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リーガ初得点と躍動した久保建英。先発奪取に向けて必要な「結果の積み上げ」と「守備意識」

森田泰史スポーツライター
久保建英(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

久保建英が、現地時間10日に行われたリーガエスパニョーラ第13節ビジャレアル戦で得点を記録した。久保にとって待望のリーガ初得点が生まれ、マジョルカはビジャレアルに3-1で勝利している。

■ベンチスタートとスタメン

この夏、レアル・マドリーからレンタルでマジョルカに移籍した久保。第3節バレンシア戦(79分から出場)でデビューを飾ると、第4節アスレティック・ビルバオ戦(63分から出場)、第5節ヘタフェ戦(19分から出場)と少しずつプレータイムを増やして、第6節アトレティコ・マドリー戦で今季初の先発フル出場を果たした。

だが第7節アラベス戦(フル出場)以降、第8節エスパニョール戦(57分から出場)、第9節レアル・マドリー戦(59分から出場)、第10節レガネス(59分から出場)と再びベンチスタートの日々が続く。第10節オサスナ戦(出場なし)では、まったく試合に参加できなかった。

それでも第12節バジャドリー戦で先発に返り咲き、第13節ビジャレアル戦でPK奪取とゴールと大暴れしている。

■先発の座をつかむために

マジョルカを率いるビセンテ・モレノ監督は、4-3-3を基本布陣としている。このチームの「核」は中盤の3枚。イドリス・ババ、アレックス・フェバス、サルバ・セビージャである。レアル・マドリーのプレシーズンツアーに参加した久保だが、そこでは度々インテリオール(インサイドハーフ)で起用されていた。これは久保の特性というより、ジネディーヌ・ジダン監督が使える選手たちを各ポジションに据えていった結果、久保をインテリオールの位置に据えたと見るのが妥当だろう。

久保はマジョルカではウィングで起用されている。ただ、定位置を確保しているのはラゴ・ジュニオール、ダニ・ロドリゲスであって、現時点で久保の役割は途中出場で流れを変える「ジョーカー」というところだ。

では、久保がプレータイムを増やすためには、どうすればいいのか。逆説的に、ラゴとD・ロドリゲスの特徴を掘り下げれば、答えは見えてくる。左サイドに置かれるラゴは、典型的なアフリカン・ウィンガーだ。スピードがあり、突破力に優れている。カウンターの際に推進力を発揮して一人でボールを前線まで運んでくれるため、味方にとっては休む時間が確保でき、なおかつ最終ラインを押し上げられるメリットがある。独力で2、3人のDFを引き付け、プレスを剥がしてくれるラゴというのはチーム全体から見て助かる存在だ。

一方、右サイドに置かれるD・ロドリゲスは、運動量と献身性で欠かせない選手になっている。先述したように、マジョルカの肝は中盤の3枚だ。その3枚をサポートするべく、D・ロドリゲスは守備時に帰陣してミドルゾーンにおけるマジョルカのプレス網を厚くする。時に1st DF(ファーストディフェンダー)として、時に3人目・4人目のボールを刈り取るプレス要員として、ピッチ上を走り回る。

久保の技術とアジリティは、リーガ1部で十分通用するレベルにある。だが近年、各チームの分析力はテクノロジーの発達と共に日進月歩で向上している。久保に関しては、この点で言えば、マドリーでのプレシーズンが仇になったかもしれない。どういったプレーをするのかが、広く知れ渡ってしまったからだ。リーガ1部のディフェンダーたちは賢く、狡猾だ。久保にテクニックがあると見るや否や、彼らはゴール前に近づく前の段階で久保をファールで潰すようにした。似たような現象はジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー)にも起きており、彼ら若い選手は、その壁を乗り越える必要がある。

久保が可能性を広げるために、狙うはD・ロドリゲスのポジションである右WGだろう。ビセンテ・モレノ監督は逆足のアタッカーをサイドに置くのを好む。そして、それは現代フットボールの傾向とも合致する。定位置奪取に必要なのは、守備の改善である。例として挙げたいのは、乾貴士だ。日本でテクニシャンとして鳴らしていた乾だが、ドイツ、スペインへの移籍を経て、ホセ・ルイス・メンディリバル監督(エイバル)の下で守備戦術を叩き込まれた。

ロシア・ワールドカップで、世界を相手に戦えていた選手の一人は、間違いなく乾だった。「守備から入る」というのは遠回りではない。むしろ、近道なのだ。マジョルカやエイバルのような1部残留が目標のスモールチームにおいては、とかく守備が重要になる。個人として、組織の一員としてディフェンス力を上げるのは、最終的なステップアップに必ず繋がる。

ラゴ(13試合出場/ボール奪取数64回/3得点)、D・ロドリゲス(13試合出場/ボール奪取数52回/2得点)、久保(10試合出場/ボール奪取数22回/1得点)と数字の面でも明らかだ。

現在の久保からはゴールへの飢えを感じる。大事なのは、その継続だ。ラゴとD・ロドリゲスはそれほど得点力のある選手ではない。「結果の積み上げ」が、差別化をもたらす。

それに加えて、ビセンテ・モレノ監督の守備戦術を理解することだ。久保の才能は疑いようがない。思考の切り替えーーそれがマジョルカにおける久保の挑戦の成否を左右する。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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