就職試験の受験料制度はいいけど、NPOへの寄付を甘く見ないで
■就職試験の受験料制度
今週、ドワンゴが、就職試験の受験料制度を採用したと話題になったニュースがありました。
どのメディアも何も言わないし、CSR関係者も特にツッコミをしていないようですが、この企業寄付のやり方ってどうなのでしょうかね?「受験料を採用費用にまわして、採用のクオリティを上げる」ではなく、なぜ寄付なのでしょうか?
多分、私だけではなく、ここに違和感を感じたNPOやCSR関係者の方もいると思うんです。
儲けを考えていないのでという理由で、寄付というのが日本企業の社会貢献に対する意識を象徴している気がします。寄付までのフローが適当というか。正直に、採用活動に使います、でいいのではないかとも思います。
欧米でこんなことをしたら、叩かれそうです。それはなぜか。
いわば寄付金を集めておいて、寄付先は今後決めますと言っているからです。今回は特異な事例とはいえ、寄付先を決めていない段階で徴収を始めるのは、説明責任を問われてもしかたありませんね。
また、寄付に関しては、株主からもツッコミが入るでしょうね。なぜ寄付なのか?なぜ寄付先はその団体なのか?なぜ経費を引かないのか?などなど、が想像されます。
■寄付先は決まってないけど、多分寄付しますというコント?
上記のようなアイディアも面白いと思います。といいますか、やってみてはどうでしょうか、ドワンゴさん。どう考えても、この寄付金をもらったNPOは叩かれるじゃないですか。(その強さはわかりませんが)
受ける側のNPOは、犬がえさをもらうように、とりあえずもらっておくぜ!となるとは思うのですが、日本ユニセフのように、寄付が話題になると何かと批判が飛んでくる残念な日本の現状がありますので。
また「お金儲けが目的ではありませんので、集めた受験料は奨学制度の基金かなにかに全額寄付をする予定です。」という発言ではなく、「教育関連の基金に寄付予定です」とストレートに言えばよかったのに、とも思います。言い訳がましいと言いますか、寄付という行為を舐めてるというか、ね。“なんとなく”すぎます。
こういう事例を見て、似たような仕組みを採用する所がきっとでてきます。今回の出来事のインパクトが大きいだけに、寄付までのフローをもう少し整備してくれてたら、それこそ企業寄付のイメージ向上につなげられたのですが、それを今言ってもしょうがないですね。すみません。
で、CSR担当者などとの話でよくあるのですが、最終的には「できれば節税になるような寄付がいい」と言うのです。そして、認定NPO法人などの控除がある所が選ばれるわけですが、寄付するって決まっている予算だから、しょうがなく寄付するぜ感で寄付金をする、と。
■寄付市場について
余談ですが、寄付市場について、ひとこと。
拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書いているのですが、日本の寄付市場は1兆数千億円規模のマーケット(個人・法人含む)です。
1兆円弱の市場規模で言えば他には、「郵便物(1.3兆円)」、「スポーツ用品(1.3兆円)」、「太陽光発電システム(1.1兆円)」などがあります。ボチボチ大きな市場です。
それくらいの規模が寄付市場のインパクトとしてあるのですが、今回の新卒採用の有料化と寄付というスタイルが進むと、個人的にはかなり面白いかなと思ってます。日本にある大手企業(上場企業・未上場含む)は1万数千社あると言われてますが、その1割でも採用すれば、かなりな寄付金額になりそう。
ただ、「大量エントリーや新卒一括採用のシステムによって生まれた現状に一石を投じたい」という同社の姿勢は、非常にクリエイティブですし、素晴らしいと思います。大手の新卒採用のマーケットに風穴を空けた出来事でもあります。
もともと、ユニークな採用活動をしていて、クリエイティブな資質が元々あったというはあると思いますが、採用業界を激震させた今回の話が、3年後・5年後にどこまで広がるか楽しみではあります。
寄付については、以前書いた「富裕層が寄付をしない理由“1位”が意外な理由とは」、「社会貢献が節税対策? 寄付(CSR)が世界で推奨されている理由とは」という記事もご参考までにどうぞ。