北陸新幹線「小浜」最大5兆円超 敦賀以西の建設費、2.4倍
●費用対効果、着工条件満たさず ●国交省試算、京都までの工期最大28年 北陸新幹線敦賀-新大阪の延伸を巡り、政府が計画する「小浜ルート」の建設費が3兆9千億円に膨らみ、最大で5兆円超に上るとの試算を国土交通省がまとめたことが18日、北國新聞社の取材で分かった。資材費高騰や建設業界の人手不足などが原因で、5兆円を超える場合は当初想定の2・4倍程度となる。京都駅までの完成には最大28年を要する見通し。費用対効果や工期の面から、石川、富山両県内などで出ている「米原ルート」への再考を求める声が、一層強まりそうだ。 国交省が着工に向けて検討していた小浜の詳細ルート3案も判明。現在のJR京都駅を東西に横切る「東西案」、南北に運行する「南北案」、桂川沿いを走る「桂川案」となる。総事業費は当初想定の約2倍の約3兆9千億円に上振れし、物価上昇が今後も年2%の水準で続けば5兆円以上になる可能性があるとしている。 与党は近く整備委員会を開き、国交省側が3案を報告する。与党は来年度中の着工を目指して年内に詳細ルートを決める方針だが、議論は曲折も予想される。 敦賀以西ルートを巡っては、与党が2016年度、小浜市から南下して京都市を経由し、新大阪に至る大まかなルートを決定した。この小浜ルートは概算で2兆1千億円かかるとみていた。これに対し、東海道新幹線の米原につなぐ米原ルートの建設費は5900億円と算定していた。 ●「米原論」の高まり必至 詳細ルートに合わせた新たな試算では、物価上昇分を除く3兆9千億円でも小浜の費用対効果を示す数値は「0・5」程度に下がり、着工条件の「1」を満たさなくなるとみられる。一方、米原は工費が想定の2倍となる1兆円超に増えても「1」程度を維持する見込み。これを受け、国交省と与党は費用対効果の計算方法を変更する方向で検討しているとみられる。 小浜ルートは環境影響評価の遅れなどにより、着工のめどが立っておらず、財源も未定となっている。一方、早期開業を求める与党などの声を受け、国交省は23年度から、本来なら着工後に行う地質調査のほか、京都駅や新大阪駅の構造調査を前倒しで進めている。 石川県内では県議会や小松、加賀、能美市議会などが米原ルートへの再考を求める決議を可決し、金沢経済同友会は提言した。国会では日本維新の会などが政府に米原への変更を提言している。背景には、整備区間が長い京都で地下水や建設残土の処理の問題が残り、市民団体の反対運動が起きていることがある。一方、与党の整備委員会は6月、小浜ルートを堅持する方針を確認している。