Yahoo!ニュース

サントリーの沢木敬介監督、最後の練習試合で怒ったわけ&新人への評価は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
「ラグビーナレッジ(理解度)」も合言葉(写真は昨年時)。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 サントリーラグビー部で就任3季目の沢木敬介監督は、8月31日から開幕の国内トップリーグで3連覇を目指す。8月21日には東京・サントリー府中グラウンドでNECと練習試合を実施。49‐7で勝利し、選手との個人面談などの後に共同取材に応じた。

 試合中は公式戦さながらの真剣なまなざしで選手たちのプレーを見続け、コーチと共有するトランシーバーを通じて大声で指示を出していた。取材ではその最中の心境について「チャレンジエラーならいいんですが、不用意なエラーが多かった」と語り、クラブ内で求めるプレー哲学や基準値の高さをにおわせた。期待の新人についても言及した。

 チームのOBでもある沢木監督は元日本代表スタンドオフの43歳。引退後はサントリーのアシスタントコーチなどを経て日本代表のコーチングコーディネーターに就任。エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチらとともに、2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げた。

 2016年から指揮を執るサントリーでも「インターナショナルスタンダード」を掲げ、厳しい態度でチームを引っ張る。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――開幕前最後の練習試合でした。

「きょうは暑かったし、まだトレーニング期間(試合前の調整をしない時期)なので、選手のコンディショニングの部分でもハードな状況だったと思います。やっぱり前半は、疲れが出た時に簡単な判断をしてしまっていた部分があります。ただ、すごくいい勉強のできる試合になったと思います」

――序盤、敵陣まで攻め込みながらトライを取り切れない場面もありました。

「仕留めきれないと、ああいう状況になるよ、と。逆に、大勝していたらきょうは何の勉強にもならなかった。僕が思っていたような感じの展開になってくれてよかったと思います」

――監督自身、試合中も大声を上げていました。

「チャレンジエラーならいいんですが、不用意なエラーが多かった。それでちょっと、イライラしました。まぁ、あれはメンタルの部分ですよね。同じ選手が同じエラーをしていたことにイラっとしただけです。個人のくだらないミスに怒っただけです」

――この日のメンバーの多くが、開幕節でファーストジャージィを着るのだろうな。多くの方がそう思っています。どうですか。

「来週もよかったら、出るんじゃないですか。いい奴が出ます。うちは」

――1番(左プロップ)には、帝京大学前キャプテンでもともと2番(フッカー)だった堀越康介選手を起用しています。

「1番でスクラムが強いので。まぁたぶん、1番で日本代表になるんじゃないですか。将来。この先フッカーをやる場合も、1番をやったことがプラスになると思う。うちで求める2番でのスクラムワーク、スローイングスキルの部分では、他にレベルの高い選手もいる。…ただ、純粋に(堀越は)1番でスクラムが強い。で、ラグビーセンスは見ての通り抜群。だから、今季は1番で勝負させようと思っています」

――ポジションを変えてでも出場させたい、という意味合いもありますか。

「ポジションを変えてでもというより、ポジションを変えた方がいいんじゃないかと思っただけです。変えた方が、あいつのよさが出ると思います。だから、日本代表になりますよ。1番で」

――ルーキーで言えば、インサイドセンターで梶村祐介選手が活躍しています。

「まぁまぁです。あれぐらいやってもらわないと、困ります」

――…。とはいっても、ずっと起用されている背景には梶村選手への高い評価もにじむのですが。

「最初から使う気で採っているので、それは。高校生の時から知っているのでね(報徳学園高校時代、沢木が入閣していた日本代表の練習生になっている。また沢木が指揮を執った時代の20歳以下=U20日本代表でもある)。U20の時から、将来的に高いレベルでプレーしなきゃいけないと思っていたから。大学の時に少し足踏みしていたんですけど、いま、順調によくなってきていると思います」

――成長した点と課題は。

「もともとあったタックルの課題も克服しつつあるし、いまはよさを広げられたらと思います」

 沢木監督は昨年から、「(現在の若手は)U20でコーチングをして、才能あるんだろうなと思うから採っただけです。来年入る選手までは、僕がU20で関わっている」と言及。堀越や梶村の育成構想も、当時からある程度は練られていたかもしれない。また好調を維持する梶村への「あれぐらいやってもらわないと困る」には、かえって期待値の高さがにじむ。

 チーム全体の完成度は「70パーセントくらい」とし、「100パーセントになるのはファイナル。それまで、揺さぶります」と不敵に笑う。緊張感を醸しながらのチーム作りに引き続き注目が集まる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事