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講談社元社員「妻殺害」事件の差し戻し審開始!マスコミの注目度も高まった

篠田博之月刊『創』編集長
公判終了後、朴鐘顕被告の母親(左)を囲んでマスコミが取材(筆者撮影)

 妻を殺害したとして2017年に逮捕され、1審・2審で有罪判決が出されながら、最高裁が異例の逆転「差し戻し」判決を出して注目された朴鐘顕被告の差し戻し審が本日、2023年10月3日、東京高裁第4刑事部で始まった。102号法廷という大きな法廷が使われたのだが、傍聴券を求めて行列ができた。

 裁判はまず被告人が証言台に立ち、氏名などを名乗ることから始まったのだが、朴被告は職業を訊かれて「今は無職です」と答えた。朴さんは最近、髪を短く刈りあげたようで、坊主頭という感じだった。

 異例の裁判展開とあって、マスコミの注目度も高まったようで、閉廷後、裁判所入り口で、朴被告の母親が囲み取材を受けたのが冒頭写真だ。息子が妻を殺害などありえないと信じて裁判を傍聴し、孫を育ててきた母親だが、最高裁の逆転判決を受けて、1日も早く無罪判決が出てほしいと語っていた。

初公判で語られた内容は…

 きょうの裁判では、まず弁護側が弁論を行った。この事件はそもそも、妻が自殺したと夫の朴さんや遺族が言っているのに、捜査側が殺人事件と見立てて立件したものだが、弁護側が改めてこう主張した。1・2審の検察の主張は証拠がなくわからない部分を推測で補っていたものだが、それは最高裁で否定された。わかっていることには無罪の痕跡の方が多い。2階の子ども部屋のドアに残された包丁の跡など、朴さんの主張を裏付ける証拠は幾つもある。

 そもそも他殺ではないことを被告人側が証明しなければいけないように求めること自体がおかしいし、有罪ストーリーに合理性がない。判明している証拠を推理をまじえずに判断すれば他殺説はありえないというのが弁護側の主張だ。

 初公判では検察側は弁論を行わなかった。その後は今後の審理の仕方について、証拠調べをどうするかなど裁判官による弁護人・検察官双方の確認が行われた。検4人の証人尋問が申請されており、その証人尋問などが行われると、判決は2024年春ではないかという見方もある。次回の公判期日は、きょうは決まらなかったが、年内にもう一回、公判があるのではと見られている。

 朴さんの保釈申請はこれまで何度も出されている。今までは認められてこなかったが、審理差し戻しという展開を機に改めて裁判所の判断が待たれるところだ。

もともと検察の推論には無理がある

 そもそも朴被告の自宅という現場の状況を見れば明らかなのだが、瀕死の妻を抱えて急な階段を上り、自殺に見せかけるために妻を転落させたという検察側の主張にはかなりの無理がある。私が撮影した階段の写真をここに掲げたが、手すりを使わないと危ないような階段で、検察のストーリーには現実性がない。決定的な証拠が何もない状態で、「疑わしきは被告人の利益に」という裁判の原則が適用されないなど、1・2審の判決にはいろいろな疑問を感じざるをえない。

事件現場とされる自宅の階段(筆者撮影)
事件現場とされる自宅の階段(筆者撮影)

 出版界という同業の編集者が妻殺しの容疑で逮捕されるという驚くべきこの事件、差し戻し審でいよいよ真相解明へ向けて審理が始まったわけだ。裁判のあり方そのものが問われた裁判と言え、注目していく必要があると思う。

 この裁判の争点や問題点については、この1年半ほど、月刊『創』(つくる)にかなりの記事を載せ、このヤフーニュースにも相当量の記事をアップしてきた。興味ある方は、主なものを下記に掲げたのでお読みいただきたい。今後の経緯については『創』誌面やこのヤフーニュースで報告していくつもりだ。

 母親は、朴さんの子どもたちはきょうにも父親が帰ってくるのではと心待ちにしていたと語っていた。1・2審の有罪判決はこの家族にとってあまりに酷なものだった。一刻も早く真実が明らかになってほしいと思う。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/43cb9ba95114e88b9733b4b146d48feb8936e734

講談社元社員は本当に妻を殺したのか。最高裁で審理中の事件をめぐる新たな動き(2021年6月7日)

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/59fc371b9ff4cb3f737f7eb2e9216997003ea824

「妻殺し」判決の講談社元社員の母親が初めて事件について語った!(2021年7月7日)

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0b6a0a87dd7c27d88e4fa8857525441cfc092eca

講談社元社員の「妻殺し」とされる事件を報じたNHK「クロ現」の大きな反響(2022年4月22日)

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/782244fb0f8c11ba3f9ed132bc5b989773adc690

講談社元社員「妻殺害」裁判で最高裁が有罪判決破棄差し戻しという「逆転」判決の意味(2022年11月21日)

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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