ヨウ素化塩の塩蔵茎わさび製品自主回収 全20社に 厚生労働省へ報告しない会社も?透けて見える企業姿勢
東海澱粉が輸入した中国産の塩蔵茎わさびに使用した塩が、日本の食品衛生法では認可されていないヨウ素化塩だったため、それを使って製品化していたメーカーが自主回収を次々発表している。9月17日時点で20社となった。イビデン物産株式会社も冷凍塩蔵茎わさびを輸入していることもわかった。
自主回収を発表した20社のうち、厚生労働省へ報告済みの企業
2021年9月17日11:29現在、自主回収を発表した企業20社のうち、厚生労働省へ自主回収を報告した企業は次の通り。
厚生労働省は、2021年6月から、食品の自主回収を行った場合の届出を義務化している。厚生労働省の公開回収事案検索システムで、2021年8月1日から9月17日までに届出があったかどうかを検索した。厚生労働省への報告順で記載する(厚生労働省の検索結果のリンクは空白で示される場合がある)。
企業の公式サイトを訪問した人にわかりやすいところに表示し、表現しているかに着目してほしい。
ハナマルキ株式会社
「香り楽しむおみそ汁わさびと海苔 5食」ヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため。イビデン物産株式会社より納入
2021年9月10日付
「香り楽しむおみそ汁 わさびと海苔5食」 自主回収のお詫びとお知らせ
厚生労働省
株式会社三幸産業
「まぜ×かけ わさび(ふりかけ) 」原材料に日本では未認可の添加物(ヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩))が使用されていたことが判明したため
2021年9月10日付
「まぜ×かけ わさび 100g」に関する自主回収に関するお詫びとお知らせ
厚生労働省
株式会社三幸産業は、わかりやすいように、トップページの一番上に自主回収に関するお詫びとお知らせの文章とリンクを載せている。
株式会社おむすびころりん本舗
「わさび茶漬け」原材料の一部である冷凍塩蔵わさびに未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたため
2021年9月13日付
【重要なお知らせ】「わさび茶漬け」製品 自主回収のお詫びとお知らせ
厚生労働省
おむすびころりん本舗は、ここに挙げた20社の中で、唯一、プレスリリースで対象製品への配合割合の数字を公開しており、好感が持てる。
食塩へのヨウ素添加は、中国を初め、アメリカ、スイス、オーストラリアなどで、人体へのヨウ素不足を解消するため添加物として認められています。しかし日本では海産物など高ヨウ素食材を多く摂取する食習慣があるため、食品添加物としては認められていません。当該品の製造工程で使用する食塩の配合は8%で、対象製品への配合割合は1/1000未満と極めて微量です。喫食しても健康被害につながる可能性は非常に少なく、健康被害も確認されておりませんが、当該品の販売を休止し、自主回収をさせていただきます。
厚生産業株式会社
「ベジレンド即席わさび漬の素、コミローナわさび漬の素」未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が原材料「わさび茎」の加工工程において使用されていたことが判明したため
2021年9月13日付
「 ベジレンド 即席 わさび漬の素」に関するお詫びと自主回収のお知らせ
厚生労働省
丸美屋食品工業株式会社
「牛わさびふりかけ」などに使用している原材料(本わさび茎)に、 日本では未認可添加物であるヨウ素を含んだ食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため
2021年9月13日付
厚生労働省
株式会社浜乙女
ふりかけ「味付茎わさび」に使用された塩蔵茎わさびに、日本で未認可添加物のヨウ素を含むヨウ素化塩を使用していることが判明したため
2021年9月14日付
厚生労働省
株式会社オリジナルあい
わさび茶漬けに使用している原材料(味付わさび茎)に、日本では未認可添加物であるヨウ素を含んだ食塩(ヨウ素化塩)が使用されていることが判明したため
自主回収のお詫びとお知らせ(当記事を書いた時点では日付の記載がなかったが、後日、2021.9.14付と記載)
厚生労働省
株式会社合食
「たこわさび、蛸わさび、たこわさび(めかぶ入り)、たこわさび(きざみわさび入り)」ヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため
2021年9月14日付
厚生労働省
株式会社戸谷
「小槌わさびお茶漬け」に使用している「味付茎わさび」に使用された塩蔵茎わさびについて、日本では未認可添加物のヨウ素を含むヨウ素化塩が使用されていることが塩蔵茎わさびを輸入しているメーカーの調査で判明したため
厚生労働省
はごろもフーズ株式会社
