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非常に強い台風9号 お盆で「二百十日」の沖縄を直撃

饒村曜気象予報士
沖縄本島へ向かっている台風9号の雲(8月30日15時)

非常に強い台風9号が北上

 フィリピンの東海上の台風9号が発達しながら北上し、8月31日から9月1日に非常に強い勢力で沖縄に接近する予想です(図1)。

図1 台風9号の進路予報(8月30日21時)
図1 台風9号の進路予報(8月30日21時)

 台風の進路予報は、最新のものを利用してください

 沖縄では31日から9月1日にかけて大荒れの天気となるおそれがあります。

 暴風やうねりを伴った高波に厳重に警戒し、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、高潮に警戒・注意してください。

 令和2年(2020年)8月30日21時の予報では、台風9号が那覇市の南約210キロに達する8月31日には中心気圧940ヘクトパスカルの非常に強い台風です。

 それが、久米島の北北西約200キロに達する9月1日21時には、中心気圧935ヘクトパスカルの非常に強い台風と、さらに発達しています。

 つまり、台風9号が沖縄本島の真上を通過した場合、沖縄本島では935から940ヘクトパスカルを観測することになります。

 これは、すごい記録です。

 那覇市では、明治23年(1890年)以降、約130年の観測がありますが、これまで、940ヘクトパスカル以下を観測したのは3回しかないからです(表1)。

表 沖縄県・那覇での最低気圧の記録
表 沖縄県・那覇での最低気圧の記録

 沖縄本島南部が暴風域に入る確率は、8月31日夜から高まり、確率が一番高いのは、9月1日6時から9時です(図2)。

図2 沖縄本島南部と宮古島が台風9号による暴風域に入る確率
図2 沖縄本島南部と宮古島が台風9号による暴風域に入る確率

 宮古島で暴風域に入る確率が一番高くなるのは、9月1日0時から3時と、沖縄本島南部より少し早い時間帯です。

 いずれにしても、沖縄県で台風9号に対する防災活動ができるのは、沖縄でお盆の行事が始まる8月31日の日中しかありません。

沖縄のお盆と「二百十日」

 お盆は日本で夏季に行われる祖先の霊をまつる行事で、太陰暦(旧暦)の7月15日を中心に行われてきました。

 しかし、明治6年(1873年)の太陽暦(新暦)採用後、7月15日に合わせると農繁期と重なって支障がでることから、太陽暦(新暦)の8月15日に月遅れのお盆とする地域が多くなっています。

 ただ、沖縄では、今でも太陰暦でお盆行事を行っています。

 令和2年(2020年)8月31日は、太陰暦の7月13日でお盆のウンケー(お迎え)です。

 9月1日が太陰暦の14日でお盆のナカビ(真ん中の日)、2日が太陰暦の15日でお盆のウークイ(お送り)です。

 新型コロナウィルスの影響で、例年とは違っていると思いますが、多くの人が集まって祖先の霊をまつる大切な日に台風9号襲来です。

 立春から数えて210日目を、「二百十日」といい、昔から台風災害に警戒すべき日とされてきました。

 令和2年(2020年)の「二百十日」は8月31日と、沖縄でのお盆の日と重なります。

西日本接近

 台風9号が、沖縄付近を通過した後、東シナ海を発達しながら北上し、9月2日には非常に強い勢力のまま西日本へかなり接近する見込みです。

 暴風域に入る可能性が一番高くなる時刻を、台風が最接近する時刻とすると、鹿児島では、9月2日の18時から21時、福岡と長崎が21時から24時となっています(図3)。

図3 福岡・長崎・鹿児島が台風9号による暴風域に入る確率
図3 福岡・長崎・鹿児島が台風9号による暴風域に入る確率

 これは、あくまで、台風9号の中心が2日夜に最接近ということで、当然のことながら、強い風や雨は最接近するよりも早く始まります。

 西日本も、防災活動をする時間的余裕は、それほど多くはありません。

 台風9号の進路予報が、ぼぼまっすぐ北上しているのは、東日本から西日本の猛暑をもたらしている太平洋高気圧の勢力が強いからです。

 台風9号の暴風雨の影響がない地方では、晴れて気温が上昇します。

 そして、8月31日も、9月1日も、関東から西日本の広い範囲にわたって、熱中症警戒レベルが「極めて危険」あるいは「危険」となる状態が続きます(図4)。

図4 熱中症警戒レベル(8月31日の日最高値の予想)
図4 熱中症警戒レベル(8月31日の日最高値の予想)

 最新の台風情報の入手に努め、警戒をしてください。

 と同時に、熱中症情報の入手にも努め、警戒してください。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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