なでしこジャパンが東京五輪金メダルのカナダを圧倒!アメリカに次ぐ2位で大会を終える
【東京五輪王者に快勝】
2月16日からアメリカで行われたSheBelieves Cupで、なでしこジャパンは3戦目でFIFAランク6位(日本は11位)のカナダと対戦。3-0で快勝し、昨年11月のヨーロッパ遠征から続いていた連敗を4でストップ。W杯前の重要な強化試合で、東京五輪優勝国相手に、大きな結果を手にした。大会は、3連勝のアメリカが優勝(大会4連覇)。残る3チームが1勝2敗で並び、日本は得失点差の2位で大会を終えた。ブラジルが3位、カナダは4位となった。
この試合で、池田太監督は、第2戦のアメリカ戦からスタメン5人を変更。ボランチにMF林穂之香、ウイングバックの右にDF清家貴子、左にMF遠藤純、3トップの左にMF宮澤ひなた、トップにFW小林里歌子が入った。
激しくボールを取りに来ないカナダに対して、立ち上がりは攻めあぐねる場面も見られたが、時間と共に、日本がカナダを攻略していく。良い距離感でボールを動かしながら、数的優位を作って試合を優位に進めた。
カナダはアメリカのリーグでプレーする選手が多く、今は開幕前。中2日の3連戦ということもあり、1、2試合目からメンバーを半数近く入れ替えていたが、それでも全体的に動きが重かった。最後尾からビルドアップに関わったGK山下杏也加は、「カナダは思ったよりも個々のコンディションが良くなくて、プレッシャーもそこまでこなかったので、アメリカやブラジルに比べたら相手をフリーではがすことができました」と、これまでの対戦と比較して本調子ではなかったことを明かした。
代表の最多出場記録を持つベテランのMFクリスティン・シンクレアも、効果的にボールを受けられる回数は数えるほどだった。
先制点が生まれたのは、26分。ウイングバックの清家とトップの小林、インサイドハーフの長谷川が連動し、縦に抜け出した小林に三宅のロングフィードがぴたりと合った。中央のスペースに走り込んだ清家に、小林の絶妙なスルーパスが通り、GKの手前で流し込む。長谷川は「相手のサイドバックが結構食いつくタイプだったので、相手を見てしっかり裏を狙って、そこから得点もできました」と振り返る。
5試合ぶりのゴールに選手たちの笑顔が弾け、日本のペースで試合は進んだ。
41分、宮澤のスルーパスを受けた遠藤が深い位置からエリア内に入って仕掛けると、相手がファウルで遠藤を倒す。得たPKを長谷川が右隅に力強く決めてリードを2点に広げた。
背水の陣となったカナダが攻撃の圧力を強めてくると、池田監督はすかさず、ハーフタイムに3人交代を敢行。FW岩渕真奈、DF清水梨紗、MF藤野あおばの3人を投入。その狙いについては、「ボールを動かしてゲームをもう少しコントロールすることが必要だと感じました。選手の疲労度やコンディションも含めた判断」だったという。それによって右サイドの攻撃が再び活性化し、72分には清水と藤野のコンビネーションから藤野が強烈なシュートを放ち、カナダの勢いを牽制した。
そして、77分。宮澤のスルーパスに抜け出した遠藤がGKとの1対1を制して3-0。このゴールが試合を決定づけた。78分にはDF乗松瑠華とMF杉田妃和を投入し、終盤には初選出のDF石川璃音もピッチに立ち、最後まで危なげなく試合を締めくくった。
【イングランド戦から積み上げたもの】
今大会で一番の収穫は、昨年11月からオプションとしてトライしている3-4-3のシステムで、強豪国とも戦える手応えを掴んだことだろう。強豪と対戦することで戦術面の成熟度が高まってきたとも言える。
昨年11月、イングランドに0-4で敗れた衝撃的な敗戦は、やはり一つのターニングポイントになったようだ。まだ慣れない3バックで欧州王者にチャレンジしてなす術なく失点を重ねた。自信を失いかけた選手もいたようだが、課題を一つずつ見直していき、今大会では強豪3カ国相手に攻守で主導権を握った。FW植木理子は言う。