「パパッとふりかけ わさび、ほか3SKU」国内では未認可の添加物(ヨウ素)を加えた塩(ヨウ素化塩)が使用されていることが判明したため
2021年9月13日付
厚生労働省
2021年9月13日に届出、9月16日公開 (整理番号RCL202100773)
2021年9月13日に届出、9月16日公開 (整理番号RCL202100786)
はごろもフーズ社の製品は、下記、小売店のPB(プライベートブランド)にも使われているもよう。だが、これら小売の公式サイトに自主回収の情報はない(2021.9.17 10:42現在)。
DPRICE 大黒天物産(店舗名 ラ・ムー)
情熱価格 ドン・キホーテ
SH スギ薬局
BS ベイシア
YA 不明
東海農産株式会社
わさびふりかけ、業務用わさびふりかけ、わさびスープの原材料「わさび茎」の製造工程において、日本では未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため
2021年9月13日付
「わさびふりかけ 100g」「本わさびスープ 6 食」 自主回収のお詫びとお知らせ
厚生労働省
2021年9月13日に届出、9月16日公開(整理番号RCL202100782)
2021年9月13日に届出、9月16日公開(整理番号RCL202100783)
ニチフリ食品工業株式会社
ふりかけわさびの原料の一部に国内で認可されていない食品添加物(ヨウ素化塩)が使用されていることが判明したため
企業としての公式サイトは存在しない。当該製品は業務スーパーでの販売
厚生労働省
注)ニチフリ食品株式会社はグループ会社だが別会社で、今回の該当原料を使った商品は扱っていない。
株式会社大森屋
『柿の種わさび茶漬』原材料の「茎わさび」の製造工程において、日本で未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため
2021年9月13日付
厚生労働省
ちきり清水商店株式会社
「わさび茶漬け5g 」日本では未認可であるヨウ素を含んだ食塩を使用していることが判明したため(ニチフリ食品工業製造)
2021年9月14日付
厚生労働省
株式会社白形傳四郎商店
「お茶屋の静岡茶漬け 」日本では未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されているとの報告があったため
2021年9月15日付
厚生労働省
2021年9月17日公開
自主回収を発表した20社のうち、厚生労働省の公開回収事案案件検索システムで公開されていない企業(2021.9.17 10:09a.m.現在)
自主回収発表企業20社のうち、厚生労働省の公式サイトには掲載されていない企業は次の5社。
永井海苔株式会社
「ギフト製品 OJ-30N 、 NA-B 」構成品のわさび茶漬けに海外の一部では認可されており、日本では未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されているとの報告があったため。ニチフリ食品工業株式会社より納入。
2021年9月13日付
株式会社日本海水
「のりわさびふりかけ、わさびふりかけ」日本では未認可添加物であるヨウ素が含まれた食塩が使用されていることが判明したため
2021年9月14日
株式会社山本海苔店
「海苔を楽しむお茶漬 わさび味」に使用している原料(わさび茎)に日本では未認可添加物のヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていたことが判明したため
2021年9月13日
公式サイトに「重要なお知らせ」とあるが、これでは自主回収なのか、役員人事などの経営上の事項なのか、わからない。クリックすれば『「海苔を楽しむお茶漬 わさび味」自主回収のお詫びとお知らせ』と出るが、トップページ上では自主回収のことかどうか判断できない。
株式会社紀ノ国屋
「紀ノ国屋 わさびふりかけ」「フタバ 味くらべ わさびふりかけ」に使用している原材料の「わさび茎」について、日本では未認可添加物のヨウ素が含まれた食塩(ヨウ素化塩)が使用されていることが判明したため(フタバ製造)
2021年9月10日付
山本海苔店同様、公式サイトのトップページに「自主回収」という文字がない。「お詫びとお知らせ」では何を詫びているのかわからない。9月17日付でも「お詫びとお知らせ」があり、こちらは「あんこバターの品質不良」。
株式会社フタバ
「味くらべわさびふりかけ」の原材料「わさび茎フレーク」の食塩に日本で未認可添加物のヨウ素が含まれる塩(ヨウ素化塩)の使用が判明したため
2021年9月13日
以上、全20社を紹介した。
いくら老舗でもブランド力があっても、自主回収の時に「できるだけわからないように」という態度では、企業の信頼を失うように思う。
食品関連企業 品質保証部責任者への取材
