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「アナ雪」エルサはレズビアンであるべきか?「同性愛は普通だと子供たちに教えるべき時」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
Courtesy of The Walt Disney Company

「アナと雪の女王」のエルサは、続編で、女性の恋人を見つけるべきか。ソーシャルメディアで、賛成派、反対派が熱い議論を展開している。

始まりは、先週土曜日、アレクシス・イザベルという女性が「#GiveElsaAGirlfriend だって、レズビアンの女の子たちもお姫様だから!」とツィートしたこと。この「#GiveElsaAGirlfriend」というハッシュタグはあっというまに広がり、賛否両論のツィートが次々に押し寄せた。

賛成派のコメントには、「ディズニーはエルサにガールフレンドを作ってあげるべきだ。レズビアンだってフェアリーテールを与えてもらう価値がある」「そうしない理由は何もない。同性愛は普通で正当なのだと、子供たちに教えるべき時だ」「愛の扉は開いている。誰に対しても。ストレートの人たちに対してだけじゃなくて」「ディズニーのお姫様がレズビアンであったからといって、女の子たちがレズビアンになるわけじゃない。人魚姫が私を人魚にしなかったのと同じ」「私が若かった時にもディズニーのお姫様にレズビアンがいたら、私はどれだけ力づけられたことか」などというものがある。

「アナ雪」のストーリーそのものに、すでにLGBTのための土壌があると見る人々もいる。

エルサは自分のパワーを秘密にし、お城の中でずっとひとり隠れていたが、やがて自分らしく生きることを決める。それはまさに、クローゼットだったLGBTの人々がカミングアウトすることのメタファーだというのだ。ツィッター上には、「『レット・イット・ゴー〜ありのままで〜』のシーンはとても美しい。自分がカミングアウトした、ようやくありのままの自分になれた瞬間のよう」というコメントもあった。また、エルサは主人公だが恋のお相手がおらず、ラブストーリーは妹のアナが担っている。さらに、クリストフの声を務めるジョナサン・グロフは、ゲイであることをオープンにしている俳優だ。

反対派も、黙ってはいない。

ソーシャルメディアには、「なぜ?これは子供向けの映画だよ」「エルサにガールフレンド?ごめん、むかつく」「ディズニー、お願いだから、娘のお気に入り映画をめちゃくちゃにしないでください」「政治的に正しくあろうとするのが間違ったほうに行った例」「世界は狂ってしまった」などのコメントが寄せられた。

偶然にも、米時間2日(月、)GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)は、映画の中でLGBTがどう扱われているかを報告する毎年恒例の「スタジオ・レスポンシビリティ・インデックス」を発表している。調査結果によると、2015年、ディズニーとパラマウントは、公開作品の中で、ひとりもLGBTのキャラクターを出してこなかったとのことだ。ライバルも決して褒められたものではなく、ソニーは3作品、ワーナー・ブラザースは5作品だった。GLAADのプレジデント、ケイト・エリスは、映画スタジオは、テレビや、Netflixやアマゾンなどストリーミングサービスに比べて遅れているとし、より高い基準をもって、正しく描かれたLGBTのキャラクターを出していくよう求めている。

「アナ雪」は2013年11月に北米公開され、全世界で12億7,600万ドルを売り上げて、史上最高のヒットアニメとなった。オスカーも、長編アニメ部門と歌曲部門(『レット・イット・ゴー〜ありのままで〜』)の2部門で受賞。現在は、2018年を目標に、続編の製作準備が進められている。続編でも監督を務めるクリス・バックは、昨年夏、MTVニュースで、続編はさらに現代風のフィールがあるものになるとし、「今日、男の子と女の子、大人の男性と大人の女性が直面している多くの問題に触れるつもりだ。僕らは、社会で何が起きているかを十分意識している」と語った。そこには、この問題も含まれるのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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