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J1通算100ゴール。「違い」を生み出す後半15分からのヤットタイム

二宮寿朗スポーツライター
J1通算100ゴールを達成した遠藤保仁。ボランチとしては異例だ(写真:アフロスポーツ)

遠藤保仁が史上13人目となるJ1通算100ゴールを達成した。

鹿児島実から横浜フリューゲルスに入団した1年目、1998年10月の鹿島アントラーズ戦でリーグ初得点を記録してから18年。コンスタントにゴールを積み上げて到達した。MFでは藤田俊哉以来となる2人目。それもボランチをポジションの軸としながら3ケタを叩き出したのだから、その付加価値は高い。

ゴールの内訳をみると、PK通算31得点(歴代1位)、FK17得点(歴代2位)と「流れのなか」以外が実に半数近くにのぼる。キックの精度の高さ、勝負強さをあらためて示すものでもある。

100ゴール目となったのもPKだった。

10月29日、ホームのアルビレックス新潟戦。落ち着いてゴール右上を正確かつ速く射抜いた。振り返れば2005年の最終節・川崎フロンターレ戦でガンバ大阪のリーグ初制覇を決めたのも遠藤のPKであり、GKの反応をギリギリまで見極めたうえで逆をつく「コロコロPK」は遠藤の代名詞ともなった。記憶に残るPKの数々が彼の100ゴールを彩っている。

そのPK自体、直接自分が絡んだものも少なくない。

近年で言えば2014年シーズンは6点中のうちPKは2点で、その1つは直接FKが相手の手にあたってPKをもぎ取っている(8月23日、アウェーのヴァンフォーレ甲府戦。得点は後半22分)。2015年シーズンも1度あり、ペナルティーエリア内に侵入した味方へのパスが結果的には相手のファウルを誘う形となった(4月18日、アウェーの湘南ベルマーレ戦。得点は後半45分)。そして100ゴール目となった新潟戦のPKもペナルティーエリア内にいた味方に対して浮き球のパスを送り、それが相手の腕に当たったものだ。得点は後半15分にマークしている。

この3つのPKがいずれも後半15分以降というのは、単なる偶然だろうか。

というのも、彼にこんな話を聞いていたからだ。

「僕個人としては後半15分ぐらいから後半40分ぐらいが一番楽しいというか、面白い。相手も疲れて集中力も途切れてきて、分かっていてもついていけなくなってきますから。その時間帯に、賢く考えられる選手でありたいという思いはありますよね。判断、技術の差が出やすい時間帯。後半40分を過ぎると相手もまた気合いを入れてくるんでね」

今年、5月13日のジュビロ磐田戦で今季初ゴールを挙げたのも後半21分だった。この試合はトップ下でプレーしていた。最終ラインからのロングボールにパトリックが競り勝つと踏んで、ちょうど背後に相手の間にポジションを取って右足でゴールを決めている。

予測、相手との駆け引き、ポジション取り。まさに体も頭も「疲れる時間帯」で相手との差をサラリと見せつけた瞬間だった。

頭脳、技術だけではなく、36歳になっても体力はまだまだ健在である。

3冠を達成した2014年、過密日程に及んだ15年はリーグ戦34試合すべてに出場。今年は右太ももを痛めた影響で9月25日のホームFC東京戦のみベンチスタートだったものの、4年1カ月ぶりの途中出場がニュースになったほどである。川崎フロンターレとの最終節(11月3日)を残して、すべて出場している。

100ゴールは単なる通過点。彼はこうも語っていた。

「選手って、試合時間が進んでいくとともに、考えなくなっていくもの。ここをこうしたらいいっていう余裕がなくなってくる。これは相手だけじゃなくて、味方にも言える。僕がパスを出すときにたとえば(チームメイトが)2mこっちに動いてくれたらビッグチャンスになるのになって。だから敢えてパスを出して、気づかせるというか。そこでは自分のパスミスになっちゃいますけど、そこで気づいてもらえればいいわけですからね」

100のゴールもさることながら、それ以上のアシストも記録してきた。

サラリと差を見せつけ、味方にも息を吹き込む後半15分からのヤットタイム。

遠藤保仁の「違い」が分かる。

スポーツライター

1972年、愛媛県出身。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、2006年に退社。文藝春秋社「Sports Graphic Number」編集部を経て独立。著書に「岡田武史というリーダー」(ベスト新書)「闘争人~松田直樹物語」「松田直樹を忘れない」(ともに三栄書房)「サッカー日本代表勝つ準備」(共著、実業之日本社)「中村俊輔サッカー覚書」(共著、文藝春秋)「鉄人の思考法」(集英社)「ベイスターズ再建録」(双葉社)がある。近著に「我がマリノスに優るあらめや 横浜F・マリノス30年の物語」。スポーツメディア「SPOAL」(スポール)編集長。

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