がNHKでおこなわれた。
本作は、宮崎県を舞台としたドラマ。
物語は定年退職した小山幸彦(柄本明)が、かつて妻と新婚旅行でやってきた宮崎県を40年ぶりに訪れるところから始まる。
到着早々、宮崎の悪口を言いタクシーの運転手・詠介(森山未來)と口論になる小山。そんな彼が宮崎を訪れたのは、妻からもらった謎のハガキの意味を知るためだった。
小山は新婚旅行で訪れた場所をめぐることで、妻との思い出を振り返る。
同時に語られるのは、昭和30~50年代初頭にハネムーンブームに沸いたが、今は寂れている宮崎の姿だ。
象徴的に使われているのが劇中歌となるデューク・エイセスの「フェニックス・ハネムーン」。
新婚旅行で訪れた思い出の場所を訪れる小山が受ける衝撃は、今の日本で暮らす人たちならある程度理解できるのではないかと思う。
演出を担当した北野拓は本作のテーマを「戦後日本の叫び」だと語っている。
ふつう、こういった地域発のドラマは、地方のすばらしさや風景の美しさに焦点を当てるものだ。しかし、本作は柄本明の口を借りて、今の疲弊した地方の惨状(それはそのまま日本の惨状でもある)について辛辣に語る。
それだけで終われば単なる露悪趣味だが、その後の物語の転がし方がまたミステリーのようで見応えがあり、幸彦と妻の関係が明らかになっていく一方で、タクシー運転手をしながら地元に根ざして暮らしている森山未來が演じる詠介と恋人の咲耶(池脇千鶴)たち若者(といっても二人とも30代だが)の姿も描かれている。短い時間の間に、物語が二転三転していく手腕は実に見事だ。
何より柄本明と森山未來の丁々発止のやりとりが実に楽しい。
脚本を担当する安達奈緒子は、『大切なことはすべて君が教えてくれた』や『リッチマン、プアウーマン』(ともにフジテレビ系)といった連続ドラマを手掛け、昨年はNetflix(ネットフリックス)で配信ドラマ『アンダーウェア』を執筆。
NHK BSプレミアムでも『その男、意識高い系。』や『ふれなばおちん』などを執筆しており、どのドラマもポップな手触りの中にハードなテーマが内包された骨太の作品となっている。
それは本作にも健在で、序盤の柄本明と森山未來の身も蓋もない口ゲンカを見ていて、相変わらず、この人は「嘘をつかない脚本家だなぁ」と思った。
と同時に、最初は嫌な親父だなぁと思っていた柄本明が、偏屈な中にもチャーミングに見えてくるのも面白いところである。
試写会の終了後には出演した柄本明と池脇千鶴、制作総括の城光一(NHK宮崎放送局)と演出の北野拓(制作局ドラマ番組部)が登壇。演技の時のお互いの印象や、撮影時の裏話について語った。
主人公の小山について「同じ団塊の世代で、高度経済成長の時代の競争社会で生きてきた。僕自身はそういうところから逃げたわけじゃないけど、青春の誤解で芝居をはじめたので、僕とは全然違う人だけど、気持ちはわからないわけではない」と柄本が語っていたのが印象に残った。
『宮崎初地域ドラマ 宮崎のふたり』は10月19日(水)の22時からNHK BSプレミアムにて放送。
http://www.nhk.or.jp/miyazaki/futari/