今年の日本シリーズは第1戦の勝利チームが制する!?
プロ野球クライマックス・シリーズのファイナル・ステージは、東京ヤクルトが巨人を、オリックスは千葉ロッテを完封、完封、引き分けで下し、26年ぶりに日本シリーズで顔を合わせることになった。26年前の1995年と言えば、1月17日の早朝に発生した阪神・淡路大震災により、近畿圏は甚大な被害に見舞われ、人々は悲しみに暮れた。そんな中で、グリーンスタジアム神戸(現・ほっともっとフィールド神戸)を本拠地とするオリックス・ブルーウェーブは『がんばろうKOBE』を合い言葉にパ・リーグを制し、セ・リーグの覇者ヤクルトと日本一を争う。
両チームは、オリックスが前身の阪急ブレーブスだった1978年に初めて日本シリーズで対戦。当時、阪急はパ・リーグ4連覇、日本シリーズも3連覇中の王者で、球団設立から初優勝のヤクルトが胸を借りる形と目される。だが、3勝3敗で迎えた第7戦をヤクルトがものにし、初めての日本一に輝く。
ちなみに、第7戦でヤクルトが1点をリードしていた6回裏、大杉勝男が放ったレフトポール上空を通過する打球を本塁打と判定された阪急の上田利治監督は猛抗議し、試合が1時間19分も中断した場面が印象的なシーンとしてよく使われている。
それから17年後の対戦は、ヤクルトが82勝48敗、オリックスは82勝47敗1引き分けと、ペナントレースではほぼ互角のチーム力。前年に210安打で大ブレイクし、この年も首位打者、打点王、盗塁王を手にしていたヒットメーカーのイチロー(オリックス)を、超頭脳派司令塔の古田敦也(ヤクルト)がどう抑えるかが注目された。果たして、古田は好リードでイチローに思い通りのバッティングをさせず、4勝1敗でヤクルトに軍配が上がったが、5試合中3試合が延長で、すべて3点差以内という接戦だった。
互いにプレー機会の少ない球場がポイントになる
それから、さらに26年を経た3度目の対戦。1995年にオリックスの正捕手だった中嶋 聡監督は「何とかやり返したい」と意気込むが、第1戦をエースの山本由伸で勝ち、優位な展開に持ち込みたいところだ。過去71回の日本シリーズでは、第1戦の勝利チームが日本一になったのが44回と、データ的にも第1戦の勝利は重要だ。
また、今季のペナントレースで、東京ヤクルトはホームで36勝29敗7引き分け、ビジターで37勝23敗11引き分けと、ややビジター勝率のほうが高い。対するオリックスは、ホームで38勝22敗12引分け、ビジターで32勝33敗6引き分けと完全な内弁慶である。これと似ているのが、2003年の福岡ダイエーと阪神。福岡ダイエーはビジター勝率がやや高く、阪神はホームで50勝20敗。日本シリーズは、史上初めて全7試合をホームチームが勝ち、4勝3敗で福岡ダイエーが日本一になった。今回も、これに近い星取りになると読む評論家も少なくない。
そして、東京ヤクルトが本拠地の神宮球場ではなく東京ドーム、オリックスも第6戦以降はほっともっとフィールド神戸を使用するのもポイントになるだろう。オリックスは今季のセ・パ交流戦の巨人戦をホーム開催しており、東京ドームでの試合は北海道日本ハムが主催した2試合。東京ヤクルトの選手は、ほっともっとではプレーしていない。
打ち取ったと思った外野フライが本塁打になってしまう東京ドーム独特の感覚は、投げた者でなければわからないと言われるゆえ、オリックスで台頭した宮城大弥は本拠地の第2戦に先発させ、舞台が東京ドームに移る第3戦は東京ドームの怖さを知る田嶋大樹に託すべきか。東京ヤクルトにとっては、緊張感も高まってくる第6戦以降を屋外で内野が天然芝のほっともっとで戦うのは、プロと言えども神経を費やすはず。リーグ4位の79失策だったディフェンス面で万全の対策をしたい。
これらの要素も考慮しながら、第1戦の先発マウンドを誰に任せるか。オリックスは間違いなく山本だろう。では、東京ヤクルトも奥川恭伸で来るか、それとも……。いずれにしても、第1戦が占めるウエイトは例年以上だと思える。