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欧州遠征メンバー発表。W杯でハリルJAPANはいかに守るべきか?

小宮良之スポーツライター・小説家
ブラジル戦で指揮をとるハリルホジッチ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 ロシアワールドカップ、ヴァイッド・ハリルホジッチ率いる日本代表は、コロンビア、セネガル、ポーランドといかに戦うべきなのか?

<守りをベースに>

 それが格下としての戦いの常道となる。

 問題は、いかに守るか、だ。

ブラジル戦の教訓

 人海戦術で自陣に立てこもるだけでは、いかに奮闘しても最後はこじ開けられる。防御を固めるのは悪くないが、気持ちまで守りに入ってしまってはならない。極端なプレッシングで、守備に躍起になる。それも怯懦を見透かされる。攻め手をなくし、ただ守っても、相手につけ込まれておしまいだ。

 その好例が井手口陽介をトップ下に起用した、昨年11月のブラジル戦だろう。

 井手口は日本人としては屈強なフィジカルとミドルシュートを持っており、決して悪い選手ではない。しかし、最終ラインの前で相手の裏を駆ける閃きと技術はないだろう。その井手口を前線からの守備要員として使ったところに、始まった時点での限界があった。

 強豪ブラジルはそれを開始直後には、完全に見抜いていた。ボールに食いつかせては、リスクはかけずに蹴り、たとえ攻撃を受けたとしても、必ずどこかにミスが出るのを見透かし、それを次第に攻撃につなげ、前半で3得点。後半は、完全に流していた。すなわち、敵としても認めていなかった。

 ハリルホジッチは前に防御ラインを作って進撃を止めようとしたが、90分間、その圧力は続かない。早晩、破られる策だった。

 焦点となるべきは、やはり守り方にある。

ラ・リーガで健闘する中小クラブを見本に

 今シーズン、世界最高峰ラ・リーガ(スペイン)でシステムの潮流となっているのは、4-4-2である。これは回帰主義と言えるだろう。一時2トップは否定され、1トップ、もしくは3トップが全盛になったが、結局、ピッチを広くカバーし、効率よく戦うには、この配置が理想的だ。

 バレンシア、エイバル、ヘタフェが4-4-2でビッグクラブを相手に健闘を示しているのは、その防御ラインが強固だからだろう。

 プレッシング&リトリートを併用。まずは相手のボールの出所を潰すも、外されたら、ラインを下げすぎず、守備ブロックを作り、跳ね返し、ミスを誘う。それでも入り込まれたら、じりじりとラインをさげる。忍耐強い戦いの中、2人が前線に残ることで、攻撃の糸口は捨てず、カウンターで脅かし、勝機をつかむ。攻撃こそ最大の防御でもあるのだ。

 DF、MF、FWという3枚のラインが、常に高さをコントロールしながら、それぞれ等間隔で並ぶ。それぞれの間に入ってきた敵を、圧迫し、殲滅。ラインの間でスペースを与えない。とりわけ、PASILLO INTERIORと言われるDFの前を横切る危険なスペースでは、絶対に自由を与えないことだ。

 もし、これができたら、相手の攻撃力を半減できる。

バルサも変則的4-4-2を採用

 そしてバルサまでが変則的な4-4-2を使っている。これはピッチを縦に左、左中央、右中央、右と4分割したとき、最も均等なスペース配分ができる。持ち場を守れる、個の能力が高く、もしくは戦える選手がいる場合、最終的に相手を押し切れる。後半になって、力の差が浮き彫りになる。今シーズン、バルサが手堅い戦いから、後半に勝負を決めているのは偶然ではない。

「2トップか、3トップか、で状況に合わせてプレーは変えなければいけない。必然的に、中盤の枚数も変わるからね。あくまで個人的な意見だが、中盤は(3枚よりも)4枚でプレーする方が不都合は少ない。なぜなら、(攻めながら)カウンターを受ける心配が減るからね」

 これは、FCバルセロナのクロアチア代表MFイバン・ラキティッチの言葉である。つまり、いい守備がいい攻撃の支えになっている。攻撃的、というのは、守備が安定することにより生まれるものなのだ。

ハリルJAPANの4-4-2

 ハリルJAPANは何度か4-3-3を採用しているが、システムとしてはまったく機能しておらず、早急に4-4-2の選択肢を探るべきだろう。例えばMFはサイドに乾貴士、原口元気、ボランチに長谷部誠、山口蛍。2トップは岡崎慎司を中心に相性のいいFWを組ませたい。小林悠は高さ(身長は高くないが、ジャンプが高く、落下地点を見極められる)も魅力で、良さを引き出し合いそうだが、本田圭佑をFW的に起用するのも・・・。

 これは奇策ではない。流行に迎合するものでもない。むしろ、ブラジルの影響(ブラジルは4-4-2がスタンダードで、ジーコが礎を築いた鹿島アントラーズなど)を強く受けてきた日本人選手は慣れている戦い方で、合理的なシステムの一つである。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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