「イングランド戦で前半0-1で折り返した時のチームの雰囲気と、今大会でアメリカ相手に0-1で折り返した時の雰囲気はまったく違っていました。うまくいかない時は今もありますけど、割り切って修正しようとする力がついてきたと思います」
池田監督がミーティングで相手の分析や狙いを落とし込み、中2日のトレーニングで取り組んだ形をピッチで表現できたシーンも少なくなかったようだ。
最終ラインは3戦連続でDF熊谷紗希、DF三宅史織、DF南萌華の3人が先発。GKはブラジル戦は田中桃子、アメリカ戦とカナダ戦は山下がゴールを守った。DFのメンバーを固定した理由について池田監督は、「距離感とかを選手同士で修正しながら、1試合ごとの成長を促したかった」と明かした。その狙い通り、選手間の修正スピードは試合を重ねるごとに早くなり、守備のバリエーションが増えた。
熊谷は言う。
「ブラジル戦ではミドル(中盤)からブロックを作ってコンパクトに守ることができて、アメリカ戦では前から奪いにいく守備がハマりました。それを使い分けながら、相手の特徴に合わせた中でどう守っていくか。さらに積み重ねていく必要はありますけど、自分たちで修正できた部分も多かったと思います」
試合が止まった瞬間や、水分補給のちょっとした間にも選手同士で話し合う場面が見られたのは印象的だった。
一方、前線では新たにチャンスを掴んだ選手が活躍。初先発の小林と清家、遠藤がそれぞれ、ゴールとアシストで結果を残した。
池田監督は3バックのメリットについて、ピッチの横幅を広く使えること、攻守に上下動を厭わないウイングバックの適性を持った選手がいることを挙げている。
そのウイングバックのポジションは、左がMF杉田妃和と遠藤、右はMF清水が主力だが、この試合で清家がゴールを決めてアピールした。「ワールドカップに向けて生き残っていくためには何か違いを見せないといけないとずっと考えていて、得点にこだわっていた」と清家。ストライカー出身のゴールへの嗅覚は魅力で、ここぞという場面での勝負強さは、浦和が上位をキープしている要因の一つ。この試合は前半での交代となり、「内容だけを見たらそこまで満足できていないです」と表情は少し硬かったが、これからが楽しみだ。
同じく結果という点では、2点目のPK獲得と3点目に絡んだ遠藤の活躍も光った。アメリカで1年間プレーして体の大きい選手たちに負けない間合いを身につけ、攻守において1対1の勝率が上がった。PKを獲得した仕掛けについて、「ボックス内でフェイクを入れれば足を出してくるのはわかっていたので狙い通りでした」と、力強いコメントを残した。
アメリカ戦とブラジル戦で積み上げた内容を、カナダ戦で結果に結実させたなでしこジャパン。
とはいえ、イングランド戦を基準にすれば、突き詰めなければいけない部分はまだまだあるようだ。
山下は、「失点はしていないですけど、カウンターや、ゴールに向かってくるドリブルに対して下がってしまって、フリーで打たれてしまうシーンはどの試合でもあったので。そこをどう守っていくかはこれからの課題だと思います」と、守備の課題をピックアップ。
長谷川は、3バックの利点とデメリットをこう語っている。
「 攻撃の部分で連係はたくさん出てきましたが、ボールを握られる相手に対して、奪った後に前(の人数)が少ないと感じる時があるので。この(3バックの)フォーメーションをやるには、自分たちがボールを持つことが前提になるかなとは感じています」
従来の4バックと、強豪相手に一定の成果を得た3バックを、どう使い分けていくのか。次の代表活動は4月のヨーロッパ遠征で、FIFAランキング18位のデンマークとの対戦が決まっている。7月のワールドカップに向けて、池田ジャパンのチームづくりはラストスパートに突入しようとしている。