【潜入取材】NTTデータは「なぜ?」人気企業の常連なのか? 世間のイメージとの大きな溝に迫る。
NTTデータと言えば、昨年発表された『この5年で「正社員を増やした」500社ランキング』で堂々の1位を獲得している。2016年にアメリカ・デル社のITサービス会社を買収したことも大きな要因となっており、グループの正社員数は5年間で6万人近く増加し、売上高は2兆円を超えている。市場では充分な資金や技術があっても事業を動かす人材がいなければ企業は回らない。NTTデータは事業拡大で勢いづきながら従業員数を拡大しているのだ。
トラディショナルでお堅い組織代表だけど人気企業?の謎
そんな成長・進化を続けるNTTデータだが、事業の成り立ちはいわゆる「お国のお仕事」からスタートしていることもあり「トラディショナルでお堅い」という印象が市場には根深くあるのは事実。ところが「なぜ?」新卒・転職市場共に人気企業の常連にランクするのかを確かめるべく潜入取材を実施した。
世間の持っているNTTデータっぽさがない
まずは1996年入社のいわゆる叩き上げ社員で現在は金融事業推進部デジタル戦略推進部の部長を務める花谷 昌弘氏に話を聞いた。衝撃を感じたのはお会いして数秒のこと。
私、世間が持っているNTTデータっぽくない経歴しかないけど大丈夫ですかね?かなりイメージが崩れるかもしれないですよ
という想定外のオープニングだった。金融領域・トラディショナル・堅い組織を束ねる部長のイメージからは程遠いフランク且つキレのあるコミュニケーションだった。
英語も出来ずにいきなり海外担当に配属
花谷氏のNTTデータの入社背景だが、「英語も出来ないし、安定した企業が良い」という親の意見も踏まえて外資系コンサルティング会社の内定を断ったほど海外への意識は弱かった。
ところが公共分野に配属されて最初の任務は海外営業であった。同時期にNTTデータが海外事業/グローバル進出を手掛けようとしていたとは言え、留学経験はなくTOEIC660点レベルだったにも関わらずということに驚いた。
本人も驚きを隠せず当時の人事担当部長へ「本当に自分なのか?」を確認する中で「世界中どこでも元気に前向きに頑張れそう」というある意味自由で柔軟性のある回答だったことで、新人の頃から入社前のお堅い会社の印象が違って見えていたとのこと。
NTTデータのブランドがあるからこそできる「大きくて社会的意義」のある仕事
昨年、花谷氏は会社と連携して書籍を出版している。さらにはメディアの取材対応も各所での講演もこなすフレキシブルさ。直近では行政の会議にて「情報銀行」についてプレゼンするという一見お堅い印象も持つ。
ここで気付くのは明確に「NTTデータの名前・ブランド力がある」からこそできる事である。トラディショナルでお堅い国のインフラ業に関わってきたことが、実は、企業からの信頼に繋がっている。
だからこそお客様から信頼をして頂け、他社ではできないような大きな仕事が舞い込んで来ているのだ。つまり、NTTデータは世間が持つ印象のように「トラディショナルでお堅い」部分は事業の柱として存在しているが、逆にそこに寄せられる信頼を使って新しい挑戦や大きな事業に挑戦しているということになる。
逆転の発想で今、金融領域がおもしろい
花谷氏曰く、今の金融分野はFintech企業や異業種の参入による業界再編など、いろいろなルールが変わるタイミングだからこそ政府も巻き込んだ大きくて社会的意義のある事業が出来る。本当の意味での影響力を持つNTTデータだからこそ、世の中を変えたいと思っているとのこと。
このあたりも世間が持つ「上から降りてくる仕事をしっかりこなす」という印象とのギャップになっている。
現在NTTデータはTrusted Global Innovatorというvisionを掲げてグローバルにビジネスを展開しているが、ちょうど花谷氏が入社した20年くらい前のvisionはバリュー・クリエイター=価値を創り出す人。
花谷氏の行動には、このポリシーが染みついている。バリューを生み出すことでお客様の信頼を得て、ともにイノベーションを起こしていく。組織のメンバーには、もちろんITを大切にしながらも、サービスデザインの考え方を学んでもらって、自分で創出したアイデアを、お客様に提案し検証するというサイクルを大事にしている。
銀河鉄道999とNTTデータは同じ
最後に花谷氏にストレートに世間の印象(PM寄りで、管理系・大規模システムを開発している)について聞いてみた。
社内には沢山の役割があるが私は常に新しい所を歩んで来た。横に誰かがいるという経験をしてきていない。正直あまりそのイメージはない。
NTTが母体であり、元々は国のIT部門という側面があったため「管理系・大規模・国の基幹システムを滞りなく運用」という側面が伝わってしまっているかもしれない。ただ、そもそも、その案件を獲得した当時のことを考えると、当時全くなかったサービスやシステムを提案ベースで生み出してきたという事実がある。
