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【慢性蕁麻疹】ストレスや性格が与える影響と対処法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

慢性特発性蕁麻疹(CSU)は、明らかな原因がないのに、長期間にわたって蕁麻疹が繰り返し現れる病気です。最近の研究で、CSUの発症や症状の悪化に、ストレスをはじめとする精神的・社会的な要因が関わっている可能性が分かってきました。

今回は、18の研究論文をもとに、CSUとストレスや性格との関係について詳しく解説します。

【ストレスはCSUのスイッチを入れる?】

調べた研究の中で最も多かったのが、ストレスとCSUの関係です。CSUの患者さんの多くが、症状が出る前に、何かストレスになる出来事を経験していたことが分かりました。例えば、「知覚ストレス尺度(PSS)」や「うつ病・不安・ストレス尺度(DASS-21)」といった質問票を使って、ストレスの度合いを測定する研究がありました。

ストレスは、体の中の炎症を増やしたり、免疫の働きを弱めたりすることが知られています。また、肥満細胞という、蕁麻疹の原因物質であるヒスタミンを作り出す細胞の感度を高める働きもあるのです。つまり、目に見えないストレスが、体の中で蕁麻疹を引き起こすスイッチを入れているのかもしれません。

私たち現代人の多くは、日々のストレスから逃れられません。しかし、ストレスと上手に付き合う方法を身につけることで、CSUの症状をコントロールできるようになるかもしれません。

【性格とCSUの意外な関係】

ストレスへの対処の仕方や、感情の表現の苦手さ(アレキシサイミア)といった性格的な特徴も、CSUと関係があるようです。CSUの患者さんは、ストレスに直面したとき、ネガティブな対処法を使うことが多いことが分かりました。例えば、怒りの感情を抑え込んでいきなり爆発させてしまうような傾向があったのです。

こうした性格の特徴は、ストレスの多い生活習慣や感情の抑圧につながり、体の中のストレスや炎症を増やしてしまうのかもしれません。「皮膚は心の鏡」という言葉もあるように、心の健康が皮膚の健康に大きな影響を与えることは珍しくありません。

【CSUが生活の質や心の健康に与える影響】

一方で、CSUの症状そのものが、睡眠の質や生活の質(QOL)、心の健康に悪影響を及ぼすこともわかりました。CSUの患者さんは、不安障害やうつ病を合併しやすく、周囲の理解が得られないことにフラストレーションを感じやすいようです。ただし、こうした傾向は、他の種類の蕁麻疹の患者さんでも同じように見られました。

今回の研究から、CSUの患者さんの心のケアの必要性が浮き彫りになりました。ストレス管理や不安への対処法を身につけることで、CSUの症状が改善するかもしれません。医療者も、薬の処方だけでなく、患者さんの心に寄り添うことが大切だと感じました。

これからの研究では、心の健康を保つための技法を取り入れた治療法の効果を、きちんと検証していくことが求められます。

<参考文献>

Donnelly, J., Ridge, K., O'Donovan, R., Conlon, N., & Dunne, P. J. (2023). Psychosocial factors and chronic spontaneous urticaria: a systematic review. BMC Psychology, 11(1), 239. https://doi.org/10.1186/s40359-023-01284-2

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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