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予選グループ独走のサッカー日本代表を城 彰二が分析。最高評価の選手と不安要素のある選手とは

城 彰二元サッカー日本代表
試合前の森保ジャパン(写真:ロイター/アフロ)

日本がインドネシアと中国に勝って、W杯予選グループCで2位のオーストラリアに勝ち点差9をつけてトップを独走。一方、サウジアラビアがインドネシアに負けるなど、アジアの勢力図が混沌としてきて、おもしろくなってきたなと思う。

瞬時に状況判断をする鎌田大地選手
瞬時に状況判断をする鎌田大地選手写真:REX/アフロ

最高評価は鎌田大地選手

インドネシア戦と中国戦を見ていて個人的にいいなと思ったのは、鎌田(大地)選手。インサイドハーフで出場したが、彼が持っている高い能力が随所で見られた。鎌田は本当にオールラウンダーな選手で、キープもできるし、パスセンスもあるし、シュートもうまい。本当に技術が高い選手だが、何がすごいのかというと周囲を見る眼の良さ、判断力だと思う。相手も味方もよく見て状況を判断し、味方をうまく活かす時もあれば、自分が行く時もある。そのメリハリが抜群。インドネシア戦の前半35分の先制点も守田(英正)選手からボールを受けた時、シュートを打てたと思うが、内にいる小川(航基)選手を見て瞬時に判断し、横に「決めてください」というパスを出した。あの状況であんなパスを出せる選手はなかなかいない。この試合での鎌田を見て思ったのは、守田との相性がすごくいいということ。先制点での絡みもそうだし、鎌田が下がったスペースに守田が上がって使い、守田が動いたスペースを鎌田が使ったり、鎌田が動き出すいいタイミングで守田がパスを出したり、それを阿吽の呼吸でできていた。ふたりがミスって被っているシーンはほぼ皆無。鎌田はボランチの経験もあるので、お互いを意識しながらタイミングをうまくとりながらプレーしているのが見えた。中国戦では途中出場だったが、鎌田はどちらかというとスタメンタイプ。最初からプレーさせた方が彼の能力を存分に引き出せると思うし、守田との関係がさらに深まれば、ここは今後、遠藤(航)選手と守田のボランチコンビと同様に日本の強力な武器になっていく。このポジションには南野(拓実)選手や久保(建英)選手らがいるが、個人的には鎌田を軸に起用していっていいんじゃないかと思う。

ドリブルを仕掛ける三笘薫選手
ドリブルを仕掛ける三笘薫選手写真:ロイター/アフロ

不安要素のある三笘薫選手

逆にちょっと心配になったのが三笘(薫)選手。カタールW杯以降、チームの攻撃の軸になっていたが、最近は前ほど目立たなくなってきている。試合で圧倒的な違いを見せて活躍するシーンが少ないのは、ひとつは相手に研究されているのもある。相手に縦を切られて、2人で守備に来ているため、うしろに下げるしかなくなるケースが増えた。また、三笘自身もカットインしてシュート、あるいはそのまま味方にパスを出すとか、そういうところで終わってしまっている。そこで裏をかいてプレーするとか、味方を使ってもう一度受けるなど自分を活かすことを考え工夫してプレーしないといけない。三笘個人の問題もあるが、周囲の選手の遠慮も影響している。周りの選手は彼がボールを持つと邪魔しちゃいけないみたいな雰囲気があるし、そこに絡んでいくよりもスペースを空けた方がいいという感じでポジションを取っているがそうじゃない。やはり状況を見て、三笘に任せる時は任せて、連係して打開していく時にはサポートにいく。そのメリハリがないので三笘のプレーがちょっと単調になっている。三笘も味方との連係をもっと求めて、関係性を築いていかないと、これ以上うまくいかない感じがする。

古橋享梧選手の日本代表での起用に関して

もうひとり気になったのは古橋(享梧)選手。インドネシア戦では起用されず、中国戦もスメタンではなかった。後半32分からの出場でこの起用を見ると「なんで呼んだの?」と思わざるをえない。過去に代表では何度も招集されて試合にも出たが、結果を出せなかった。確かに持っている能力が高く、動き出しのスピードもある。駆け引きもうまい。クラブでは古橋のスタイルが受け入れられ、結果も出しているが、代表ではひとつの駒として動くことが求められる中、自分の良さを発揮できなかった。代表の戦術を理解して体現するのに時間がかかり、それが彼の良さを発揮できないひとつの要因だと思う。代表に順応できない。それが過去の試合で分かっているはずなのに今回招集したのは、もしかしたら古橋の中で戦術理解が進み、今回は代表のサッカーにフィットするかもしれないと森保さんは思ったのかもしれない。しかし、自分のクラブで結果を出し、その評価で代表に選ばれているので、代表に来たからといって自分のプレースタイルや考えが大きく変わることはほぼない。これは古橋が悪いわけではない。能力が高いが自国の代表チームに合わないという選手は、世界を見てもいくらでもいる。もし古橋がそうであれば、他の選手にチャンスを与えてもいいかなと思う。

W杯本戦を見据えたストライカー目線

全体の攻撃でいえば、インドネシアも中国もしっかり守ってくる中で、なかなかいい攻撃ができなかった。その原因は持ち味である外からの攻撃が機能していないのではなく、中での攻撃がうまくハマらなかったからだ。小川は基本的にポストプレーがうまくないのでボールが入らないし、入ってもうまく収めきれない。そのために中で受けてサイドに展開するとか、攻撃の展開のバリエーションがすごく少なく、中から崩していくパターンがほとんどなかった。そうなると外しかなくなり、久保とかに渡るが、久保もドリブルしてカットインしてシュートなど、単発で終わってしまう。外が活きるのは、1回中に入れることで相手を集約させて外に展開するから効果的なわけで、相手が集約しない中で外にいってもうまく攻めることができない。インドネシア戦ではサイドチェンジをしていたが、それも中をうまく使えているからこそサイドを変えると相手が戻り切れず、最終的にボックス内で勝負できるので、ただサイドチェンジしてもそもそも相手が守備の隊形を整えていれば、ピンポイントでパスが届かない限りはいい攻撃に繋ぐことが難しい。ポストプレーを入れてから展開するとか、ワンタッチで緩急をつけて入っていくとか、そういう感覚がまだ攻撃の選手の中で共通になっていない。カタールW杯からほとんどメンバーを変えずにやってきているので、そろそろ連係の部分でも阿吽の呼吸でできるところが見えてきてもおかしくないが、それがまだごく一部の選手に限定されている。最終予選なので勝たないといけないのが前提にあるが、今後はそういうところを詰めていかないと本戦では攻撃面で厳しい戦いを強いられると思う。

 

 

 

元サッカー日本代表

サッカー解説者、サッカー指導者、鹿児島実業高校サッカー部OB、元Jリーガー/元サッカー日本代表、日本人初スペインリーグプロサッカー選手、1996年アトランタ五輪「マイアミの奇跡」メンバー、1998年フランスW杯エースストライカー

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