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駐韓米軍特殊戦司令部が「金正恩除去」極秘訓練を公開!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
駐韓米軍特殊戦司令部が公開した特殊部隊の極寒期訓練(SOCKORのHPから)

 米軍が昨年末に韓国で特殊部隊による極寒期訓練を極秘裏に実施していたことが分かった。

 駐韓米軍特殊戦司令部(U.S. Special Operations Command-Korea=SOCKOR)は昨日(9日)、フェイスブックを通じて「昨年11月から12月に米海軍特殊部隊のネイビーシールズ(NavySEALs)隊員らと共に極寒期での海上及び地上領域準備態勢を訓練する機会があった」ことを明かしていた。訓練場所は明かされていないが、数か月前に行われた訓練をこの時期に明らかにしたのはそれなりの理由があるようだ。

 米国はシンガポールで史上初の米朝首脳会談が行われた2018年以降、この種の訓練事実を対外的に公開しなかった。北朝鮮を不必要に刺激するのを避けるためだ。それだけに訓練予告ではなく、すでに終了済みの訓練を公開するのは尋常ではない。

 今年に入って北朝鮮が7回もミサイルを発射したことへの苛立ちであることは言うまでもないが、北朝鮮外務省が8日に米国に対して「世界で水爆にICBM(大陸間弾道ミサイル)、極超音速ミサイルまで保有する国は僅かだ」と前置きしたうえで「米国と対峙し、米本土を射程に収めて試射まで行い、世界を震撼させている国は地球上で我が国だけだ」と豪語したことへの「対抗措置」と言えなくもない。

 SOCKORは米軍の主要特殊戦部隊が配属され、運営されているが、昨年9月にも北朝鮮が11日と12日に移動式発射車両から新型長距離巡航ミサイルを、15日に貨物列車から短距離弾道ミサイルを、そして28日に極超音速ミサイル(火星8号)を発射した時もフェイスブックを通じて「チークナイフ(Teak Knife)訓練」を行った事実を公開していた。「チークナイフ訓練」とは敵陣に空輸部隊を潜入させる訓練を指す。

2016年の米韓合同軍事演習期間中に実施された「チークナイフ訓練」(米国防総省配信)
2016年の米韓合同軍事演習期間中に実施された「チークナイフ訓練」(米国防総省配信)

 米軍特殊部隊は有事時に北朝鮮内部に浸透し、主要施設の爆破や爆撃を精密に誘導する任務を帯びている。米軍は2016年10月にも米韓空軍特殊部隊が北朝鮮に潜入して核心施設を破壊することを想定した演習を実施したことがあったが、この時も「チークナイフ訓練」が行われていた。

 当時、米国防総省は公式広報ホームページを通じて「群山空軍基地で米空軍第353特殊航空群と韓国空軍の空挺統制使(Combat Control Team)が参加して、敵陣に空輸部隊を潜入させる『チークナイフ』年次演習を実施した」と公開していたが、1990年代から「チークナイフ訓練」を実施していたという事実を公開したのは極めて異例だった。米空軍第353特殊航空群は朝鮮半島有事の際に北朝鮮への潜入を担当する増援戦力だ。また、韓国空軍の空挺統制使は敵陣にあらかじめ潜入し、味方の航空機を誘導する特殊部隊である。

 韓国もまた、朴槿恵(パク・クネ)前政権下で浸透用輸送機MC-130を低空飛行させ、特殊部隊を平壌近郊に落下させるほか、海軍の特殊部隊員が潜水艦を利用して、西海(黄海)海岸から侵入させ、金総書記の執務室を直接攻撃する「暗殺部隊」を創設している。

 韓国にはかつて北朝鮮特殊部隊によって朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が狙われた時、その報復として金日成(キム・イルソン)首相(当時)の官邸を襲撃、暗殺するための特殊部隊員23人を孤島の実尾島(シルミド)に集め、訓練させた歴史がある。

 SOCKORは平素でも韓国の特殊部隊と合同で実働訓練を行っているが、注目すべきは昨年末の極寒期の訓練にネイバーシールズが参加していたことだ。ネイビーシールズは2011年5月に国際的テロリスト、オサマ・ビン・ラーディンを殺害した「斬首作戦」を遂行した部隊である。

 ネイビーシールズは先制攻撃をかけ、平壌を陥落させ、制圧する「作戦計画5015」に基づいて実施された2016年の春と夏の米韓合同軍事演習にも合流していた。

 「作戦計画5015」には核兵器承認権者(金正恩総書記)を除去する「斬首作戦」も含まれている。「斬首」とは特殊部隊が平壌に潜入し、北朝鮮権力指導部を奇襲し、命令権を持つ者を抹殺することを指している。米韓の特殊部隊がこの種の訓練を合同で行うのは米韓合同軍事演習史上この時が初めてであった。

 米国がイスラマバード郊外のアボタバードにある邸宅でビン・ラーディンを殺害したネイビーシールズの部隊の訓練を写真と共にこの時期に公開したのは北朝鮮が米国のレッドラインを越えるような挑発(ICBMの発射)を行えば、座視しないとの「警告」なのかもしれない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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