まさに共に価値を創り出す、というDNAをずっと持ってやってきたのがNTTデータだと思っている。私は、NTTデータは銀河鉄道999に近いイメージと常々思っている。
外見は単なるSLで古くて堅いイメージがあるが、実は中身は宇宙船。最新の技術で最新のビジネスを考えている。そういうイメージを持ってもらえると嬉しい
入社前とのギャップが大きかった
2019年に中途採用で入社したばかりの社員にも話が聞けた。
技術革新統括本部システム技術本部セキュリティ技術部情報セキュリティ推進室の大石 眞央氏に入社前と入社後、そして約1年を経過して感じていることは何なのか?ストレートに聞いてみた。
正直入社前は今より息苦しい環境かと思っていた。ベンチャー含めた数社を渡り歩いて来たのでどこか諦めはあった。
小さいことだと服装等色々言われると思っていた。ところがTPOの文化があるので自己判断に任せてもらっている。またはたらく時間も場所もフレキシブルで驚いている
優秀な人材が多いことも想定外
外部からするとトラディショナルでお堅い印象があったので、安定的にビジネスをして攻める人はいないと思っていたが、いたるところに優秀で攻めている社員が多いことに気づいた。一方で会社の文化なのだろうと思うのは「温和な方が多く感情的になる人は少ないのでここは日本の会社という印象」
お金のあるところに優秀な人材は集まる
最終的に数ある転職先の中でNTTデータを選んだ理由を聞くとシンプルに「お金」と答えてくれた。
これは給与水準でもあり一方で会社の体力であり社員に対しての投資という意味でもある。大石氏はセキュリティ領域ということもあり資格取得、研修、資格維持など年間でそれなりのコストがかかるが、業務上に必要なものであれば会社負担になる仕掛けがある。
エンジニアの世界では企業選択の軸としては重要であり、仕事の大きさやかけられるコストも魅力的だと言う。
人事本部採用担当課長が語るNTTデータ
最後に人事本部採用担当課長の頓所 孝之氏にも話を伺ってみた。
NTTデータでは経験者採用を急激に拡大しており年間200~300名の規模で採用をするようになっています。
それだけ事業拡大=市場からの信頼を勝ち得ることができ始めているのではないかと思います。
NTTデータは世間のイメージと違って「新しい領域を切り開く仕事」も実は多く、オープンソースのコミッタのように技術に強い社員も沢山いるので、ここは大きなギャップでしょうね。広く知ってもらえると良いなと思います。
今、野心的な人材を探しています。
新しい領域の切り開く仕事、先進技術に関わる仕事ができるということを知ってもらいたい思う一方で、プロジェクトマネジメントについても正しく理解してもらいたいと続ける。
プロジェクトマネジメントはお堅くて、創造性のない、つまらない仕事というイメージあるかもしれないですが、実はそれは間違いです。突き詰めると実はアートの側面が強くて、ロジカルさとクリエイティブさが求められる仕事だと思っています。
採用担当としては、NTTデータというブランドをうまく活用しながら自己実現をしていこうという、ある意味で野心的な人を探しています。そして新しいことに挑戦する、組織に新しい風を吹かせてもらえるような方に出会いたいと思っています。
大きなプロジェクトに携わりたい、社会貢献をしたいという思いを持つ方、大歓迎です。
「逃げられない」から「逃げない」への進化
NTTデータの世間からの印象は今回の潜入取材で大きく変化した。国の一事業だったとはいえ、常に新しいことを創って来たのは事実。お堅いDNAと新規事業のDNAが今のNTTデータを支えているように感じる。
元々国との関わりが故に「逃げられない」というニュアンスが、今では社会のインフラを創るために「逃げない」に変化している点は今回の潜入取材で最も腹落ちした点である。
企業を見極める力は社会とビジネスの知識
新卒市場だけではなく転職市場でも業界、企業は印象によって判断が変わるものです。
今回の【潜入取材】後に改めてNTTデータについて調べてみると、確かに「トラディショナルでお堅い」が良い意味でビジネスに転換されていることが各所から伝わってくる。普段は求人という視点で見てしまう採用サイトを実際に感じた企業の体質を確かめる意味で視点を変えて読み込むと本当の企業の姿が見えて来る。
多くの情報が簡単に手に入る時代だからこそ、世間が、先輩が、友人が言うその情報が本当に正しいのかを冷静に客観視することで今回のNTTデータのように本当の姿が浮き彫りになる。それが正しい企業研究であり、ミスマッチを減らすことができる最初の一歩なのだと思う。
はたらくを楽しもう。