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「役者としての矜持はない」。本宮泰風が明かす覚悟

中西正男芸能記者
今の思いを語る本宮泰風さん

 任侠の世界を描き、2013年から49作が出ているオリジナルビデオ作品「日本統一」で主演を務める本宮泰風さん(49)。配信文化が急速に広がる中、あらゆるランキングに「日本統一」の名前が挙がってくるなど作品が再評価されているという流れも生まれています。追い風が吹く状況でもありますが「役者としての矜持、それはないんです」と独自の言葉遣いで奥底にある覚悟を語りました。

止まるわけにはいかない

 配信が一般的なものになり「日本統一」への注目度が高まっている。ありがたい話、そんなお声を耳にする機会が増えました。

 これまで力を込めてやってきたことが認めてもらえたのであれば、こんなにうれしいことはないです。そして、その状況は自分が作れるものではなく、メーカーさんをはじめ、いろいろな方々が頑張っていただいた結果なのでうれしさ以上に感謝が込み上げてもきます。

 一般の方から「見てますよ」と声をかけられることもあるんですけど、業界の方々から「『日本統一』って、あれだけの数をどうやって撮ってるんですか」という感じで作品について尋ねられるようにもなりました。

 これまでで49作品。ここまで続いていると、作品を見ていない方でも存在は知っていただいているというか興味は持っていただいている。その価値もすごく感じてはいます。

 ただ、それだけ立て続けに作品を出しているということは、止まらずに撮り続けることが求められます。

 そこに新型コロナ禍が来て、状況が変わりました。もちろん不可抗力ですし、現状に応じた対応をするしかない。ある部分では我慢するしかないのかもしれませんが、そんな時でも何とか撮影を続ける。

 「日本統一」は隔月のリリースで、本当にただただありがたい話ながら待ってくださっている方々がいらっしゃる。止まるわけにはいかない。

 これは自分たちで言うことではないのかもしれませんけど、綿密な打ち合わせを重ねに重ねて、この状況下でのやり方を模索してきました。

 例えばロケ一つとっても、飲食店も1グループ最大4人までと言われているような中、食事ではないけれども何十人単位の撮影隊にお店を貸していただくというのは一筋縄ではいかないことでした。

 その中でもやるとなったら「それでも、お前らのために何とかしてやろう」と思っていただけるお店をあたるしかない。そうなると、結局、個人のつながりだったり、これまでのご縁を頼ることになるんです。

 自分も含め、スタッフさんもみんなのツテを手繰り寄せるようにして、撮影を止めずにやってきました。

 そうなると、より一層、感染者が出ないようにさらに徹底することにもなります。なるべく人を少なくして、短い時間で撮影をするにはどうしたらいいのか。その知恵はこれでもかと絞りました。

 今、作品が注目されているのもありがたいことですけど、こんな状況でもリリースを止めずに続けられている。そこでも、これまでやってきたことの意味を再確認させてもらっているというか、ありがたいことだと感じています。

役者としての矜持

 そんなありがたい状況の中、ここからどうしていったらいいのか。ここ最近、そのことばっかりを考えています。

 一つ思っているのが、今までは受け身というか、作品を出して数字が良かったらまた次の機会をいただける。結果を待って、次への扉が開けるようだったら先に進む。そんな感覚だったんですけど、おかげさまで今はそこが安定しているので、さらに先を見据えた仕掛けを考えられるようになってきたんです。

 「日本統一」で共演している舘昌美らを中心に作っていただいているスピンオフの劇場公開作品もあるんですけど、それなんかはまさに今の状況だからこそ打てる手だとも思っています。メーカーさんが本当に一緒になって考えてくださっていることもあって、次に向けての考えを具現化できるのが今だと考えているんです。

 今年の2月で年齢が50歳になる?確かに、そうなんですけど、自分の年齢に関しては自分が処理すればいいので、特に外に向かって何かをするとか、何かが変わるということはないですね。

 ただ、一つの節目ではあるので、役者としての矜持みたいなことを聞かれることもあるんですけど、これはね、特にないんですよ。

 17歳、18歳の頃から「何か自分に合う仕事ができれば」と思って模索してきて、この30年ほどは役者の仕事をやらせてもらってきました。今の仕事で生活はできるようになったんですけど、変な言い方ですけど、まだこれが本当に僕の仕事なのかというと分からない。そんな感覚もあるんです。

 どこかでケガでもしたら、もうそれでおわりですし、今が比較的安定していると言っても、これもどうなるかは分からない。

 この先が末長く見えているということではなく、いつ今の仕事が終わりを迎えるかもしれない。矜持がないというよりも、矜持を持ってゆったり構えている場合ではない。その感覚なのかもしれませんね。

 この先がどうなるか分からないという不安定さが常にあるからこそ、何一つ適当にはできない。目の前のことを一生懸命やる。全く代わり映えしないことですけど(笑)、結局これしかないんですよね。

(撮影・中西正男)

■本宮泰風(もとみや・やすかぜ)

1972年2月7日生まれ。東京都出身。兄である俳優・原田龍二の芸能界入りをきっかけにスカウトされ、94年に日本テレビ系のドラマ「シュプールは行方不明」でデビュー。98年にタレントの松本明子と結婚する。中野英雄、的場浩司、山口祥行と並び「ネオVシネマ四天王」と評される。2013年からスタートした任侠の世界を描いたオリジナルビデオ作品「日本統一」シリーズで主役の氷室蓮司を演じている。身長185センチ。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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