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「元IBFスーパーミドル級王者を食う!」トレバー・マッカンビー

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 <噛ませ犬>が牙を見せ、圧倒的不利の予想を覆すーーーボクシングファンにとって、これほど痛快なことはないだろう。

 筆者にとって、その典型的なファイトが1988年6月6日にラスベガス、ヒルトンホテルで催されたWBCミドル級タイトルマッチであった。スター王者のトーマス・"ヒットマン"・ハーンズを、伏兵だったアイラン・バークレーが第3ラウンドに屠り、大金星を挙げたのだ。

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 9月14日に元IBFスーパーミドル級チャンピオンのケイラブ・プラントと拳を交えるトレバー・マッカンビーも、<安牌>として選ばれた男だ。28勝(21KO)無敗1ノーコンテストの31歳だが、2018年末から2023年5月までブランクを作っている。コロナ禍でリングに上がれなかったとはいえ、一度引退したと受け取られても不思議ではない。 

 そんなマッカンビーだが、先日の公開練習で披露した彼の肉体には驚かされた。写真を見ればお分かり頂けるように、筋骨隆々で、文字通り鍛え上げられている。「元IBFスーパーミドル級王者のケイラブ・プラントを食ってやる!」という、マッカンビーの意志が伝わってくる。

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 この日、マッカンビーは言った。

 「ケイラブは『いつものファイトと同じようにハードに練習した』と話したが、こっちは何の不安も無いね。ベストな状態の彼を倒すために調整してきた。自分は目標に向かって、基本を繰り返している。それが最も重要なことだ。7歳の頃からボクシングをしてきたが、ずっと大舞台を目指していた。この試合のために、準備してきたよ。

 大規模なファイトに相応しいレベルのスキルを、俺は持っている。自分の存在を知らしめる時が来たね。俺が何者だかを世間に見せる。粘り強さと不屈の精神を持ってリングインするよ。他の魅力的なカードと共に、ファンの記憶に俺の名を残してやる。出場選手全員が懸命にトレーニングを積んだだろうし、9月14日は素晴らしい興行になる筈だ」

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 マッカンビーのコンディションは良さそうだ。メンタル面での充実度も窺える。一方のプラントは、2023年3月にWBCスーパーミドル級暫定王者であるデビッド・ベナビデスに敗れて以来の再起戦となる。

 マッカンビーは、バークレーのようなセンセーションを起こせるか。 

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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