【JND】HIBI★Chazz-K『Happy Sax Hit Express』は聴く“ひつまぶし”
話題のアルバムを取り上げて、曲の成り立ちや聴きどころなどを解説するJND(Jazz Navi Disk編)。今回はHIBI★Chazz-K『HAPPY SAX HIT EXPRESS』。
HIBI★Chazz-Kは“ヒビ★チャズケ”と読む。ジャズを基本にして、映画音楽やラテン音楽を交えた幅広いレパートリーをもち、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンのサックス4本とドラムによるシンプルにしてマニアックなアンサンブルと、情感あふれるアドリブを展開するユニークな5人編成のバンド。その新作がこれだ。
2004年にひび則彦をリーダーに結成した彼らは、ヘルメットに作業着というコスチュームでストリート演奏するなど当初から注目を浴びる存在で、2005年には東京JAZZのオープニング・アクトに抜擢されるなど活躍の場を広げていた。
ボクも彼らの演奏をYouTubeで見て仰天、さっそくブログなどで紹介した覚えがある。
多重的サプライズを仕込んだアレンジ
金管楽器のジャズ・アンサンブルといえば、古くはスーパー・サックス、そしてソリッド・ブラスや侍BRASS、QUADRA(クアドラ)、ちょっとジャズからは遠いけどトルヴェール・クァルテットなどなど、探してみると意外に多い。そしてそれぞれがかなり個性的だ。
HIBI★Chazz-Kの魅力はなんといってもその起爆力とポピュラリティだろう。ストリートで鍛えたリスナーの耳を開かせるアレンジはメリハリ強めの演奏と相まって、カヴァーに選んだ曲があたかもサックスで演奏されるために存在したかのような錯覚さえ起こさせる。
そして、“つかみ”のインパクトをアドリブまで持続させるストーリー性にも注目したい。起承転結の構成がシッカリしているというより、次々と繰り広げられるサプライズによって途中から聞き覚えのあるメロディで始まった曲であったことを忘れ、彼らのオリジナリティに魅了されている自分に気づくことになる。そしてエンディングでテーマに戻ると、「あ、そういえばこの曲だったんだっけ」と改めて新鮮な驚きに襲われるという寸法だ。
エンタメの本質を突いた外連味
ボクが気になってしまったのは「女々しくて」。ゴールデンボンバーさえもジャズ・アンサンブルにしてしまう外連味たっぷりのコンセプションこそがHIBI★Chazz-Kの存在意義であり、エンタテインメントとしてのジャズを正統に継承していると評価できる部分だと思う。
本作では土岐英史、藤陵雅裕、佐藤達哉という日本ジャズ界を代表する3名のサキソフォン奏者をゲストに迎えているところも聴きどころ。ソリストを交えてさらに過激にオリジナルの壁を崩していく“茶漬け的アプローチ”のニュー・ヴァージョンをたっぷり楽しみたい。そう、最初はそのまま、次に薬味を入れて、最後にダシをかけて味の変化を楽しむ“ひつまぶし”のようにーー。
♪2013/5/12「September」HIBI★Chazz-K in HITACHI TAGA
See You Next Time !