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ミランファンの7割がモンテッラ解任に賛成、楽観ムードも一転で狙うは「6位」?

中村大晃カルチョ・ライター
9月10日、ラツィオ戦でのモンテッラ監督(写真:ロイター/アフロ)

ミランは現地時間11月27日、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督を解任した。プリマヴェーラ(ユース)を率いていたジェンナーロ・ガットゥーゾ監督を昇格させ、セリエAで7位と不調のチームを託している。大型補強で希望に満ちていたのが、遠い過去のようだ。

10月末からの1カ月、モンテッラ監督はユヴェントスとナポリに敗れたものの、“天敵”サッスオーロを下し、ヨーロッパリーグ(EL)ではグループ首位で決勝トーナメント進出を決めていた。ラストゲームのトリノ戦はスコアレスドローに終わったが、指揮官は一方的に攻めたと強調していた。

それだけに、モンテッラは解任のタイミングに驚いたと漏らしている。実際、トリノ戦では、交代時に観客がブーイングを浴びせたように、ニコラ・カリニッチの決定力不足が響いたと言える。次節の相手が最下位ベネヴェントということもあり、モンテッラとしては納得できない点もあっただろう。

だが、ミランのサポーターは解任というクラブの決定に納得しているようだ。12月1日付のイタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が報じたアンケートによると、69%と7割近いファンが解任に賛成している。具体的には「大いに賛成」が31%、「比較的賛成」が38%。「あまり賛成せず」の18%と「反対」の12%を合わせた30%を大きく上回っている。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

ただ、他クラブのサポーターの見方は違う。「大いに賛成」はわずか10%にとどまり、「比較的賛成」も29%。「あまり賛成せず」の31%と「反対」の18%を合わせ、49%と約半数が解任を疑問視している。ミラン以外のチームのファンには、責任が指揮官にあるとは考えていない者も多いようだ。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

ミランのサポーターも、わずか1カ月ほど前までは同じだった。インテルとのダービーに敗れた直後のアンケートでは、不振の責任を監督に求めたのは27%のみ。「補強を間違えたクラブ」(23%)や「期待に見合うパフォーマンスを出せていない選手」(18%)を上回ってはいたが、「多くの変更を理由とする困難というだけ」(32%)という楽観的な声の方が大きかった。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

しかし、今回のアンケートで監督の責任と答えたのは44%と大幅増。「時間の問題」(17%)と考えていたサポーターの多くがモンテッラを非難している。「クラブ」(19%)や「選手」(20%)と答えたファンの数はさほど変わっていない。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

では、新監督ガットゥーゾならミランを立て直せるのだろうか。黄金期を支えたレジェンドで、「闘犬」の愛称のように気迫を前面に押し出すガットゥーゾに期待するファンも少なくない。

だが、長期的にチームを委ねられる指揮官とはみていないようだ。73%ものサポーターが「今季末までチームを託すだけの橋渡し役」と回答。「現在と未来のミランにとって適切な人材」は13%にとどまった。7%は「ミランにとって間違った人材」を選んでいる。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

当然、サポーターの期待値が下がっているのは言うまでもない。レオナルド・ボヌッチ獲得直後のアンケートでは、スクデットを狙えると答えた31%を含め、じつに95%ものファンがチャンピオンズリーグ(CL)出場権を得られる4位以内に入ると予想していた。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

それが今では、スクデット(2%)はもちろん、2位(4%)や3位(8%)を期待する声もまばら。CLを狙えると回答したのは、合計で28%だけだった。最も多かったのは、かろうじてEL予選出場権を得られる6位(34%)という声だ。

2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成
2017年12月1日付ガゼッタ・デッロ・スポルト紙参照、筆者作成

裏を返せば、11人もの新選手を獲得し、チームづくりの難しさが指摘されていたにもかかわらず、ファンがあまりに楽観的すぎたと言える。ただ、『ガゼッタ』も補強の採点でミランに最高点を与え、順位予想でも4位とするなど、メディアも一定の評価を下していた。EL出場権すら得られない7位という順位に甘んじる事態を予想する声は少なかったのだ。

前述のように、ミランは3日の第15節でベネヴェントと対戦する。その後もボローニャ(8位)、エラス・ヴェローナ(19位)、アタランタ(10位)、フィオレンティーナ(12位)、クロトーネ(15位)と、難易度が高くない試合が多い。それだけに、首脳陣は監督更迭というジョーカーを使い、体制を新たにして、一気に挽回することを狙ったのだろう。

ただ、開幕から14戦全敗というワースト記録を更新中のベネヴェントに勝てなければ…ガットゥーゾ新監督は初陣から必勝を求められる。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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