【K-POP】SEVENTEEN新作アルバムの「韓国公式説明」 読解で掴めたタイトル曲の「ある意味」
韓国内のK-POPシーンでは新曲発表ごとにメディアに「アルバム の公式説明」が配布される。新曲発表会(ショーケース現場)の現場での手渡しや、メールなどを通じてだ。
韓国の事務所側が伝える「こういう意図で制作したんですよ」というガイド。その内容の一部は音楽番組でも曲紹介として使用される。そこには制作側が伝えたい内容がギュッと詰め込まれているのだ。
22日に発表されたSEVENTEENの新作アルバム「Attacca」でも韓国語でこれが配布された。
通常、新作アルバムへの思いというのは、メンバー本人たちの言葉によってより広く伝えられる。今回も「グローバル記者会見」が開催され、グループとしての2021年のプロジェクト”Power of love”や”情熱”といったキーワードが報じられた。さらにアルバム名の「Attacca」の意味として「楽章と楽章の間を切れ目なく演奏する意味の音楽用語」なども。ここから転じて「相手に対する抑えきれない愛の感情、そして止められない情熱的な感情」を表しているという。
それらと合わせてこの資料を読み解くと、またあれこれと想像も広がる。韓国語の原文を筆者が翻訳して紹介する。
(今回は韓国大手音楽ダウンロードページ「Melon」に掲載された同一内容から引用しました)
(22日のショーケースの様子/公式)
タイトル曲は「愛する相手といつも一緒にいたい気持ち」を表現
1. うずまき※
ダイナミックなシンセサウンドが印象的なシンセポップ(Synth Pop)ジャンルの楽曲。儚くも強烈なサウンドがSEVENTEEN特有のエネルギッシュなメロディと調和し、強靭な愛の感情を贈る。「あれこれと渦巻く中でも私の心はいつもあなたに向かっていて、あなたに手を差し伸べる」という相手への愛情と情熱が感じられる成熟したメッセージが際立つ。
※韓国語では「ソヨンドリ」。タイトル訳は筆者による。
2. Rock with you * TITLE
疾走するように強烈なシンセサウンドとギターサウンド、ツーステップリズムの調和が魅力的なロック(Rock)ベースの楽曲。SEVENTEENのより深まった愛の感情線、エネルギッシュなメロディー、そしてダイナミックなパフォーマンスをバランスよく配した。愛する相手といつも一緒にいたい気持ち。「キミ」のためなら何でもできる「僕」の話を込めた歌詞。キミに向けたコントロールできない愛の心を、より主体的で真剣に伝える。
3. Crush
打撃感のあるビートとポップスタイルメロディーが印象的なHip-hop R&Bベースの楽曲。「キミ」にハマり、さらに濃くなった「僕」の愛の感情を表現した。「キミ」から離れられない姿を、抑え気味のセクシーさが宿るボーカルと共に、ウィットのある歌詞で表現して魅惑的な雰囲気をつくり出す。
4. PANG!
ハイブリッド・トラップスタイルの808ベースサウンドと、俗っぽいボーカルサウンドが魅力的なヒップホップベースの楽曲。ポーンとはじける個性あふれる歌詞と、パフォーマンスチームのヒップなメロディー表現が印象的だ。恋に落ちた「僕」の感情を風船が「パン(PANG)!」と割れるような擬声語に比喩。そこにトラックと反転する明るいメロディが加わり、パフォーマンスチームの純粋でさわやかな愛の感情を新鮮に描いた。
5. 毎日あなただから幸せ※
ピアノ、 ギター、ベース、ドラム構成のワンテイクバンド録音とプログラミング作業をほどよく配合し、完成度を高めたミディアムテンポ曲。繊細なボーカルチームのボイスと表現力がまるで一つの水彩画のような澄んで清らかな雰囲気をお届けする。自分は完璧ではないかもしれないが、「キミ」に対する真心こもった愛の心は、完全で率直。ざっくばらんなメッセージが盛り上がるサウンドと調和して、熟した感性を最大化する。
※韓国語では「メイル クデラソ ヘンボクハダ」。タイトル訳は筆者による。
6. 恋しいものまで※
感性的なアコースティックギターラインとヒップホップリズムの調和が印象的な楽曲。ヒップホップチームの濃い感性的な色彩を感じることができる。「キミ」と一緒に走ってきた時間を振り返って感じた愛の大切さと、愛に対する悩みを込めた歌詞は暖かくありながら、切ないものにも感じられる。鼻先も冷たくなる冬の寒い風の記憶も、温度感も忘れるほど美しかった思い出も、一緒だったからこそあったもの。ヒップホップチームの成熟したメッセージが際立つ。
