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「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」の【問題作】から学ぶ、新時代のマネジメント極意とは

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
YouTubeチャンネル「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」より

変化するマネジメントスタイル

コロナ禍によって働き方の多様化が急速に進み、多くの管理職がメンバーマネジメントの難易度が上がったと言う。従来型のマネジメントスタイルは支配型リーダーシップで、リーダーの旗振りに対して、メンバーは従って働いていた。そして、対面コミュニケーションが当たり前であった時代でもあり、管理職がメンバーへの意識共有がし易いコンディションだった。

ところが、リモートワーク文化が加速して対面コミュニケーションから非対面コミュニケーションが増え、支配型から支援型リーダーシップ、つまりメンバーの裁量の中で生産性を高めさせ、ひとりひとりのモチベーションを高め、維持させる必要があり、特に若手メンバーはコロナ禍で新しい価値観を持って社会にでているため、よりメンバーマネジメントの難易度は高まっている。

伝説になった『エガちゃんねる EGA-CHANNEL』

開設わずか9日で登録者数100万人を突破したことで伝説化したお笑い芸人江頭2:50さんのYouTube公式チャンネルエガちゃんねる EGA-CHANNELの登録者数は現在394万人(9月28日時点)で400万人に迫る勢いだ。

毎回100万回再生以上の動画を配信し続け、日刊SPA!男が選ぶYouTubeが面白い芸人ベスト10(30~49歳男性部門)では2021年から3年連続で1位を獲得した。

過去、上半身裸で暴れ回る芸風は世間からの賛否もあり、嫌われ芸人のブランドを背負っていた江頭2:50さんだが、YouTubeではテレビでは見せない人としての魅力を全開にしている。自然で優しく、温かく、飾らないその人柄が、笑えるけど、どこか感動して泣ける、人としての向き合い方の学びになると多くのあたおか(エガちゃんねる好きのファン、視聴者)から江頭2:50さんは愛されている。

ブリーフ団が仕掛けた江頭2:50さんへのドッキリが問題作に

ドッキリ企画のストーリーはブリーフ団Lが投資詐欺に遭ったことで、会社のお金300万円を失ってしまい、会社を辞めなくてはならないかもしれない。ただ、近くに迫る決算までに300万を戻せば、辞めなくて済む。その300万円を江頭2:50さんに借りるという内容で、仕掛けたブリーフ団のメンバーたちは、江頭2:50さんが金額を値切ったり、貸すことを渋るかもしれないと予測していたようだ。

ところが、動画を視聴したあたおかの反応は、

  • 声を荒げて起こる事もせず、笑いも取らず。人間として完璧な領域に達している。
  • 「頭下げなくていいよ」「まあね、色々あるよ」と300万円を返さなくて良いとした上での発言は凄すぎる。
  • これすっごい広まってほしい。テレビで放送して欲しい。エガちゃんの漢気を知ってほしいのもあるけど、それ以上に大事なことがいっぱい詰まってる回だよ。 こんな世の中だからこそ見て欲しい。最高だよエガちゃん!!
  • 怒る、叱るのではなく「お前は筋を通す人だよね」という導くような言い方にも優しさと人柄を感じます。
  • 涙が出た。オレもこんな上司になれるよう頑張る。
  • 上司の鏡。諭し方、伝え方、話す順番、話す雰囲気、全てにおいてパーフェクト。なかなかここまでの人格者はいない。感動しました、勉強になりました。

俺、いっぱいお前らにしてもらってるから

今回のドッキリ企画は予想を大きく裏切り、ブリーフ団Lの危機に対して江頭2:50さんは一度も怒ることも罵声を浴びせることもなく、どっしりと構えて静かに優しくブリーフ団を続けていきたいの?いくらなの?と2点にポイントを絞る。

そして、誠意について語り、付き合いの長い相手に対してお前は筋を通す人だよねと諭し、お金はすべて自分が払う、返してもらうつもりもないと究極の漢気を自然に優しく飾ることなく見せた。

最後に、そんな状態にもかかわらず俺、いっぱいお前らにしてもらってるからとブリーフ団への日頃の感謝を伝えた。

マネジメントの極意は徹底的に相手と向き合う、寄り添うこと

コロナ禍で働き方も人の価値観も多様化して、管理職がメンバーと接すること、マネジメントすることが難しくなっている昨今、良かれと思った指導がパワハラだと言われてしまう時代。管理職がメンバーとの距離を模索するようになっているが、江頭2:50さんのような昭和スタイルかもしれないが、徹底的に相手と向き合い、どんな状況でも逃げない、寄り添うスタンスを貫くことが相手からの信頼を得るのかもしれない。

少しずつ、ビジネスの世界ではリアルが戻りつつある。対面コミュニケーションに慣れていない世代であっても、管理職は決めつけず、時に目線を下げて、相手に寄り添うことで新たな関係が築けるのではないだろうか。メンバーマネジメントに悩む管理職はちょっとの息抜き程度で良いので、一度エガちゃんねる EGA-CHANNELを覗いてみて欲しい。新しい発見、学びがこれまでと異なる角度であるかもしれない。

ビジネスマンが感動する伝説のスピーチ

嫌なことがあったら俺を見ろ!そして笑え!というビジネスマンの中で伝説化されている1本の動画がある。先日参加した経営者の集まりでも話題になっていて、昨年4月4日に代々木アニメーション学院の入学式にサプライズ登場して行った江頭2:50さんのスピーチは、プレゼンターとしても学びがある。オーディエンスが誰なのか、どんなコンディションなのかを的確に捉え、シンプルに伝えたいことを自分の言葉で丁寧に感情で伝えていく。スピーチの温度感、スピードコントロール、表情、抑揚など参考になる点が多い。そんなスピーチの技術よりもシンプルに感動するという点でも一度チェックして頂きたい。

時代が変化すれば、人々の価値観も多様化する。だからこそ、学びのあり方も進化させていく必要があり、先入観を捨てて、エンタメの世界から新たな学びを探すことは新時代の管理職に求められる一歩かもしれない。

はたらくを楽しもう。

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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