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あわや大惨事だったテイラー・スウィフト事件に見る、ショービズと現代テロの危険な関連 #専門家のまとめ

24年7月4日、5万5千人を動員した蘭アムステルダム公演でのテイラー・スウィフト(写真:REX/アフロ)

8月7日、米人気シンガーソングライターのテイラー・スウィフトがオーストリアのウィーンで開催予定だった公演3つが「テロ攻撃の計画発覚」との理由でキャンセルされた。このとき僕が瞬時に連想したのが、2017年5月22日、英マンチェスターのアリーナ会場で起きた自爆テロ事件だった。こちらも米の人気歌手、アリアナ・グランデの公演直後の悲劇だったのだが、この件について、スウィフト自身が以前から発言していた。

ココがポイント

▼大規模コンサートでの観客の安全確保について、彼女は真剣に悩んでいた。「軍用止血包帯」も自分用に常備

・テイラー・スウィフト、コンサート襲撃を“最も恐れている”と綴った過去のエッセイに注目集まる(Billboard JAPAN)

▼グランデ公演でのテロでは、スウィフトのコンサートと遠からぬ客層の、若い女性観客が多く犠牲となった

・英マンチェスター爆発、死者22人に 自爆攻撃と警察(BBC News Japan)

▼英情報機関は、事前につかんでいた情報を生かしきれなかった

・アリアナ・グランデさんコンサートテロ事件 MI5が異例の謝罪 「惨劇防げた可能性」(TBS NEWS DIG)

▼17年に発生した米野外音楽フェスでの銃乱射事件発生時も、スウィフトは迅速にコメントを出していた

・ラスベガスの音楽祭出演者ら、銃乱射事件発生時の恐怖を語る(Reuters)

エキスパートの補足・見解

ラスベガスの音楽祭襲撃では、先日のトランプ前大統領狙撃事件と同じAR-15系統のアサルト・ライフルも使用された。(米においては)入手しやすい武器を用いた犯罪、大規模な殺傷を企図した無差別テロ攻撃であり、銃乱射事件としては同国史上最悪の58名が犠牲となった。大人数が集まるコンサート会場は「大規模なテロ」の格好の舞台とも容易になり得る。ここに以前からのスウィフトの懸念ポイントがあった。またコンサートやフェスの大型化、年中行事どころか常時開催化は国際的にほぼ定着している。イベントの事前や事後には、SNS上に情報が駆け巡る——つまり逆に言うと、過激主義者が「SNS空間にて存在を誇示するため」の実績づくりの場である、現実世界のターゲットとして、「大規模コンサート以上のものはない」という結論に達することは、十二分にあり得る。これを銃規制だけでは抑え込めないことは、マンチェスターの惨劇が物語っている。手製爆弾が使用された同事件では、あろうことか8歳の女児までもが犠牲となった。つまり我々は、とてつもなく厄介な時代の渦中にいるということだ。ゆえに僕は、スウィフトやその観客の全員が、まもなくの英ロンドン公演ほか、残りのツアー日程を大過なく終えられることを祈らずにはいられない。

作家。小説執筆および米英のポップ/ロック音楽に連動する文化やライフスタイルを研究。近著に長篇小説『素浪人刑事 東京のふたつの城』、音楽書『教養としてのパンク・ロック』など。88年、ロック雑誌〈ロッキング・オン〉にてデビュー。93年、インディー・マガジン〈米国音楽〉を創刊。レコード・プロデュース作品も多数。2010年より、ビームスが発行する文芸誌〈インザシティ〉に参加。そのほかの著書に長篇小説『東京フールズゴールド』、『僕と魚のブルーズ 評伝フィッシュマンズ』、教養シリーズ『ロック名盤ベスト100』『名曲ベスト100』、『日本のロック名盤ベスト100』など。

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