※韓国語では「クリウォハヌン ゴッカジ」。タイトル訳は筆者による。
7. 2 MINUS 1 (Digital Only)
ポップ(Pop) メロディーとパンクロック(Pop Punk)ジャンルの楽曲。ヴィンテージなドラムサウンドと強烈なギターサウンドが消えない「キミ」に対する混乱した感情を最大化する。ジョシュア特有の感性的なボイスとバーノンの打撃感のある歌唱が合わさり、まるで押し引きをしているようなダイナミックさをお届けする。別れの傷と悲しい感情を明るいメロディーで相反するように表現。淡々としているフリをする男の姿を「2 MINUS 1」という歌詞とともにウィットに盛り込んだ。
全7曲を通じての「ストーリー」
この資料を訳してみると、改めて「Attacca」という作品は全7曲で「愛の始まりから終わり」までを描いていることを知った。
1曲目で「どんな雑念があってもキミを見る」と歌い、3、4曲目では「弾けるような感情」を表現。そして5曲目「毎日あなただから幸せ」では落ち着いた感情。
しかし6曲目からは雰囲気が変わる。過去を振り返り始め、7曲目「2 MINUS 1」では完全に「別れの傷」と「悲しい感情」を綴っている。
これは「Attacca」発表に際するグルーバル記者会見で、メンバーが語った「成熟した姿を見せたい」という点に通じる。「喜び、はしゃぐばかりではなく悲しみも現実として受け入れる」というか。また、この楽曲はデジタル版にのみ収録され、さらにグループ初の英語楽曲となった。この背景を想像するのもまた楽しいのではないか。
タイトル曲の「エネルギッシュ」な意味
そういった構成のなかで、タイトル曲「Rock with you」の位置づけが”絶妙”とも感じられる。
アルバムのなかでは2曲目。愛情が盛り上がっていく”一番いいところ”をタイトル曲(リードトラック)として切り取って、ファンや世の中に届けているのではないか。
上記の事務所側によるアルバム説明でも「Rock with you」のくだりではこう書かれている。
「SEVENTEENのより深まった愛の感情線、エネルギッシュなメロディー、そしてダイナミックなパフォーマンスをバランスよく配した」
全7曲のなかの1曲として「Rock with you」を前面に出して(タイトル曲として)、アルバム全体を知らせようとしている。そう見ると、また違って感じられる。
”アルバム構成”からあれこれ想像
今回の「Atacca」のタイトル曲選定は絶妙、であるのは間違いない。いっぽうで公式資料から「アルバムの制作順序」を想像する楽しみもある。
今回の「Attacca」でいうと、全7曲のうち順序としては2曲目がタイトル曲になったという点だ。
タイトル曲の決め方、というのは筆者がK-POPシーンを取材してきたなかでも興味深いテーマだ。作曲家に話を聞く限りでは、全曲制作後に話し合って決めるパターンや、タイトル曲を最初に決めてその他を構成していくやりかたもある。
前者では「AとBの楽曲、どちらにするか?」と会議が紛糾、結果社長が「ふたつを足しなさい」というトンデモ解決策を指示した、という話を聞いたことがある。あるいは作曲家が「テレビで歌われずとも、ライブで歌ってスカッとする曲」と考えて提供した楽曲が、そのままタイトル曲になることも。
後者では「世のニーズやグループの成長過程からコンセプトを先に固めて決め打ちで作り込む」やりかたや、なかにはプロデューサーとの日々の雑談のなかから「あのアイデア、曲にしてみてよ」とまとまっていくこともある。さらには所属事務所の社長が売れっ子の作曲家に「あんた、すでに作ってるけど世に出してない曲あるでしょ?」と問い、出てきた曲が良すぎてそのままタイトル曲決定、という話も聞いた。
あるいは「1曲目はインストゥルメンタルで、2曲目がタイトル曲」というパターンをある程度決めているグループもある。
今回の「Attacca」について、はっきり言って取材ができなかったが、事務所側に聞いてもおそらくは「想像にお任せします」という話になるだろう。
ちなみにSEVENTEENがこれまで韓国で出したアルバム(ユニット以外)では、タイトル曲の順番は「2曲目」が約67%、「1曲目」が20%、「4曲目」と「3曲目」がそれぞれ約6.7%となっている。
「私、この曲もタイトル曲として十分に行けたんじゃないかないかと思う」。アルバム全体から見てそんな想像をするのもまた楽し、だ。公式資料はこのきっかけをつくってくれるものでもある。