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“命釜”から繰り出される猛々しいどトンコツ「魂龍」

上村敏行ラーメンライター
濃いぞ!美味いぞ!「魂龍」のラーメン。飲み干して丼底のサラサラ骨粉を確認せよ

ラーメン職人の熱意、愚直さが染み出たような特濃で猛々しいスープ。そのような作り手その人を写した一杯に出会うと「ラーメンはやはり人ガラもキー」だと改めて感じ、啜りながら嬉しくなってくる。職人もラーメンも直球どトンコツ。その筆頭はやはり「魁龍 博多本店」(福岡市・東那珂)、そして同店に習った「魂龍」(北九州市・下曽根)だろう。共に超濃厚豚骨の最高峰であると称したい。

今回は、「魁龍」(かいりゅう)店主・森山日出一氏を師事し唯一、屋号の“龍”を掲げて独立することを許された福田明生氏の超濃厚豚骨店「魂龍」(こんりゅう)の話をする。

濃厚豚骨派垂涎の超名店
濃厚豚骨派垂涎の超名店

場所は北九州市小倉南区下曽根。「魂龍」(こんりゅう)。まずは、シンプルでとても好きな屋号だ。「一杯一杯に魂を込める」。店主・福田明生さんの飾ることのない心底からの熱意、師匠である森山さんのスピリッツもよく伝わるし、何より出している特濃豚骨ラーメンにふさわしい名である。

“命釜”にはとんでもない量の豚頭が入る。バーナーの火力も強力
“命釜”にはとんでもない量の豚頭が入る。バーナーの火力も強力

厨房の奥にドスンと据えられた、直径約60cmの巨大羽釜、通称“命釜”。下には一般的なものより圧倒的に高火力な特注バーナーが設置されている。その重厚な釜と対峙し、グッと体重をかけながら大量の豚骨をスコップで混ぜ込んでいる男。店主・福田明生さん(昭和62年北九州市出身)である。福田さんは20歳から30歳の10年間「魁龍 博多本店」で修業し、2017年に故郷北九州市で「魂龍」を独立開業したわけだが、ラーメン道に入ったきっかけをこう振り返る。「将来の目標も特に持てずにふらりふらりしていた頃、ラーメンを食べに何気に入ったのが『魁龍』でした。スープを飲んだ瞬間、あまりの旨さに感動を通り越して頭が真っ白になる、いやいやもっと、頭をガーンと殴られたようなとんでもない衝撃がありました。『なんじゃこりゃー! こんなに旨くて、人の心を動かせるものが世の中にあるのか!!』と、すぐに森山さんに弟子入りを志願したんです。最初は断られていたんですけど粘り強くお願いして、ようやく入門を許してくださいました」。

それから脇目もふらず、ど・とんこつ1本。30歳で自分の店を持つ、という修業開始時に掲げていたビジョンを実現させた。

「森山さんにはラーメンについてはもちろん、人として、男として、人間力の部分も鍛えていただきました。森山さんを慕う多くのラーメン店主の皆さんとも知り合えて自分自身職人としての幅が広がったと思っています」と師匠への感謝を込めて話す福田さん。

北九州「安部製麺」謹製の麺がスープを持ち上げるようなとろみと重厚感。ギトギトはしない
北九州「安部製麺」謹製の麺がスープを持ち上げるようなとろみと重厚感。ギトギトはしない

「魂龍」の超濃厚豚骨は先に紹介した巨大羽釜を使い、大量の豚頭を煮込んで作られる。「魁龍」に倣い“命釜”と呼んでいるのは、この釜1本で継ぎ足し煮込み続けてうまみを重ねているため、決してごまかしが効かないからだ。「魂龍」においては、オープンから7年間スープを“育てている”。大量の豚頭がボロボロになるまで煮込むため、釜の底が“あたらない(焦げ付かない)”よう頻繁に混ぜ込む。豪快なスコップさばきは骨を砕いているのではなく、あたりを防ぐ混ぜ込みなのだ。下処理を徹底した豚頭の旨みを高火力で一気に絞り出す。

さらに、スープを目の細かい網で何度も濾すのも重要なポイント。この作業により、濃厚濃密で舌ざわりなめらかな仕上がりになる。またギトギト感がなく飲みやすいのは、スープを煮込む際は豚の頭と水のみで、脂を使っていないからだ。

超濃厚豚骨という軸は決してブラさずに、麺は少し細め、チャーシューは低温調理の豚肩ロースにするなど、福田さんのオリジナリティも加えている。

スープ飲み干すと丼底のサラサラな骨粉を確認できる。丼は有田焼。書家である福田さんの姉が書いた屋号とダルマのデザイン
スープ飲み干すと丼底のサラサラな骨粉を確認できる。丼は有田焼。書家である福田さんの姉が書いた屋号とダルマのデザイン

ひたすら濃く、猛々しい。

衝撃の豚骨体感が「魂龍」にある。

【魂龍(こんりゅう)】
住所:福岡県北九州市小倉南区下曽根1-3-5
電話:080-3188-7691
時間:11:00〜17:00※スープが売切れ次第終了
休み:火曜・第2水曜
席数:10席(カウンター6、テーブル4)
駐車場:5台(無料)、他駐車スペースあり

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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