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白鵬を彷彿とさせる琴勝峰と、朝青龍の甥・豊昇龍。「強い足腰」で相撲界を盛り上げる若手

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
写真:読売新聞/アフロ

東京・両国国技館で開催されている大相撲七月場所。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、声を出しての応援が禁止されているが、拍手だけが響く館内は実に厳かで、なんだかしっくりきているのが不思議だ。

今回は、平成11(1999)年生まれ同士、闘志あふれる若手の関取二人にスポットを当てよう。

驚異の足腰!豊昇龍

朝青龍の甥として知られる豊昇龍は、初日・二日目と黒星が続いたものの、三日目に初日が出た。

序盤は相手に攻めこまれ、背中まで見せてしまう場面があったにもかかわらず、丸い土俵を上手に使い、強靱な足腰で粘る。その後、右脚の内掛けを見せながら、最後は華麗な下手投げが決まった。

もうダメか、と思わせてからの脅威の粘り腰。足腰が強いのは、多くのモンゴル出身力士にいえることだが、彼はそのなかでも群を抜いているように見える。

入門したての2年前、相撲教習所の稽古取材で目にしたときよりも、ずいぶんと体が大きくなった豊昇龍。それでも、ほかの力士に比べると線は細いほうだが、持ち味を生かし、一場所でも早く新入幕を果たしてほしい。

言うことなしの二十歳・琴勝峰

突き離しても四つでも取れる、幕内東15枚目の琴勝峰は、初日から三連勝。三日目の昨日は、立ち合いから圧力をかけ、一方的に前に出る相撲で文句なしの白星。手も足もよく出て、最後はしっかりと膝を曲げて相手を押し出す、まるでお手本のような相撲だった。

名解説で知られる元横綱の北の富士さんが、自身のコラムで、琴勝峰をこう褒めちぎっている。

足腰の良さは、白鵬の若い頃のようでもある。立ち合いから積極的に前に出る取り口も魅力的である。少しほめ過ぎかもしれないが、まさに前途洋々の力士の出現はうれしい限りである。

出典:「琴勝峰の足腰の良さは、白鵬の若い頃のよう ほめ過ぎかもしれないが、まさに前途洋々【北の富士コラム】」2020年7月20日/中日スポーツ

「強靱」と形容したい豊昇龍の足腰に対して、琴勝峰の足腰は「しなやか」である。そこが、横綱・白鵬の体のしなやかさを彷彿とさせるのだ。北の富士さんは「褒めすぎかもしれない」と前置きしているが、お世辞を抜きに、本当に今後が楽しみな力士である。

この日、向こう正面で解説していた師匠の佐渡ヶ嶽親方は「毎日うれしそうに稽古場に下りてきます。四股もよく踏むし、肩回りや下半身も大きくなってきました。順調に二桁勝てば、三賞受賞、それも複数取れるのではないでしょうか」と、大きな期待を込めて話した。

同学年の二人。先に誕生日を迎えた豊昇龍も、まだ21歳。若い力士の台頭は、中堅・ベテラン力士たちを奮起させるだけでなく、相撲界全体を盛り上げてくれている。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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