北陸新幹線・小浜ルートか米原ルートか~議論は、なぜ沈静化しないのか #専門家のまとめ
今年に入り、にわかに議論が活発となった北陸新幹線の敦賀以遠の延伸問題。北陸地方、関西地方、東海地方それぞれの地域の北陸新幹線への温度差が顕在化してきたともいえる。
北陸新幹線の敦賀駅・新大阪駅間は、小浜・京都ルートを2016年に与党が決定して以来、現在まで大きな動きがなく、7年が経過している。その間に経済状況や大深度工事の問題の発生など取り巻く環境も変化している。
しかし、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)は、すでに決定されたものとして議論すらも行わないという姿勢だが、強硬な姿勢がむしろ沈静化に逆効果となっている。そのため、北陸地方の与党議員や首長も含めた政財界からの米原ルート再評価の動きは活発化している。
なぜこのような事態を招いたのか。ここ数か月の記事から見てみよう。
ココがポイント
▼北陸新幹線敦賀延伸開業前から小浜ルート再評価の声が上がっていた。3月16日の開業以降、むしろ日増しに米原ルート見直しの声が高まって行く。(2024年3月15日)
・【北陸新幹線が延伸】手放しでは喜べない?…「100年に1度のチャンスなのに」 福井から「関西が“遠くなる”」? (日テレNEWS NNN)
▼自民党富山県連会長代行の米原蕃県会議員も原点に立ち返り米原ルートの先行開業をと発言した。(2024年5月3日)
・新幹線敦賀以西、米原に切り替えるべき 自民県連会長代行・米原氏 富山新聞社インタビュー (北國新聞)
▼一方で、福井県の政財界は米原ルート否定を行います。(2024年5月17日)
・北陸新幹線「米原ルート」に決まらなかった理由とは…乗り換え必要、新大阪まで時間長く 有識者は投資効果の乏しさ指摘 一部変更論に福井県内から困惑も(福井新聞)
▼加賀温泉郷など石川県内の温泉地などでは、米原ルートでの早期開業を期待する意見が強まっている。(2024年6月17日)
・「米原~新大阪はJR西に移管すべき」北陸新幹線延伸で“米原派”急先鋒の市長が馳浩知事に反旗(北陸放送)
▼国交省が新たにまとめた建設費用の試算と新たなルート案が発表された。(2024年7月19日)
・北陸新幹線「小浜」最大5兆円超 敦賀以西の建設費、2.4倍(北國新聞)
エキスパートの補足・見解
2016年に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)が小浜・京都ルートを、2017年に京都府南部経由案を正式採用した。
今年度、与党PTの西田昌司委員長が「2025年度末までの着工」と述べる一方、7年も経過した今回の発表でも、JR桂川駅に新駅を設ける新案も含め3案もある。全て住宅密集地を通過し、住民の反対や土地買収の困難さが予測され、地元負担や環境への懸念も強い。「米原ルート賛成」ではなく、小浜ルートの実現性に疑問を持っている関係者は多い。
2015年当時、橋下徹大阪市長や関西経済連合会など大阪の政財界も米原ルートを支持。今回も、日本維新の会の馬場伸幸代表も米原ルートの見直しを支持している。
小浜ルートは、開通まで数十年かかると批判が強く、2024年6月には、石川県議会が米原ルート見直しを国に求める決議案を可決。7月には政財界で構成される北陸新幹線建設促進石川県民会議でも「米原ルート」も含め整備に向けた方策検討を求める決議が採択された。
与党PTには、強硬姿勢が目立つ。しかし、7年前とは異なり、圏央道やリニアなどで大深度工事の安全性に疑問が持たれている。経済状況も大きく変化した。
与党PTの強硬姿勢に対しては、利権への疑念、原発立地への配慮、あるいは次期国政選挙の争点外しなど、様々な憶測もなされている。なぜ北陸地方の与党議員を含む広範な政財界から米原ルート再評価の動きが出ているのか、与党PTや関西の政財界はもう少し慎重に扱うべきではないだろうか。