9月14日付記事で紹介した、食品関連企業の品質保証部責任者への取材内容を再掲する。この時点では9社の自主回収が判明していた。
日本では、海藻等からヨウ素を摂取するので必要ありませんが、海外では、海から遠い地域でヨウ素が不足するとして、食塩にヨウ素の添加を認めています。たとえばタイでは、市販用食塩に添加を義務付けています。そのような、国内外の添加物の基準の違いを理由にして、今回、東海澱粉の原材料を使用した商品すべてが回収となっています。
この判断をしたのは静岡市保健所で、輸入者である東海澱粉がその旨を納入先に伝達して、回収となっているようです。
海外ではヨウ素の使用を認めているくらいですから、安全性には問題ありません。添加物は、必要が無ければ認可しないのは事実です。でも、海外で安全性を認めているのに「ルール違反だから回収しろ」という指導はどうなのでしょうか?もったいない限りです。わさび好きな人にとっては、涙の回収でしょう。
おそらく、この先も、自主回収は増えると思います。報告を受けて、躊躇していた企業も、他社の動向を見て、「うちの会社も回収しなくては」と動き出すでしょうから。
再度、この方に取材した。
厚生労働省の監視安全課に取材した対応では、「静岡市保健所ではなく、われわれに問い合わせてくれたら別の対応もあったのに」という同課の意向が読めました。
実際、過去にも似たような事案はあります。平成23年と平成29年に起きた未承認遺伝子組み換え生物を利用した添加物の違反事例です。この際も、最終製品への使用比率が0.03%と非常に微量であり、その製造量が膨大であったこと、食品としての安全性に問題がないことから、添加物自体は販売停止と回収を指示しましたが、最終商品はお咎めなしとしています。
今回も、「厚労省に聞いてくれたら、海外で食品として問題なく流通しているヨウ素添加塩くらいは、最終製品まで回収の指示は出さなかったのに」という残念感と、「間に合わなかったのはうちのせいではない」という責任逃れ感が垣間見えた気もします。
協和香料での大量回収(*)では相当にたたかれているのか、厚生労働省には、食品をロスすることへの抵抗はあるようです。
* 筆者注)2002年、協和香料化学が、アセトアルデヒドなど食品衛生法で認められていない5つの物質を使用していたことが判明。 これを使った香料は約450種類。全国の食品メーカーが商品の自主回収を行う事態となった。 当時、筆者の勤めていた食品メーカーも自主回収を行わざるを得なくなった。
厚生労働省は「健康被害の可能性はほとんどない」「重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が低い」と判断
今回のケースで厚生労働省は、報告されたすべての事例において、健康被害の可能性はほとんどない、重篤な健康被害や死亡の原因となり得る可能性が低いと判定している。
企業の品質管理部門の方で「日本人はヨウ素過剰摂取なので安全性に関わる」と匿名でツイートしている人がいるが、前述の通り、おむすびころりん本舗は「対象製品への配合割合は1/1000未満と極めて微量で、喫食しても健康被害につながる可能性は非常に少なく、健康被害も確認されておりません」と発表している。お茶漬けの素や、ふりかけに配合されるわさびは少量で、そこに含まれるヨウ素化塩は微量だ。量の概念を語らずして「安全でない」と断言しないでいただきたい。品質管理の専門家がすべきは、ミネラルの一種であるヨウ素の安全な摂取量の上限・下限を調べ、それを基に、現行の食品衛生法で認可されていないヨウ素化塩の安全な使用量と摂取量を提言し、今回のように大量の食品が食品ロスとして無駄になることの再発防止につなげることではないだろうか。
参考資料
安全性に問題ないが9社が次々自主回収決定「塩にヨウ素添加」法律遵守とはいえ、わさび好きにとっては涙(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/9/14)
ヨウ素化塩を使った中国産塩蔵茎わさび関連製品の自主回収 全部で15社に(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/9/16)
追記(2021.9.17 15:18)
ニチフリ食品株式会社のご担当者様よりお電話をいただき、オリジナルあい株式会社は公式サイトに掲載しているとのことで、「掲載なし」という表現を訂正してリンクを貼った。公式サイトの掲載場所がわかりにくかったので、トップページのわかりやすい場所に移動したとのこと。
追記(2021.9.17 16:10)
また、ニチフリ食品工業株式会社と、ニチフリ食品株式会社は別会社なので、その旨の注意表示を追記した。
追記(2021.9.21 17:18)
ニチフリ食品工業株式会社の「公式サイトはなし」という表現がわかりにくいので、「公式サイトは存在しない」とした。また、ニチフリ食品株式会社のご担当者よりヤフー株式会社へ苗字掲載の件で指摘があったため、「ご担当者様」とした。